聴いたときに手叩いて笑ってほしい
──4曲目の“リユニオン”は、これまでにないDSDCの曲だなと思いました。
谷:これはギターの大井の曲なんですけど、彼のなかで固まってきたポップさが表れた曲だと思います。歌詞も元々大井が書いていたんですけど、そのあと丸々全部僕が書いて、結局僕のものが採用されました。でも歌詞の内容は、大井の歌詞を踏まえたものになっています。音も歌詞も新しさがあって、挑戦を感じる曲ですね。
──コーラスも入っていて新鮮さを感じました。
谷:僕はディズニーっぽいなと思っています。ホーンも入っているので、ハッピーな感じですね。
──“Left Alone”からの流れで多幸感がありますし、途中ドラムンベースになるのがおもしろいなと。
谷:そうなんですよね。ずっと言っているんですけど、僕は曲を聴いたときに手叩いて笑ってほしいんです、自分も良い曲を聴いたときに笑いますし。そのマインドを忘れたくないですね。あと、途中に「ピララララ」って音が入っていて、デモの段階では出原が「これはいらないんじゃない?」って話になったんですよ。でも「パチンコの確変の音みたいでいいじゃないですか(笑)。」って大井が言ったので、出原もやっぱり入れようとなって(笑)。僕もそれを聞いて絶対入れたいなと。そういう遊び心が表れているのはいいですよね。でも大井は1回もパチンコには行ったことないらしいんですけどね(笑)。
──ふふふ。でもその音が1つのスパイスになっていますよね。
谷:隠し味ですね。みんなが自由に楽しく音楽を作っていると思います。『ハイキュー!!』という漫画に、「強くないと楽しめない」というニュアンスのセリフがあるんです。音楽もそうで、技術があって強くないと、メジャーの世界は100%楽しめないんじゃないかなと思います。みんな今の段階ではできているので、成長したんだなと思います。
──“リユニオン”というタイトルは誰が考えたんですか?
谷:僕が考えました。“リユニオン”は「再集結」とか「再結成」という意味なんですけど、うちのバンドメンバーって実は仲が良いときと悪いときがあって。僕はもっと仲良くできるのになと思っているんです。もともとの大井の歌詞もそういう方向だったんですけど、視点を広げてみんなが聞いてもそう思えるように書きましたね。
──歌詞は誰かの背中を押すような方向性ですよね。
谷:普段僕は背中を押すような歌詞を書かないんです。「背中を押される」って聴いている人が決めるものだと思っていて、こっちが押そうと思って歌詞を書くのはおこがましいと考えているんです。でも大井の曲がこんな感じだったので、新しくチャレンジしました。でも書くのに時間がかかって、実はフルで3種類くらい歌詞のパターンがあります。
──なるほど。6曲目の“goodenough.”はどうですか?
谷:これはもともとBPMが倍くらいあったんですよ。でも流れに合わせてテンポをおとしました。“goodenough.”はアウトロがめっちゃキモいんですよね。突然リズムが変になるし(笑)。出原と「昭和のシティポップや歌謡曲って、結構ふざけて作っていた節があるんじゃないか」って話していたんです。遊びながら制作するのも楽しい部分だと思うんですけど、最近はシングルが多くてできていなかったんです。彼もそう思っていたらしく、この“goodenough.”のアウトロはゲラゲラ笑いながら録りました。この「なんじゃこの展開?」ってなるようなアウトロは、荒井由美さんの名曲になぞらえて通称「中央フリーウェイエンド」と呼んでいます(笑)
──歌詞はどのようにして書いていったんですか?
谷:リード曲の“ゴースト”を最後に持っていきたかったんです。でもそれだと当初の出原のたたきが合わなくなってしまうから、「うわつく街並」からの歌詞を2番にもってきて、1番を僕が書いたんです。
──そうだったんですね。
谷:歌詞は出原とふたりで作っていきました。「添削して保存して」という歌詞は元々「検索して保存して」だったんですけど、意味が重複するから、「検索」を2番に置いたり。出原が書いてきたサビの歌詞に、彼の考えが出ていてすごくよかったので、そこは大事にしつつ。僕が書いた1番のAメロBメロは雨の降っている渋谷をイメージしていますね。
──なるほど。そして、最後はリード曲の“ゴースト”ですね。
谷:正直“bubbles”をリードにして、“ゴースト”を「隠れた名曲」にしたかったんです(笑)。でも本当にいい曲を作ったので、もし“bubbles”をリード曲にして思ってたより上手く行かなかったら人のせいにしちゃいそうで。なら自分のせいにしようと思って、“ゴースト”を推しました。「僕の本当に好きな曲はなんなんだろう」からスタートして、自分が満足できた曲になりました。自分もファンだったらそういう曲を聴きたいし。矢印が内側に向いてきた曲の方が、逆に共感を呼んでポップになるのかなと。
──この曲はヒップホップの要素も入っていますよね。
谷:ラップっぽいことは実は初期からやっていたんです。でもラップでもないし、歌でもない、けどちょっとラップみたいなスタンスってちょっとずるいなとは思いつつ。ラップも踏襲しつつ、散文の要素も入れた曲になりました。ポップな曲を経たことにより、ど真ん中インディーみたいな感じにもなったかなと。
──「I Still Remember」の部分はすごくクセになりますね。
谷:そこが唯一ポップさを追求したところですね。当初はDメロもサビで2段階にしていたんですよ。でもサビはリフレインした方がポップなので、こうなりました。でも他の部分は自由で、バランスよく制作できた気がします。
──この曲がEPの最後に来ることで余韻があるのが良いですよね。
谷:リードになった瞬間に、この曲は最後に置こうと思いました。僕はDJもたまにするんですけど、曲順を考えるのが好きなんです。「どういうふうに曲を聴いてもらいたいか」は曲中以外にも込められると思うし、今回は成功した気がします。
──7月からは〈Mix Wave Tour〉が始まりますね。どんなライヴになりそうですか?
谷:ワンマンはショーで、フェスではできないことができると思っているんです。セトリで曲の聴き方が変わるので、ワンマンは本当のバンドの姿が見られると思います。ワンマンのライヴに来てくれると、アルバムに対する考えが変わったり、それが強固になったりして、そこまでが1周なのかなとも思います。今回の作品が良いと思ったら、ぜひ遊びにきてほしいですね。

DSDC、メジャー初作品
LIVE INFORMATION
【Mix Wave Tour】
【日時、会場】 ■2023年7月7日(金) 福岡・OP’ s
開場18:30/開演19:00
■2023年7月16日(日) 大阪・Live House Pangea
開場17:30/開演18:00
■2023年7月17日(月) 東京・Spotify O-nest
開場17:30/開演18:00
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Deep Sea Diving Club ディスコグラフィー
PROFILE:Deep Sea Diving Club
Gt./Vo. 谷 颯太、Dr./Cho. 出原 昌平、Ba./Cho. 鳥飼 悟志、Gt./Cho. 大井 隆寛からなる、2019 年に福岡で結成されたロック、R&B、ジャズなどジャンルレスな音楽性を感じさせるメロウでフリーキーな4人組バンド。
2021 年5 月第一弾 feat. シングル「フラッシュバック’ 82 feat.Rin 音」をリリース。九州内 FM6 局のパワープレイに選出される。2022 年 3 月 1st Full Album「 Let's Go! DSDC!」リリース。第15 回CD ショップ大賞2023 該当入賞作品に選出される。
地元福岡のみならず日本全国のミュージックラバーから期待の新人バンドとして支持を獲得している。
■公式HP https://deepseadivingclub.fanpla.jp
■公式ツイッター https://twitter.com/d_s_d_c_