自分もいつか消えてしまうけれど、概念になってでも、届けたい
−−−ではその流れで「Turing」も軽くお伺いしたいんですけど、この曲は逆にイメージしてた世界観をバチッとハマったリリックビデオみたいな感じでした。
kevin:抽象画みたいな感じで、僕もすごく気に入っています。
佐藤:fhánaの割と初期の頃の楽曲に「kotonoha breakdown」という曲があって、この曲のMVは結構キャラクターがたくさん出てくるんですけど、そこから抽象的な雰囲気だけを抽出したみたいな映像に仕上がりましたよね。
−−−そして8曲目の「Runaway World」から第2部ですね。この曲はTVアニメ『逃走中 グレートミッション』のタイアップでもありますし、MVもかなり前に撮影されていましたよね。こちらについてはOTOTOYでも詳しくインタヴューしていますので、ぜひそちらをご覧頂ければ……!
佐藤:逃走中はまだまだ”放送中”です(笑)。
−−−まだまだfhánaが”Runaway”し続けています(笑)。続いて「Matching Error」ですよね。この曲はkevinさんらしさが出てるし、先ほどもおっしゃってましたけど、新たなfhánaのイメージも感じました。
kevin:基本的にボク、明るい曲が好きでハッピーな曲ばっかり今まで聞いてきたから、アウトプットもそういうものばかりだったんですけど、今回はマイナー調っていう縛りで作ろうというのが、制作の初期にあって、実際に作ってみた結果、いい意味で悪女感があるというか、妖しさがある曲が出来て、気に入っていますね。作詞はもちろん林さんで、ボクは「こうしてほしい」みたいに言ったりしてないんですよ。ただサビで、towanaさんの裏で入ってくる英語の部分が、勝手に「絶対ここ歌ってもらうなら英語だろうな」ってずっと思って、実際に歌詞が上がってきたらやっぱり英語になってて(笑)。そこはすごい通じ合ってる感じで嬉しかったですね。
−−−fhánaのイメージにあまり無い曲という話もありましたが、towanaさん的には歌い方というか、レコーディングの際に気をつけたポイントはありますか。
towana:デモが来た時点で「kevinくんもかっこいい曲作るやん」って思ったんですけど、確かにfhánaにあまりないダークな感じで、でも元々私はそういう曲もすごい好きだったから、楽しかったです。
kevin:この曲、レコーディングの時に面白い話があったんですよ。
−−−そういうの!ぜひ聞かせてくださいよ!
towana:いつも歌のレコーディングの時は佐藤さんがディレクションなんですけど、この曲のディレクションは、レコード会社のディレクターさんなんです。ふぁなみりーには知れ渡ってると思うんですけど、穴井さんっていうディレクターさんで「city dream city」も穴井さんディレクションなんですけど、この「Matching Error」にかけて、穴井さんのちょっとしたイタズラをした話を聞かされて、女性の立場として、怒りながらRecをしたっていう(笑)。
kevin:ちょっとイラッとした感じが声に乗っかってて、良いんですよ!(笑)
towana:穴井さんの話は大笑いしながら聞いてたんですけど、感情をのせるのに役立ったっていう話でした。
−−−10曲目「永遠という光」です。こちらのMVはしっかりセットを組んだりした映像になっています。
towana:実はスタジオにセットを組んだわけではなく、大学の講堂みたいな所で撮影しました。
−−−そうだったんですね!
kevin:もう使われてない旧校舎みたいな所で、そこが木造ですごい雰囲気があって、よかったよね。
佐藤:ゲーム『ONE.』のOP主題歌だし、しっかりと撮りたいよねという感じでしたね。
−−−続いて「風になって」です。こちらはtowanaさんが作詞されていますが、今回のアルバムのコンセプトを踏まえて、どんなことをイメージしながら歌詞を書かれたんでしょうか?
