“HappyENDじゃ終わらせない！”はもう書けない
──ライヴでも披露していましたが、先日リリースされた今回のファースト・EP『まもってほしいの。』にはいろんなテイストの曲が収録されていますよね。曲はどうやって作っているんですか？
守乃：めっちゃ考え込んで作ったり、ひねり出した歌詞もあるんですけど、だいたい自分が良いなっていう曲は、思いつきとか勢いでばーっと同時に全部出来ちゃったりしますね。
──自分でテーマを書き留めていくイメージなんですか？
守乃：いや、後からテーマ付けることもありますね。なにか使えたらなって、ボイスメモもするんですけど使わないことの方が多くて。結果的にやっぱその時に生まれたものがいいんだなって最近学びました。席に着いて、Logic(DAWソフト)を開いて「たららららん」ってやったものが、「これ良いな」って思うことが多いかもしれないです。
──「作るぞ!」という意識を持って作る感じですか?
守乃：「作ってみるかー！」ってはじめて、「ふんふふーん」と軽い気持ちでやることの方が多いです。軽い気持ちでやったら「え、良くね？」ってなって、どんどん作るみたいな。
──楽曲制作は早い方ですか？
守乃：3-4年とか放置しちゃっているものとかも全然あるんで、めちゃくちゃ遅い方だと思います。まずは全てを自分で完成させたいので、全部楽器を入れてから、それ完成させるまでがめちゃくちゃ遅くて。集中力が変な時にしか発揮されないから、それがほんとに悩みです。
──全部一人でやるんですね。
守乃：そうです。時間はかかっちゃうけど、全部自分がいいっていう欲望があるので。
──まもさんの曲は音使いがおもしろいですよね。例えば“Dendrobium”はシンセサイザーのフレーズがすごく印象的ですし。
守乃：あれもうかっこいいですよね。あれは、たまたま「ふんふんふん」って作ったワンフレーズがかっこよくなって。じゃあ「これとこれを組み合わせたら?」ってやっていたら、曲ができてました。
──色々弾きながら「これ良いじゃん!」って作っていくんですか?
守乃：はい。結構そういうことが多いです。音楽の知識がないので、最初から「このコードで」みたいなことができない。だから思い付きで頑張るしかなくて。「お、これはいいじゃないか。あうな。」っていう風に作っています。歌詞もそんな感じでどんどん浮かんでいきます。
──EPのなかで時間がかかったのは、どの曲ですか？
守乃：“いちごジャムにチーズ”はけっこう考えたかも。コードと歌詞とかは全部決まってたんですけど、バンドのサウンドとして作りたいなって思ったら、難しくて。2〜3年考えてた気がします。
──それはアレンジ的なところですかね。
守乃：そうです。最初はアコギの弾き語りで全部もう完成してたんですけど、それをバンドでやってエレキギターのフレーズとかピアノとかつけるならどうしようって考えていて。そういうのをすごいずっと考えてて、放置しちゃいました。やりたいときに「んーーー」ってやって、たまたま集中した期間にやっと完成しました。
──2〜3年というと、かなり温めましたね。
守乃：だから“いちごジャムにチーズ”は、あんまり今の自分っぽくない曲ではあるんですよね。だからもう、なんかよくわかんなくなっちゃった。
──まもさんの曲のなかには、“僕らの憂鬱”や“HappyENDじゃ終わらせない！”みたいな希望を感じる曲もありますよね。そこは意識してたんですか？
守乃：はい、思ったことや当時思ってることを、たぶん書いたんだと思います。だから今だと書けないって感じです。
──なるほど。一瞬一瞬を生きているって感じなんですね。
守乃：そうですね。だから次の日には「あれなんだっけ?」って時もあるんですよ。曲を作っているとき、作ってめっちゃ放置しちゃうか短期集中型とかでやってます。だから放置する曲は自分らしくなくなっちゃうんだと思います。放置することによって、自分がどんどん違う人になるんですよ。だから違う自分で作ることになるんで、どんどん今の自分とは違う感じがしてしまう。
──なるほど。一個前の自分と全然違うってことの方が多いですか？
守乃：世に出してない曲とか、「ん？」っていう曲とか、「恥ずかしい」みたいなときがあるんですよ。例えば、“HappyENDじゃ終わらせない！”は高校生の時に作ったんですけど、あれなんかもう書けやしません、もう二度と。感覚とか好きなものとかもすぐ変わっちゃうし。けっこう私飽き性なので、熱しやすく冷めやすいのかもしれない。
──じゃあいろいろ変わっていく中で、それを曲として封じ込めるみたいなイメージでしょうか。
守乃：そうです。だから「あ、この曲当時こんなことしてたな」って感じで思い出せます。自分のこと、記憶とかを。「あー、この時この映画好きだったな」とか「この時この漫画ハマってたな」とかそういう感じします。自分の曲に対して。
