スペシャル・フォトギャラリー
INTERVIEW : nonoc

fhánaの中心メンバーであり、作編曲家・音楽プロデューサーとしても幅広く活動する、佐藤純一が2023年7月に設立した事務所「NEW WORLD LINE」へ、新たに2024年2月よりアニソンアーティストのnonocが加わった事は記憶に新しい。今回、プライベート・レーベルとして同名の〈NEW WORLD LINE〉が発足し、その第一弾として、nonocが歌う「ドアの向こう」がリリースされた。そこでレーベルとしての〈NEW WORLD LINE〉の狙いや、今回の楽曲の作曲も担当している佐藤も交えながら、入所と同時に上京したばかりのnonocに現在の心境を伺うインタヴューを行った。大きな飛躍を遂げた彼女の新たな世界線は、まだ始まったばかりだ。
インタヴュー&文 : 前田勇介
撮影 : 宇佐美亮
私のこれから先も変わらないところを好きでいてくれる
ーー今回は新曲「ドアの向こう」についてのインタヴューですが、まずは佐藤さんとnonocさんの出会いからお伺いしたいです。
佐藤純一(以下:佐藤):方々でしている話なのですが、彼女の前の事務所の方が まだデビュー前のnonocを連れて、fhánaのツアーの札幌公演にいらして下さったというのが一応のファーストコンタクトにはなるのですが、正直その時の事についてはお互いにあまり覚えてないんですよ(笑)
その後、 nonocとしてデビューして、2019年に同じイベントに出演する機会があったんです。そこで改めて、サウンドチェックのリハーサルを袖で見てて、電撃が走ったんですよ。完全に歌の世界に入り込んでて、周辺がちょっと別次元みたいな感じで、すごい雰囲気が出来上がってて。「良い新人がデビューしたんだな」って思ったのが、彼女を意識した瞬間でしたね。
ーー逆に、nonocさんの視点からも佐藤さんを強く認識したのってその時ですか?
nonoc:いや、全然違うんです(笑)。
佐藤:それじゃ、その時は誰だかよくわかんない人ぐらいな感じだったってコト(笑)?
nonoc:いやいや、そんなことはないんですけど(苦笑)。やっぱりタイアップのイメージが強くて、あとバンド形式でアニソンを歌われてる人たち、ぐらいのなんとなくの印象でしかなくって、そのイベントの時に佐藤さんから「ステージ良かったです」と声をかけてもらって、北海道から通いで東京に仕事しに来ていた時に、たまたまfhánaさんのワンマンライブと被るタイミングがあってご招待頂いて、そこで初めて、タイアップ以外の楽曲とかにも触れて、2時間通してライブを見た時に、良い意味で”ちゃんとアーティストをやってる”方々”なんだなって印象に残ったのを覚えています。
ーー私も、何度かfhánaのライブレポートも、書かせてもらったりしてるんで、おっしゃりたい事は分かります。ライブも演出とかも、かなりメッセージ性がありますよね。
nonoc:そういうのって、あまり自分の選択肢になかったというか、やりたいんだけど、なかなか難しく思っていた部分だったから、きちんとアーティストとして自分の世界観を展開しつつ、アニメの曲もやってる人がいるんだ、という驚きですよね。
ーー周りの雰囲気をガラッと変えちゃう部分が、佐藤さんから見たnonocさんの魅力だと思うんですが、逆にnonocさんから見た、佐藤さん、ないし「NEW WORLD LINE」の魅力ってなんでしょうか? というのも、デビュー5周年で上京してきて、そのパートナーに選んだ理由というか、この事務所に入ろうと思った決め手が何だったのかを知りたくて。

nonoc:まず最初に、一番リアルな話をすると、私が元々いた所が俳優さんがメインの芸能事務所だったので、音楽を第一にやっている所に行きたかったというのが前提としてありまして、加えて、自分のことに興味がある人とやってみたかったですね。新人としてイチからまた新たに売り出すとかじゃなくて、今までの自分にも興味を示してくれて、一緒に何か新しいことをやりたいって思ってくれる人と、私も仕事をしたいなと思っていましたし。私のこれから先も変わらないところを好きでいてくれるのってデカいなって思いました。
佐藤:nonocの魅力の部分の話でいくと、それこそ東京に来て、実際一緒に音楽活動するようになってから、実はどんどん変化していってるんですね。もちろん最初から好印象だったので、NEW WORLD LINEって会社を作った時に「一緒にやらない?」って話をしたわけですが、その時感じていたものよりも今の方がよりポテンシャルを感じていて、この半年でもどんどん成長していて、伸びしろしかないぞと驚いています。
ーーnonocさんの言う、「私のこれから先も変わらないところ」について、もう少し詳しくお聞きしたいです。
佐藤:それは”歌声”についてですね。これまでの彼女のイメージって、きっと綺麗な透明感のある声で、ちょっとデジタルな感じの曲を歌ってるみたいな印象だと思うんです。僕もそうでしたし。
nonoc:デビューした時は結構作ってたというか、やっぱりアニソンってアニメ作品ありきなので、求められるものが曲ごとで変わったりして、そこに葛藤を感じたりもあったんですけど、佐藤さんはニュートラルな声で喋って歌ったりしてる自分を好きって言ってくれてるんで、それは多分ずっとこの先人生変わらないものだから、めちゃめちゃ安心できるというか。
佐藤:彼女の歌声の魅力って、いま本人も言及していましたけど、ニュートラルなところだと思うんです。もちろん透明感のある声も魅力的ですが、やっぱりアニソンアーティストの宿命というか、ディレクションとか、アニメ作品だったり、色々な事情を踏まえて出してた声だったんだな、ということが段々と分かってきまして、試しにカラオケなんかで、自由に色々と歌ってもらったら、どんな曲でも全部歌いこなせちゃうんですよ。その声質はニュートラルでいて、実は太いんですよ。
nonoc:佐藤さんは、ディレクションや作編曲だけじゃなくて、収録とかミックスも全部ご自身でやられるので、やっぱり波形でもわかりますよね。
佐藤:彼女の代表曲で「Memento」という曲がありますけど、セルフカバーをYoutubeチャンネルで公開しているのですが、これを収録した時に、ライブ用のstemデータってあるじゃないですか。ボーカルだけとか、ドラムだけとかベースだけの音源データなんですけど、試しに、当時のボーカルだけのファイルとセルフカバーの音源を聞き比べてみたんです。あまりに違いすぎて、見た事ないレベルだったので、データがバグってるのかな?って本気で思うくらい驚いたんです(笑)。この”太さ”は、ぜひオリジナルとセルフカバーを聴き比べてみてほしいです。
ーーご自身でデビュー当時と比べてみて、人間として、あるいはアーティストとして、いちばん成長した点はなんですか?
nonoc:それもやっぱり「歌」ですね。歌うことは昔から好きだったけど、歌が上手くて拾ってもらったわけじゃなかったから、そのギャップを超えるのに苦労したんです。そんなタイミングでコロナ禍に入って、ライブもできなくなって。でも正直、自分にとってはその時間があって助かったなと思っています。いま振り返ると「もったいなかったな」って思うこともありますけど、自分が変わることに時間使えたんです。
