INTERVIEW 1 : セイジ(ギターウルフ)

セイジ(ギターウルフ)
ロック・バンド、ギターウルフのボーカル、ギター。
日本中のロックファンが憧れ続ける、実在するロックンロールヒーロー。
90年代、数々の伝説を作りながら現在まで変わることなく衝動を鳴らし続ける、唯一無二の存在として活動を続けている。
──ギターウルフは現在インディーズで活動されていますが、以前はソニーのキューンレコードに所属されていました。どういう経緯でメジャー進出が決まったんでしょうか。
メジャーに入る前は、「もしかしたら、俺たちの音が全然路線の違うものになってしまうかもしれない」という不安や、すごく悪いイメージがあったんだよね。だからインディーズのころは、いくつかの会社からメジャー進出の声がかかっていたんだけど、ずっと拒否してた。でも、そのときソニーのみっちゃん(中山道彦)が、自分たちを何度も何度も説得してくれたんだよね。最初は門前払いをしてたんだけど、千葉でのライヴのときに、ものすごい豪雨のなかにも関わらず来てくれたことがあって。そこで、その後1回ちゃんと会って話してみることにしたら彼が素晴らしい人間だということわかって、「彼がそこまで言ってくれるなら」ってことで、メジャーに進出することを決めたんです。
──メジャーに進出してからは、どうでしたか?
実際、かなりぶつかったんだよね。テレビやラジオ、CMの出演とか、そういうプロモーションについて、メジャー側はすごく提案してくれた。でも、あのときは俺たちもかなり突っ張っていて、「そういうのはやりたくない」って断ったりしてね。当時は、自分の考えでいく気持ちが強かったし、まだまだ自分が確立されてなかったんじゃないかな。今は別にどういう形になろうと、自分たちはロックでいられる自信があるんだけど、当時はなんだかんだ言って「そんなもんできるか! 」みたいな気持ちがあったね。いま考えると、せっかく一生懸命考えてそういう話を持ってきてくれたんだから、もうちょっとメジャーの考えかたにも寄せてやればよかったなという気持ちもあるけどね。
──なるほど。メジャーで活動するメリットってどういうところにあると思いますか?
メジャーのいいところは、締切があるから、やっぱりどんどん追い詰められるところかな。ケツが決まっているから、ちゃんとやらなきゃいけないし、しっかり音楽をつくらないといけなかった。メジャーじゃなかったら、俺たちはそんなにたくさんの曲を作ってなかったかもしれないし、いまみたいに長く活動できてなかったかもしれないね。
──メジャーとインディーズで違いを感じる部分はありますか?
両方良さがあるので一概には言えないんだけど、メジャーだと、ある程度売れる必要があると思う。でも「売れる」ということを第一に考えると、本来のロックという音楽が薄まっていくような気がするんだよね。だからまぁ、俺たちはそんなことを全く意識せず、自分達の音だけで勝負をしてたんだけど。あとは、インディーズで活動をはじめてからは、メジャーと比べると、海外ツアーには行きやすくなったかな。やっぱり俺たちは外の世界にも目を向けていきたかったので、いまはすごくそういう部分はやりやすいかな。
──金銭的な部分でメジャーとインディーズの違いを感じることはありますか?
メジャーの初期のころは、やっぱりお金がかなり入ってきてたかな。でも、だんだんメジャーでも削減削減になってきたね。インディーズの方は、やり方がうまい人は稼げるのかもしれないけど、そうでない人は難しい。とは言っても、メジャーだからお金にゆとりがあるとかっていうことでも別にないかな。もちろんそれでも売れる曲を書けば、メジャーのほうが良いかもしれないけどね。
──ギターウルフは、いまインディーズで活動するなかで、動画を撮ってみたり、本当に自由にいろいろなことをやられているなと感じます。
おもしろいことを考えるスタッフがいるので、いまはもう拒否せずなんでもやっているかな。結局のところ、自分のロックの部分を確立して、それがぶれなければなにをやったって大丈夫だと思っている。自分自身がピシッとぶれなければ、なんでもやっていいんじゃないかなと。そこに関しては、メジャーだろうがインディーズだろうが関係ないね。いろんなところに耳を傾けて、なんでもやってもみるのがいいんじゃないかなと。
──日本の音楽シーンが変わる中で、リアルに変化したと感じることはありますか?
レーベルという形がどんどん小さくなっているのを感じるね。自分たちがいたソニーもどんどん縮小しているし。当時働いていた人間も、いまでは10分の1ぐらいになったのかな。昔はでっかいフロアに、人がわんさかいたんだよね。会社に行ったらPUFFYに会ったりラルクに会ったり、とにかくいろいろなアーティストとワイワイしてた。レコードからCD、そして配信の時代になってきて、できることが多くなったけど、メジャー部分のそういう所はパワーがなくなって来たような気がします。テレビに毎回出てるような歌謡曲の業界はよくわからないけど、俺たちみたいな音楽関係はそういう気がしますね。
──なるほど。
他にも、日本の音楽界はロック色がめっきり少なくなったからね。海外ツアーに出ていると特に思うね。自分もアンテナはしっかり張ってるんだけど、すごく良いなと思ったロックバンドは、いまは活動休止しちゃったけど錯乱前線くらいかな。昔はもっといたんだよ。そういう音楽を聴いて、俺自身音楽業界に入ろうと思ったし。そういうカッコいいアーティストがどんどん出てくるといいなと思うね。
──これからメジャー進出を考えているアーティストに伝えたいことはありますか?
やっぱりメジャーだと、周りの広がりが全然違うんですよ。アーティスト同士の繋がりも広がってくる。もし、メジャーを考えるなかで素晴らしい人と巡り会えるのであれば、メジャーに進出するのは悪くないと思うよ。アイドルでいえば、日本のアイドルは海外でもすごく人気があるので、1回くらい海外に行ってみてもいいかもしれないね。あと俺らもPIGGSのみなさんと、ぜひ一緒にやりたいね。