towana:私が作詞してる曲って、ふんわりとでも「こんな感じで書いてください」っていうのがあることがほとんどなんですけど、今回ディレクションが全くなくて。いざ「自由に書いてください」みたいに言われると「The Look of Life」って”Look”も”Life”も意味が広すぎる!と思って。どうとでも取れるというか。だから、私なりの”Look of Life” を書こうと決めました。
それで、曲自体は、すごい明るくて爽やかな感じだから、”風”っていうテーマを据えたんですけど、この明るい爽やかな曲に、どういう内容の詩を載せたらかっこいいかな?と考えた時に、 明るいからこそ歌詞では切ない感じにしたいと思って、書き始めました。
−−−個人的にはハッとさせられるフレーズがいくつもあって、「気まぐれな空は初めての表情」とか、日常の切り取り方にtowanaさんらしさを感じました。
towana:私なりの”Look of Life” を書こうとしたんですけど、あまりにも主観的になりすぎるのは、なんだか恥ずかしくて、具体的に日常のこういうシーンをイメージして書いたとかでは無いんですけど、でもやっぱり書いてみたらそれを思わせるような歌詞になっちゃったのかな。
佐藤:これはあくまで僕個人のtowanaの歌詞の解釈なんですけど、この曲は言ってみたら、死についての曲だなと。で、これは曲調で言ったら爽やかだし、もっとアルバムの前半とか中盤に持ってきてもいい曲だと思うんです。けれども、towanaの歌詞がこうなったことによって、後半の方がしっくりきたって感じなんですよね。
サビの「さあ ラララ そう ラララ」って部分、「ラララ」ってのもまた良いんですけどその後に「世界のどこにいても届くように」と続くって事は、恐らくその人はもういないんですよね。どこにいるかわからないけど、世界のどこにいてもその人に届くように歌って、切ない歌詞だなって聞いてくと、それに続くこのDメロの歌詞がすごいんですよ。「生まれて生きている理由 分からなくたっていいんだって 強いて言うなら 夕焼けが綺麗 風が気持ちいい そんなところ」と言いつつ、「このふるえる心も いつか消えてしまうだろう」。まあ、自分もいつか死ぬんですけどね。みたいな、達観した境地まで到達しちゃってる。自分もいつか消えてしまうけれど、概念になってでも、届けたい。だからこそ”風になって”いくんですよ。……これって、ヤバくないですか?
towana:歌詞書いたのは私だけど、この歌詞は聞いてくれた人のものにしてほしくて。その人の受け取り方はお任せするんですけど、何か感じるものがあってほしくて。で、佐藤さんはこういう風に解釈してくれたと。すごく深く刺さってくれたのは嬉しいんですけど、そこは強調させてください(笑)。
佐藤:もちろん、そう。towanaは自分で書いた歌詞を、自ら皆まで言うタイプでは無いですけど、この歌詞が出来上がった後、珍しくtowanaに「この歌詞どう思いました?」って聞かれたんです。「めちゃめちゃ感動しました」って言ったら「良い悪いとかじゃなくて、どう思いましたか?」って聞き直されて「生と死……というか”死”ですよね」と言うしかなかったんですけど、towanaの歌詞って、今まで基本全部ちょっと切ない系の、何かを失っているみたいな感じの歌詞の世界が多いんですよね。孤独感がある歌詞をずっとこれまで書き続けてきて、ついに仏教的な世界観というか、この境地に達したか……みたいな。ちょっと凄すぎましたね。(※あくまでリーダー個人の見解です。)
towana:あの、あくまで佐藤さんの解釈ですからね!(笑)。私が言ってる訳ではございませんので!
−−−ココ、米印で注意書きが必要ですね(笑)。(towanaさんへ、ちゃんと記載しておきましたよ!)
