より広く、より外側に届けたい──眉村ちあき『うふふ』で辿り着いた新たな“境地”

2024/12/04 18:00

私は長く歌わないといけないので──

――実際、インタビューのキャッチボールの仕方も変わったと思います。

眉村：いひひ。でも、オフになると喋りが変なのも相変わらずだし、その部分をワンマンライブで出したりするとそこがバズったりするんですよね。それはそれでとってもありがたいんですけど。最近、リールとか TikTok とかで知ってきてくれる女の子がめっちゃ増えているので、次は音楽でバズりたいですよね。

――女性ファンが増えているというのも納得です。見せかたや歌詞の視点も作品を重ねるごとに少しずつ変化してますし。

眉村：「恋の駆け引きだるい」は女の子たちがわかる！　って共感してくれる曲なんじゃないかなと思ってます。これはめっちゃ正論を言う友達がいて、この人と恋愛したらやばそうと思ってこっそりメモしてて（笑）、それをもとに作りました。当時ちょうど『SAI』ツアーの最中で、こんなに曲をアレンジしたのに一番多いXのポストが、「ちちゃんかわいかった！」というコメントだったんですよ。嬉しいはずなのにそこじゃないんだよっていう相談をその友達にしてたんですけど、「じゃあすっぴんでライブすれば？」って言われて。

――そこですか（笑）。

眉村：あ、論点違うと思ったんですね。絶妙にイラつく返し。そういう問題じゃなくないか、めっちゃ嫌な気持ちだわ、と思ってこの曲を作りました。でも、私もテイラー・スウィフトのライブを見に行って、ニコッと笑った瞬間にかわいい！と思ったので、いまはかわいいっていうコメントをする人の気持ちがわかるんですよ。興奮しすぎて語彙力を失うと言葉がシンプルになるというオタ心も理解しました。

――共感という言葉が出てきましたが、共感されることについては、どう考えてますか？

眉村：共感されたいと思ってます。それは昔からです。わかってくれると思って歌詞を書いてるのに、「ちちゃんにしかわからん」と言われてびっくりすることが多いです。

――そのジレンマを解消する方向に向かっているのが現在であり、その成果が『うふふ』であるわけですね。

眉村：はい。さっきの“瞳”の一番を目指そうという話でいうと、「とっておき」はそういうことを意識した曲で。

――誰もがわかる言葉使いで組み立てている。

眉村：絶対に意味がわからないところはないようにしようと目的を持って作った曲です。だからカラオケで歌いやすいんじゃないかと思ってます。あと「Hangover」のMVが普通だったら何千万クラスかかっちゃうすごい技術が導入されているので、見てほしいです。見たら誰でもすごいとわかるので。

眉村ちあき「Hangover」MV（Chiaki Mayumura New Song “Hangover” Music Video）

――「Hangover」は結婚前夜の曲ですよね。

眉村：『ハングオーバー！（消えた花ムコと史上最悪の二日酔い）』って映画を見たんですよ。おもしれー！　と思って作りました。このくらいぶっとんだ生活したいなって思って。これって、人によってはめっちゃ文句言えそうな映画じゃないですか。

――公開時はともかく、いまだったら確実にそうですね。

眉村：私は、これだけいろいろ選べる時代なんだから、文句を言うならこれを選んだ自分の手に言えって思うタイプなんですけど（笑）。『ハングオーバー』はドラッグも出てくるし、犯罪しまくりなのがいいなって。これこれ！　と思って曲にしました（笑）。

――というあたりで、そろそろタイムオーバーですね。各曲について細かくは聞けなかったですが、本作に至る大切な話が聞けた気がします。

眉村：よかったです。このアルバムがどんなアルバムかって聞かれると、いまずっと話してきたようなことなんですけど、それを2分でコメントくださいとなるとえーっと……ってなるので（笑）。

――デビュー5周年の「全曲眉村ちあき」公演で一区切りつけたあとは『うふふ』のツアーですか。

眉村：はい、このアルバムで1月からツアーですね。今回はゆっくりやります。忙しいと怒っちゃうから（笑）。前は連続でライブもしつつ、精神に余裕がないまま打ち上げに全部出て、カラオケも行って、酒も飲んでたから喉を潰したんですよ。絶対に潰れないと思ってたからなんですけど、いまはライブのたびに喉をケアするようになりました。

――素晴らしい！

眉村：ベテランのみなさんは当たり前にやってることなんですけどね。早く気づけてよかったです。私は長く歌わないといけないので。そのためにはちゃんとやります。歌手として成長しました（笑）。