INTERVIEW : Deep Sea Diving Club

Deep Sea Diving Clubの持ち味は、全員がかなりのミュージック・ラバーであることだと思う。この取材中もその前も、とにかく音楽の話で盛り上がっていた彼ら。その多様なインプットから生み出された楽曲は、R&B、ソウルの要素をベースにしながらも、ジャンルにとらわれない音楽に昇華されている。メンバー全員が作曲に携わることで、それぞれの少しずつ違う音楽ルーツが絶妙に組み合わさり、それが最終的にはポップな楽曲へと仕上がっていくのが実に見事だ。彼らが作り出す音楽という深海に、ぜひ潜ってみてほしい。一度潜ったら抜け出せなくなるかもしれないが、きっと心地の良いグルーヴを感じるはずだから。
インタヴュー&文 : 西田 健
写真 : 藤重 廉
二択で迷ったらポップな方
──バンドの結成の経緯は、どういう流れだったんですか?
谷 : 元々僕と鳥飼と出原は、福岡のミュージックバーの同僚だったんですよ。それから大井と出会って、4人でバンドになったという感じです。自分はいろんなバンドをやってきたんですけど、結局辞めちゃって。次はひとりで「今日は弾き語り」「今日はバンド」みたいな形態で活動していこうと思っていたんです。それで、いまのメンバーにサポートとして声をかけようとしてたんですけど、逆に彼らの方から「一緒にバンドやりませんか?」って言われて。これはもう名前をちゃんと決めて、バンドとして動こうかなと決めた感じですね。
鳥飼 : バンド名、元々サンダルって名前に決まりかけてたよね(笑)。
出原 : サンダルは最悪だよ、雑すぎるもん(笑)。今考えると、2019年の8月結成で、10月には初ライヴやったわけ?めちゃくちゃ早いよね。
──そんなに早いスパンで動いていたんですか?
谷 : 僕がイベンターっぽいことを当時やっていて、その第7回目のタイミングでDeep Sea Diving Clubとして出ました。30分ライヴするために、頑張って曲のストック貯めてね。
鳥飼 : あの時はガチで緊張した。初ライヴなのに、お客さん170人くらいいたし。
──初ライヴの前には、すでにMVも撮られていたんですよね。
谷 : まず、音源を作るのが大事だなと思ってたんですよ。「バンドを結成しました!」ってSNSで発表したあと、それから思うように活動できないバンドをこれまでたくさん見てきたから、僕らは結成を発表する前に、すでに音源がある状態にしようって話になって。音源を作って、映像も撮って、MVもある状態にして、「初ライヴします」というところまで込みでSNSに打ち出しました。
──かなり計画的ですね。
大井 : 自分は、コピバンとかじゃないオリジナルのバンドを組むのが初めてだったんですよ。バンドって何回も組んでは解散してを繰り返して居場所ができる、みたいなものをイメージしていたんですけど、全く逆のことがどんどん続いているから不思議な気持ちですね。活動スタートするタイミングで音源もすでにあるし、お客さんもめっちゃ来てくれるし(笑)。
谷 : でも、そんな大井ちゃんがはじめてなりに、新しい意見もくれるので、固定観念を壊しつつ活動して来れたのかなとは思いますね。ひとりで音楽してると、作曲だったり集客だったり、考え方が煮詰まってくると思うんですよ。メンバーそれぞれ進んできた道は違うので、意見がぶつかることもあるんですけど、そのお陰で考え方も広がりますね。バンドってそういうところが素晴らしいなって思いますね。


──それぞれの音楽のルーツもバラバラだったんですよね。
大井 : ギターを教えてくれた人が“ブルースおじさん”だったんですよ。その影響で、ブルースを聴き始めて。それからジョン・メイヤーやディアンジェロが好きになりました。
出原 : 僕もブルースとかソウルは好きなんですけど。割とゴスペルとかも好きなんですよ。あとは、80年代のディスコとか。僕は音楽専門校の出身なんですけど、「うちは洋楽しかやらない!」っていう学校だったんですよ。「J-POP教わりたかったら独学でやってくれ」みたいな(笑)。ジャズやブルースが生まれた背景とか、そういうのを学んでいたので、その影響もすごく大きいですね。
鳥飼 : 僕は高校ぐらいの時に、ブルースとかのコピバンを始めたのが、音楽にはまったきっかけですね。みんなと違うのは大学に入る前くらいのときに、インターネット発信のベースミュージックとかハウスにハマってました。ポップスの価値観も、最近の打ち込みとか、電子音楽的なところにウェイトを置いてるかな。
谷 : 俺は子どもの頃に、175Rとコブクロを歌ってたんですよ。あとユーミンとかスピッツ、PUFFY、aikoとか。親も音楽が好きだったので、雑多に聴いていました。中1の頃に友達から、BUMP OF CHICKENを教えてもらって、そこではじめて「バンド」というものを認識しました。そこから、いわゆる“邦ロック”と呼ばれるジャンルにどんどんハマっていって、それからハードコアとか、メタルも聴いてました。ブルースとかソウルも好きなんですけど、それはいまのメンバーに教えてもらって詳しくなってきたかな。
鳥飼 : 出会った頃もチラチラ聴いてたけど、最近「何それ?」みたいな深いところまで聴いてるよね。
谷 : レコードを買い始めて、ジャズにハマったんですよ。レコ屋に行って「あ、これ出原が言ってたやつだ!」とか、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのLPを見つけて「あ、これ鳥飼さんに買ってあげよっかな」とか(笑)。ディアンジェロの『Voodoo』をココナッツディスクで見つけたときは、大井ちゃんの顔が浮かんだもん。
鳥飼 : 最初の方は好きな音楽も本当にバラバラだったんですけど、それを共有し合ううちに、最近は共通の好きな音楽が増えてきたって感じがしますね。
──Deep Sea Diving Clubのバンドとしての音楽性はどうやって決まっていったんですか?
大井 : 正直決めたことないんですよ。4人とも好きなのが違うから、逆にそれを生かして行ったほうがいいんじゃないかと。ロックもできるし、パンクもできるみたいに、そういう感じにした方がバンドとしての振れ幅が大きくなると思うんですよ。いろんなジャンルの人たちとコラボしたりしているんですけど、方向性を決めなかったことがよかったなと思います。
──Deep Sea Diving Clubの音楽は、R&Bやソウルの要素をベースにしながらも、ポップスとしての純度が高いように感じています。そういう部分は意識して「もうちょっとポップにしよう」という話をされているんですか?
大井 : そうですね。最近はそこも意識して作るようになってきました。たくさんの人が聴いてくれた方が、嬉しいですし。
出原 : もちろん、これから大きくなっていくことを考えると、歌モノのフィールドでしっかりやっていきたいという想いもあります。
鳥飼 : 結構「二択で迷ったらポップな方」って感じでやってますね。アレンジが二つあって「どっちがいいかな?」ってなったら、ポップな方を選びたいねっていうルールみたいなものは暗黙の了解としてありますね。

