INTERVIEW : 花冷え。

2023年7月のメジャーデビューからわずか半年で17ヵ国45公演のワールドツアーを成功。今年は北米・EUでのワンマンツアーや、日本人女性アーティスト初となるアメリカ最大級の音楽フェス「Lollapalooza 2024」でのメインステージパフォーマンスを成功させるなど、話題性MAXの花冷え。。ビビッドでキュートなルックスからは想像できない“DEATH”でメタリックなラウドロックとジャパニーズカルチャーを引っさげ、世界で活躍する4人組ガールズバンドが、メジャー1st EP『ぶっちぎり東京』をリリースした。 渾身のEPには「O・TA・KUラブリー伝説」「メタ盛るフォーゼ!」など海外ファンからも大人気の楽曲に加え、海外を爆走してきたからこそ生まれた表題曲「ぶっちぎり東京」や意外性満点の新曲も収録。そのバラエティに富んだ内容を、たっぷり語ってもらった。
インタヴュー・文:阿部美香
写真:つぼいひろこ
デモがもう、ぶっちぎってたんです
――昨年7月のメジャー・デビュー・アルバム『来世は偉人!』以降、まとまったパッケージとしては久々のメジャー1st EPになりました。しかもタイトルの『ぶっちぎり東京』というのが、またインパクト大で。世界を股にかける花冷え。らしくて痛快です。どんな想いを込めました?
衝撃のデビュー・アルバム!
ユキナ(Vo):去年、今年とたくさん海外ツアーをやらせてもらい、いろんな国に行って帰ってきたぞ!という原点回帰がコンセプトになっています。東京、日本のジャパンカルチャーってやっぱりすごいんですよ。日本から来たよ!というと、ライブにもジャパンカルチャー好きな方がたくさん来てくれるし、改めて日本だけにいたら分からなかった東京の良さやすごさを実感したのがきっかけですね。東京で生まれた花冷え。の音楽を、ぶっちぎりで東京から全国、世界へ届けたい。そんな想いを込めました。
――ぶっちぎっていくぞ!という宣言ですね。
ユキナ:私達ヤンキーとかじゃないんですけど(笑)、“ぶっちぎり”ってつい言いたくなっちゃう言葉なんですよね。意味を知らない海外の人達が口にしても「ぶっちぎり!」って語呂が良くて気持ちいいだろうし。
マツリ(Gt,Vo) :なんか、この絶妙なダサさがいいんですよね(笑)。
――その表題曲「ぶっちぎり東京」がEPのオープニングを飾りました。痛烈なリフとユキナさんの「ぶっちぎり!!!」のデスボイスからスタートする爆走ラウドナンバーです。
ユキナ:マツリのデモが、もうぶっちぎってたんですよ。ツアー中のホテルで、寝っ転がりながらデモを聴かせてもらったんですけど、良すぎて叫びました。
マツリ:そう、いきなり起き上がって「めっちゃいいじゃん!」って(笑)。
ユキナ:私がやりたかったヤツだ!って思ったんです。
――そこから2人で歌詞を?
マツリ:そうですね。いつもそうなんですけど、私がデモを作ってイメージをユキナと共有して、それぞれが歌うパートの歌詞を書く“おのおのスタイル”でやってます(笑)。


――デスボイスのシャウトやラップパートはユキナさんで、メロディックでクリーンなボーカルパートはマツリさんが歌うのが、花冷え。の定番ですからね。演奏についても分業制ですか?
