だからアイドルは人形じゃダメなんですよ!
──そんな前フリをした上でお聞きしますけど、最近はなにか気づきはありました?
塩見:今は〈KAMIYADO THIS IS THE DREAM TOUR〉というツアー中なんですけど、2020年の末から2月まで全国のZeppを回るツアー(〈KAMIYADO Zepp Tour 2020-2021 Bloom of Life〉)と並行して関西ツアー(〈KAMIYADO KANSAI TOUR 2021〉)を完走したんですよ。関西ツアーとZeppツアーでは箱の規模が全然違う。そこで思ったのは、ライヴの世界観を作るのって箱の大きさが重要ではないんだなって。あと映画の話が出ましたけど、私たちもどこで感動させるかをいつも考えてる。最初は盛り上げて、中盤はしっとり聴かせて、最後は盛り上げたと思いきや泣かせようとか。そういう構成を考えたりしますけど、それが上手くいかないこともありますね。
──どういうライヴが失敗なんですか。
塩見:その時々のメンタルにパフォーマンスが左右されることがあって。例えば、雨が降ったら何となく気持ちも落ちるじゃないですか? そんな感じで、会場の暗さにもって行かれることがあって。こっちが「雨だけど盛り上がってる!?アゲていこう!」と盛り上げられたら、みんなもついていけるんですけど、それがうまくいかないこともありますね。
──だけど、感情の上がり下がりがあるのが人間ですからね。
塩見:なんか責任を感じちゃうんですよ。昨日と今日で違っていいのか? って。常に最高のステージを届けなきゃいけないのに「今日は最高じゃなかったな」とか、そう思ったライヴの後は眠れなくなりますね。
──観客によっては、不調もプラスに捉える場合がありますよね。感情的になり過ぎて最後まで歌えないとかあれば「今日は特別なステージを見た」と受け止めるでしょうし。
塩見:はいはい。
──だけど、本人的には「ちゃんと歌いたかったのに」みたいな。
塩見:関西ツアーの最終日は2公演あったんですけど、1公演目でアクシンデントが起きて、パフォーマンス中に音が止まったんですよ。咄嗟にみんなでアカペラで歌って、途中で音が出るようになって、次がラストの曲で「明日、また君に会える」だったんですけど。私は泣いちゃって出だしを歌えなかったんですよ。最後のMCで「私は悔しかった。みんなに最高を届けたいのに曲が止まっちゃって、悲しくなって、その感情に左右されて上手く歌えなくてごめんなさい。すごく辛かったです。だけど、みんなが一緒に手拍子をしてくれて応援してくれたから最後まで走りきることができた。本当に支えられていると感じました」って。だけど、ファンの方からは「あの瞬間はキタキタ!と思った。すごく良いライヴだったよ」と言ってもらえたんです。でも……私は悔しかったんですよね。

──悔しいと言えるのも、場数を踏んできたからでしょうね。
塩見:スタジオで100回練習するよりも、本番を10回迎えてみんなと目を合わせて歌った方が成長できるなって。私はライヴですごく成長させてもらってますね。スケジュールはめちゃくちゃ大変だけど、やって良かったと思えるのは、ついてきてくれるみんなのおかげです。
──元々メンタルは強いんでしょうけど、それを言語化できるようになってきた気がしますね。
塩見:いやぁ、全然強くないんですよ(笑)。めちゃくちゃ凹んだり、どうすんの? と思ったり、無理だと思う感情が怒りに変わったりしますね。それを今こうやって口に出せていることとか、ブログで文字にしていることとか、言語化させてもらえることが自分の発散になってますね。
──それは良いことですね。
塩見:だからアイドルは人形じゃダメなんですよ!AIとかテクノロジーが発達している中、どうして生の人間がアイドルをやっているのかって、急に感情を支配されて泣いたり怒ったり嬉しくて笑顔になったり、それは人間にしかできないから。ライヴで目を合わせて感動して泣いている人を見て、こっちもつられて泣いてしまったり、それはAIじゃ無理じゃない? と思う。だから私はステージで、みんなと目と目を合わせて歌い続けたいですね。
──極論ですけど、ライヴに「完璧」を求めるのか「人間味」を求めるのか。2択ならどっちですか?
塩見:あー、なるほど。そもそも完璧とはなにかを考えることも大事ですね。「歌もダンスも綺麗に揃ってて、ピッチも外さないのが完璧」なのか「自分の内面性も出せることが良いのか」と考えたら後者だと思う。もちろん技術面は、ある程度クリアした上でその日ちょっと苦しいから、その苦しさを表現したり、MCで弱音を吐いちゃうこともあるかもしれないし、それは必要だと思います。