佐藤:僕は”空(くう)”を感じました(笑)。※仏教における”空”とは実体はないけど確かに存在するモノを指します。
towana:でも、最近このアルバムに入ってる新曲たちをファンの方と一緒に先行試聴するってイベントをやったんですけど、改めてじっくり聞いてたら、自然と私も泣けてきて。自分で書いた歌詞で泣くってどういうことや!って思いながら「でもいい歌詞書けたかもしれないな」って、その時に思いました。
−−−そして最後の「waltz for lily」になるんですけど、ここまでの話を踏まえると、この“lily”の解釈もかなり具体的に出来そうですし、「風になって」と良い感じに繋がってきた感じがします。
佐藤:百合の花ですからねぇ。最初のデモはピアノとメロだけで、すごくこじんまりとした小品みたいなイメージでワンコーラスだけ作ったんですけど、いざフルサイズで作ってみたら、なんか壮大になっちゃって、うっかり壮大になったことによって、ワンコーラスの、ピアノとメロだけの時は、本当それこそパーソナルな、1人の人の物語、というか、ある人生の一場面についてぐらいな感じの世界観のつもりだったのが、”The Look of Life”の中でも、今を生きる人たちだけじゃなくて、今ここにある生活っていうのは、過去から現在まで積み重ねられてきたものってわけですよね。これまで生活を営んできた人たちがいて、その人たちが生まれては死んで、生まれては死んで、現在に繋がる。そして、それはまた未来へと繋がる。みたいな、そんな人々の生活の営みみたいなものを感じる歌詞になったなと思ったりして。
ちなみに、僕が林くんに歌詞書くときに「こういうイメージで」って言ったのは映画『オネアミスの翼』のラストシーンなんです。最初、主人公のシロツグは宗教なんて全く興味がないんだけれど、宇宙飛行士として色んな訓練や経験を積んで、いざ宇宙に飛び出た際には、神様的な存在に触れて、最終的には祈りの境地に達する、みたいな「そのイメージで書いてください」って話はしたんですよね。
−−−でも、今のひと通りの経緯を聞いて、ワルツっていう発想になっていったのはすごくしっくりと来ました。円周軌道を描くという意味では天体的だし、何度も何度も繰り返していく姿は人類の営みとも重なります。
佐藤:音楽的にも6/8拍子で、壮大に盛り上がっていく感じも良いですよね。この曲だけギタリストが違うのもポイントですね。ちなみにこの11曲目までは、HoneyWorksの中西くんとインナージャーニーの本多秀くんにギター弾いてもらっているのですが、この曲は沖縄在住ギタリストのYusho Sunagawaさんにお願いをしているんですね。instagramでたまたま見かけた方なんですけど、ポーター・ロビンソンの曲とかをアコースティックギターで1人で弾いててめちゃめちゃエモいんですよ。この6/8拍子の曲、この人が弾いたらすごく良くなるだろうなと思って、インスタでDM送ってコンタクト取りました。
−−−そんなアプローチの仕方もあるんですね(笑)。ここまで本当にたっぷりお話聞かせて頂きましたけど、やっぱり最終的に思うのは”人生”っていうものに対してのすごい深いところにまで到達できるアルバムになってるなという点ですね。
佐藤:なんだか、CLANNADみたいだなぁ(笑)。
−−−CLANNADは人生ですからねぇ(笑)。
kevin:towanaさんが別に狙って書いたわけじゃないと思うんですけど、「風になって」も、歌詞が「小さな手のひら」から始まるのって、めっちゃCLANNADですし、最終的にはやっぱりそこにたどり着くっていうのがfhánaらしくていいですよね(笑)。
−−−最後にひと言ずつ読者の方にメッセージいただければと思います。
kevin:さっきもちょっと話しました。本当にfhánaにとってだいぶ新しい風が吹いたアルバムになったと思ってます。なんか単純に曲調を聞いても、fhánaっぽくないみたいな曲もちらほらありますし。個人的には今回の制作から結構作り方も今までと変えたところがあって、そういうのも存分に出せたので、個人的にも大満足でした!早く皆さんにいっぱい聞いてもらって、感想を教えてほしいなって思ってます。
towana:10周年も越えて、コロムビアさんに新しくお世話になることになって、初めてのフルアルバムなんですけど、本当に自分がかっこいいの、好きなの、いい曲だなって思える曲しか入ってないアルバムが出来た事がシンプルに嬉しいです。変に肩肘張ることもない”The Look of Life”っていうテーマ性で、今後もこういう感じでバンドをやっていけたらいいな、ってアルバムになったんじゃないかな。あとはツアーにぜひ来て頂けたら!
