愛されるためのことを学んだら、誰にも愛されへんやん
──そんなSundayさんは9月13日にデジタルシングル「そのまま僕らは旅に出る」をリリースします。意外だったのは、ソロとしては3年半ぶりなんですね。そんな感じがしないというか。
Sunday:そうですよね。「僕の才能」という曲で、2020年にビクターエンタテインメントから"人生で4回目のメジャー・デビュー"をしまして。
──デビュー4回って、聞いたことないですよ。
Sunday:ですよね。でもデビューした瞬間、コロナ禍でステイホームになって、ずっとふんわりしてましたね。とはいえワンダフルボーイズのリリースとかはあったので、やってる感はあるけど、ソロは久しぶりなんですよ。
──表題曲"そのまま僕らは旅に出る"は、Sundayさんの人生哲学をすごく感じる楽曲ですけど、どういうきっかけで書かれたんですか?
Sunday:まず、アツムくんに「トラックを作ってほしい」と言いました。自分のピアノに囚われずに、トラックを軸に歌詞をはめていこうと思ったんです。ラップパートになるところもあって、表現がめちゃくちゃシンプルに詰め込めるし、遠回しなメロディーにしなくてもいい。この曲は結構すぐできましたね。トラックをもらって2日ぐらいで歌詞とかメロディーが完成して、そのままレコーディングしました。
──人生に対するメッセージもありながら、情景的な描写もありますよね。
Sunday:そうですね。砂漠とか海とかを車で移動してる、みたいな気分で作ってますね。
──「愛してるのは 僕の方さ」のフレーズは、どういう思いで書かれたんですか?
Sunday:特に愛されなくてもいい、ってことですね。愛されたいとは微塵も思っていない方がいい。「愛されるための10個」みたいなのあるじゃないですか? まあ、ほんまにあるか知らへんけど、そういう本ありそうじゃないですか(笑)。でも、そういう思考になったら絶対愛されへんやん、って。愛されるためのことを学んだら、絶対誰にも愛されへんやんって常に思ってます。
──「幸せになりたい」と願っているうちは一生幸せになれない、みたいなことですよね。「幸せになりたい」って、いまの自分の幸せを否定してしまっているから。
Sunday:まったくその通りかと。「幸せになるための10個」とかってあるじゃないですか、それも多分ですけど(笑)。そういうものを読み出したら、一生幸せになれないのが決定してしまうと思うんですよね。

──これも深いなと思ったのは「どうしよう?の数だけ人生はspecial」っていうフレーズで。
Sunday:生きる上で迷わない人は多分いないと思うんですけど、「この先どうしよう?」って思えるのがあるって、めちゃくちゃ楽しいじゃないですか。楽しいし、ある意味最悪でもあり最高でもある。全部そうだと思うんですけど、後になってみたら「あれは良かったかな」と思えるけど、その当日はもう最悪じゃないですか。「ここからどうしよう……?」って数があればあるほど、人生が大きくなるんだと思います。
──今作のコメントで「月がcrazyなのか、自分がcrazyなのか。それだけだとも思うし、それだけの人生がいいなと思っています」と書かれていますけど、これはどういう意味ですか?
Sunday:要するにバイオリズム的なことで、いい意味でも悪い意味でも満月のときに人間の活動が積極的になるから、そこで幸せなことも起こるし、犯罪も起こる。そういうバイオリズムのなかで、でもそれは月がクレイジーなわけじゃなくて、もともとクレイジーなのが自分だったりもするなっていう。だからどっちもどっちみたいなことを書いています。でもクレイジーでいいんだと思うんですけど、周りの雰囲気とか満月の周波数によってそうなってるのか、そもそも自分がクレイジーなのか? クレージーであった方がいいのか? とかも自問自答しとかないとっていう感じですね。常に自分がどんな人間で、どんなことしたいorしたくないのかを分刻みに自問自答しとかないとってことです。
──音楽や映画を含め、正解がないものを作る方は特に自問自答しますよね。
Sunday:そうなんですよ。もっと言えば、誰にも頼まれていないのに曲を作って歌詞を書くって、めちゃくちゃスペシャルというか「どうしよう?」の連続ですね。頼まれているお仕事はすごくやり甲斐があるんですけど、頼まれてないところから作るのは全ミュージシャンに対してすごいなと思ってます。ミュージシャンというのは、そもそもそういうこと。選択肢がいっぱいあるのもそうですけど、それをやっている時点で相当な選択をしてるとも言えますよね。例えばヨーロッパだと、音楽家が心療内科に行って「ちょっと精神的にしんどくて、鬱かもしれません」と言ったら「音楽家なんですよね? 鬱で当たり前じゃないですか? 分かっていて選んでいるんでしょ」と返されてなんの処置もされなかったと、なんかの本に書いてました。まあ、そういうことだと思う。
──よく「降りてきた」って言うじゃないですか。それこそ「自分をおかしいぐらいの精神状態に持っていった方が、いい曲が作れるんじゃないか」とか、自分のモードをどこに持っていくかというのも、音楽はあるのかなと思っていて。
Sunday:僕の場合は、音楽以外の労働をしていないと曲を作れないところがあります。だから音楽の仕事だけをすることは、一生ないのかなって。Sundayカミデじゃない自分で、音楽とは全然関係ない人たちと接することができる場所があればあるほど、いろんなことが巻き起こるじゃないですか。それが音楽を作る上ではすごくいいなと思っているんですよね。ただ、そうすると音楽に費やせる時間はかなり絞られる。「今日はゆっくり家で曲を作ろう」みたいなことはないです。
──ちなみに、この曲はどれぐらいで完成したんですか?
Sunday:考えている時間を抜きにして、書き出してからは1時間ぐらいで終わりました。まあ普段から言ってることが入っているから、それで早かったのもありますね。
──Sundayさん的に、いちばん軸になっているフレーズは?
Sunday:やっぱりサビの「そのまま僕らは旅に出る 大好きな誰かを想い出して」ですね。常にそうありたいなっていう願いのような歌詞で、これこそが曲のテーマ。この言葉が最初に出たんですよね。これを元に曲を作っていった。で、「そのまま旅に出る」ってどういうことやねん? という話なんですけど、旅支度をして旅に出るのは旅行じゃないですか? でも行程とか段取りが一切ないのが、本当の旅であり人生かなって。常にそのまま旅に出てるないし、放り出されている状態で旅を続けているってことですね。
──ラストの「アイラブユーのユーはfriends」もおもしろかったです。普通だったらアイラブユーは、好きな人とか異性に使いそうなものですけど。
Sunday:そうっすよね。でもユーは友達じゃないと駄目だと思ってるんです。恋人とかパートナーは全然二の次三の次でいいってことに気づいたんです。いや、気づいていたんです。それを歌詞にしたらこうなりました。
──いつから、気づいていました?
Sunday:20代ぐらいからそう思っているんです。友達になるって、すごく絶妙な奇跡の連続を繰り返さないとならないじゃないですか。でも恋人とかカップルは、そこまで繰り返さなくてもなれると思っているんです。だからこそアイラブユーは、最初に友達が来ないといけないなって。それに友達だったら離れていても、ずっと会わなかったとしても、ずっと友達やから。
──車で砂漠や海をドライヴをしてる感じとか、生きる上での考えを投影したフレーズとか、ラストの友達の話もそうですし、人生のロード・ムービーのような1曲に感じました。
Sunday:そうそう。結局友達探してるっていう『続ぼくを探しに ビッグ・オーとの出会い」という絵本と一緒で、ずっと転がって自分の欠片を探してる、みたいなことですね。