マツリ:そうですね。私がデモで土台を作ってみんなに投げて、ベースはヘッツ、ドラムはチカが好きなようにアレンジしてください!と。そこから全部のレコーディングに私が行って、話し合いつつ固めていきます。
チカ(Dr):結構、自分1人で考えてると、いっぱい考えすぎちゃって、いろんな難しいフレーズを詰め込もうとしちゃうので、マツリにバランスを取ってもらってる感じですね。
ヘッツ(Ba):もともとデモに打ち込んでくれているのですが、自分のやりたいフレーズとマツリの作った楽曲の意図を考えながらアレンジするのが楽しいです。
マツリ:インディーズの頃は何から何まで全部自分達だけでやっていたんですけど、メジャーデビューしてからはレーベルのスタッフさんから、私のディレクションとは違う目線からアドバイスをもらえて完璧な状態にできるので、すごくいい形で音楽が作れています。やりたいことをやりながら、いい感じで野放しにしてもらっているので(笑)。
――さらに「ぶっちぎり東京」には、TikTokやYouTubeで大バズりしたインディース時代の代表曲「お先に失礼します。」などのアレンジも担当されてきた“ゆよゆっぺ”さんが参加されました。
マツリ:私達にはいろんなタイプの楽曲があるんですけど、めちゃくちゃパンク寄りなこの曲を、信頼する(ゆよ)ゆっぺさんがアレンジしたらどうなるのかな?と、お願いしたんです。バンドサウンドはメインにしたかったんですが、そこにユキナのシャウトが乗ると泥臭すぎる。東京で暮らす若い子たちが持っている希望とか憧れの部分を、ゆよゆっぺさんがシンセサウンドで添えてくれて、100%の曲を120%にしてくれました。
――歌詞でこだわったところはどこでした?
ユキナ:ちょっとした平成感と、やっぱり東京ならではのワードですね。
――「スクランブル」とか「宇田川」「ハチ公前」とか、渋谷色がふんだんに。
ユキナ:海外から東京観光した人にも分かりそうなフレーズを多めに。「嫌になる程 湿度も高潮」……東京、湿度高いよね、とか(笑)。
マツリ:さらにEP全体を通して、ユキナはシャウトの他に、クリーンな声も進化しています!
ユキナ:東京、渋谷といえばやっぱりギャルだし、東京はジャパニーズ・カルチャーならではのアイドル文化も盛んなので、後半はペンライトを振りたくなる感じにしています。
マツリ:ユキナの今までとキャラクターが違う声質も聴けるので、そこも注目してほしいですね。
ヘッツ:ほんとに、曲ごとにキャラクターがどんどん増えているから、今回はこのタイプか!そっちのタイプか!って、毎回びっくりするんですよ(笑)。そうやって声を自由自在に変えられるのも、花冷え。ならではなので。
チカ:「ぶっちぎる」って何度も言ってるところは、ライブでぜひ一緒に叫んでほしいです。
――そして2曲目には「メタ盛るフォーゼ!」、3曲目には「O・TA・KUラブリー伝説」と2024年の花冷え。を代表する楽曲が収録されました。サウンドもコアだけどキャッチーで、ジャパニーズカルチャー色もかなり強い2曲なので、花冷え。入門にも最適な2曲ですよね。
ユキナ:そうですね。「メタ盛るフォーゼ!」は、私達はアニメやヒーロー物が大好きなので、もしもメンバーがアニメのヒーローだったら?ということを歌詞に込めていますし、「O・TA・KUラブリー伝説」はもうまんま、アニメやゲームって日常不可欠だよね!という曲なので、楽しく聴いてもらえると思います。
チカ:あと、今回は2曲ともマスタリングもし直しているのもポイントで。
マツリ:そうなんですよ。オリジナル音源だと「メタ盛るフォーゼ!」はミドルハイ寄りにマスタリングしていたし、「O・TA・KUラブリー伝説」は電子音にフォーカスしていて、重たいけどピコピコ、キラキラな感じに仕上げていたんです。でもEPでは4曲目に「GAMBLER」というかなりメタルコア寄りの新曲を置いたので、そこに向けてだんだん音が重たくなっていくように、耳に馴染むようにしたくて、めちゃめちゃ音を調整していきました。デジタルシングルやMVとはまた違って、新鮮に聴いてもらえると思うので是非CDで聴いて頂けたら嬉しいです。