佐藤:みんなの日常生活に寄り添って、みんなの心に寄り添えるような、優しいアルバムになったら良いなという思いで作り始めましたけれど、結果的にそういうアルバムを作れたと思うんですね。制作スケジュール的には最後、本当にもうドタバタというか、時間がない中でガーッて作ったんですけど、でもこの新曲たちっていうのは、fhánaでこれまで積み上げたモノだけじゃなくて、楽曲提供であったり、最近だとnonocというアーティストを迎え入れたりとか、その新しい経験みたいなものも曲に反映されていて、自分が経験してきた自分の人生と結実していった。そこにkevinくんのアレンジだったりtowanaの歌が合わさって、みんなのこれまでの人生の集大成的なアルバムが生まれたのが、個人的には一番嬉しかったですね。
でも、やっぱり今までのfhánaの曲たちもそうなんですけど、 リリースしただけではその曲って完成してなくて、ライブで何度も演奏して、ファンのみんなの前で一緒に歌ったりとか、ファンの方々から直接生のリアクションを頂いたり、そういう時間を何度も過ごすことによって、どんどん曲が完成されていくので、今回のアルバム、この世界観をツアーを通して、みんなと一緒に作り上げていきたいです。一緒に作りあげられる事が何より、今はすごく楽しみです。なので、是非このアルバムをたくさん聞いて頂けたらと思います。
編集 : 西田健
聴く人の人生に寄り添う一枚
LIVE INFORMATION
fhána 5th Album Tour 2024-2025 〈OSAKA〉
2024年 12月1日(日) 大阪 梅田CLUB QUATTRO
会場:16:15/開演:17:00
スタンディング
fhána 5th Album Tour 2024-2025 〈NAGOYA〉
2024年 12月1日(日) 愛知 名古屋ReNY limited
会場:16:15/開演:17:00
スタンディング
fhána 5th Album Tour 2024-2025 〈TOKYO〉
2025年 1月13日(月・祝) 東京 HULIC HALL TOKYO
会場:16:15/開演:17:00
全席指定
詳細はこちら!
[http://fhana.jp/schedule/|http://fhana.jp/schedule/]]
EVENT INFORMATION
fhána 5thアルバム『The Look of Life』発売記念リリースイベント
2024/11/20(水)
タワーレコード池袋店 店内イベントスペース 19:00〜
【集合時間】
18:45
【会場住所】 東京都豊島区東池袋1-50-35 池袋P'パルコ6F
【イベント内容】
ミニライブ&CDジャケットサイン会
※ミニライブはどなたでもご観覧頂けますが、「整理番号付き入場券」をお持ちの方は、優先的に前方の観覧エリアにご案内します。
【対象店舗】
タワーレコード池袋店
【参加方法】 2024/11/19(火)商品入荷時(入荷次第)より、タワーレコード池袋店にて対象商品をご購入頂いたお客様に先着で「整理番号付き入場券」及び、購入枚数に応じた「特典券」をお渡しします。
「整理番号付き入場券」をお持ちのお客様は、ステージ前の優先観覧エリアでのご観覧が可能です。
またミニライブ終了後、「特典券」をお持ちのお客様はCDジャケットサイン会にもご参加頂けます。
詳細、その他注意事項はこちら!
[http://fhana.jp/schedule/|http://fhana.jp/schedule/]
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