とにかく笑いで満たしていきたい
——10月16日(水)にはオオサカ・ディビジョンとしての新作『.どついたれ本舗』がリリースされます。簓のソロ曲は“Laughin’ hope”という楽曲ですが、これがまた大阪らしいというか、ファンキーな生音っぽさがある楽曲に仕上がった印象です。
岩崎:そうですね。大阪っぽさが全開ですね。いい意味でごちゃごちゃしているというか。大阪の街並みに合っている感じがするけど、どこかおしゃれですよね。
——作曲・編曲を担当したオーサカ=モノレールさんとThe Anticipation Illicit Tsuboiさんのファンキーさが前面に出た楽曲だなと感じました。歌ってみてどうでしたか?
岩崎:めちゃくちゃ難しかったですね。この楽曲は音にノリながらも、自分の内側と話しているようなラップというか、自問自答しながら過去のトラウマと向き合っていくんです。そして、確固たる自分とディビジョンの絆を再確認していくようなストーリー性もある楽曲で。「高らかに笑いたいが薄ら笑い」とか、最初は自分が追い込まれている状況なのに、1番の最後では「もう傷つくことビビらない / どんな状況でも起こす一笑い / それができやな俺である意味がない / On the stage白膠木 簓やgimmie a light」という歌詞は、歌っていてすごいなと感じます。

——1曲の中で自問自答をして答えを見つけていくストーリーに心打たれました。
岩崎:自分のなかの内面を吐露しながらも、「自分でやっていくんだ」という想いに共鳴するというか。芸人としての矜持を見せるぞという思いがありますよね。
——作詞は梅田サイファーとしても活動されている、pekoさんが担当されています。
岩崎:どのくらいpekoさんの要素を出せているかわかりませんが、サビあたりは「笑いが全部のエネルギーの源」というような自己暗示をかけていて。それを実際に口に出すことで自分自身にも返ってくるというか、そこもいいところですよね。言葉の持つ力を感じますね。

——これまでの白膠木 簓は、「芸人っぽさ」を前面に押し出すような楽曲が多い印象でしたが、今回はまた違う一面を出していますよね。
岩崎:今回はストレートに思いを伝える楽曲ですよね。簓の内側がようやく出たなと思います。「仲間思うなら突き刺すど真ん中」とか「本気の笑いが俺なりの愛や」って歌詞、いいですよね。
——あらゆる問題を内側に抱えながらも、それを笑いに昇華していく姿勢が歌詞によく表れているなと。
岩崎:簓の生き様ですよね。ディビジョンでお互いが信頼し合っているのがわかるのもいいなと。いちばん最後のお客笑わせてなんぼの商売 / 笑顔で満たしたい古今東西 / お待ちどう!どつ本 It’s a 笑タイム」も好きで。「笑顔で満たしたい古今東西」という歌詞には、ラップでバトルしていくよりもとにかく笑いで満たしていきたいという思いからだと思うんですよ。そこも自分は同じラブ&ピースな気持ちなので共感できました。
——特に歌うのが難しかった箇所はありますか?
岩崎:冒頭ですね。何回練習しても言えなかったんですよ。短いところに言葉を詰め込むのがスキル的に難しかったです。「これをライブで歌うのか」って緊張が走りました。

——ヒプノシスマイクは、毎回求められるラップスキルがどんどん高くなっていっていますよね。
岩崎:だからこそしっかり歌えたときは嬉しいです。簓のソロ曲なので、約3分を全部自分のオンステージにできるのが快感というか。
——ラップは普段から練習しているんですか?
岩崎:そうですね。それこそ梅田サイファーさんとか聴きながら、練習してますよ。自分の中ではいつもとはまた違う発声の仕方なので、普段から歌ってないと中々ノリにくいんです。
——普通に歌うときとどう発声が違うんですか?
岩崎:いつもより子音に重きを置いています。英語を発声するように言うとうまくいったりとか、口のどこに力を入れるか考えたりしていますね。歌うのが難しい楽曲に出会ったときは、発声法とか発話の方法を研究するようにしているんですよ。そうするとバチッとハマる瞬間があるんです。
——なるほど! 歌いながら研究しているんですね。
岩崎:今回はpekoさんの歌い方を参考にして何回も聴きました。またこれも難しいところで、岩崎諒太として歌うことはできても白膠木 簓の声で歌うのが大変だったりするんです。簓の声で畳み掛けるのが難しい(笑)。どのディビジョンのラップもそうですけど、そこがヒプマイの難しさでもあり、楽しさでもあると思いますね。
——キャラクターの演技に加えて、発声法も頭で考えるんですね。
岩崎:ラップだと、よりパーソナルな部分を出さないとなと思っていて。今回の楽曲も、サビはもちろんですけど、「走りだしゃ止まらないジェットコースター / 上がり下がりなきゃなんもおもんない」とかポイントポイントで強調したりして感情を表現しています。でももちろん全体のバランスもあるので、せめぎ合いながらという感じですね。作詞・作曲してくださる方も職人ですし、そのパスをしっかりゴールしなきゃなと思っています。
