ラップパートは相手の心情を描いている
——次は、“CRYSTAL DROP”です。この楽曲はテイストが変わって大人っぽさを感じる冬のバラードになっています。
佐藤:この曲も“BLUE DIZZINESS”と同時期にデモをいただきました。「ウィンターバラードがきたな」と思ったんですけど、この曲を普通の恋愛ソングにしたくなくて。恋人との失恋ソングと読める部分もあるんですけど、実は、親友と離れ離れになってしまったときの気持ちが表現されています。だから友情ソングだと思って聴いてみると、全然違う曲に聞こえるんじゃないかなと。
真山:レコーディングのとき、みるくさんに「この曲は恋愛ソングですか? 友情ソングですか?」と聞いたくらいなので、その答えが聞けて嬉しいです。私は2サビの「大切にしまってた痛みごと今も甦る」の部分が大好きで。思い出を振り返ると、幸せなこともあるけど痛みも伴うじゃないですか。この曲のもつ切ない部分を、あったかく歌いたいと思って挑んだ楽曲ですね。あと私には珍しくラップパートを担当しているんです。自分が歌っている「繋がらないPhone Number もうかけないで笑顔でいて」って状況がよくあるんですよ。「あの頃の遊んでた友達、いまどうしてるのかな」とか巡っていく季節の中でも大事な人を思い出す曲になってほしいし、私もそういう思いで歌いました。でも最後はやさしい気持ちで終わらせてくれるのが、さすが千亜妃さんだなと思います。
小林:この曲、歌割りがペアの部分があってそこが良いんですよ。ペアによって解釈が変わってくると思います。私は同期の中山と「じゃれあった 帰り道 いつまでも 遠回りした」の部分を歌っているんですけど、甘酸っぱさがあって、毎回歌うときたまらない気持ちになりますね。
佐藤:最初はもう少し精神年齢が幼いイメージで書いていたんです。でももっと背伸びしてもいいかもと、みるくさんから助言をいただき、ところどころリライトしました。あとラップパートは相手の心情を描いているんですよ。アンサーを描くことによって、ふたりの心情がクロスしています。
真山:わー! そうだったんですか! なんかもうふたりを抱きしめてあげたい!
小林:私のパートすごく大事だった…。
真山:たしかにそういう視点でみると、ふたりの距離が遠いですね。
佐藤:そうそう。だから主人公の視点だと思って読んだら矛盾しちゃう部分もあって。2サビで「君の手 冷たくてただ 握りしめた」という歌詞があるんですけど、その後が「かじかんだ指先」という言葉になっていて、視点が変わっているんです。
真山:すごい! この歌詞を考察して、わかったファミリーの方がいるのか知りたいですね(笑)。
小林:でも彩ちゃん(安本彩花)が、「実はこの歌詞はアンサーを返しあってるんじゃないかな」って言ってた気がする。
佐藤:え、彩花ちゃんすごい!
——メンバー内で歌詞についての話はするんですか?
真山:“CRYSTAL DROP”に関しては、後輩メンバーが「この曲は大人っぽいから年相応になってきたときに、この曲聴いたらエモいよね」という話をしていて、そのとき彩花が「学生時代から振り返る過去もあるよね」と言っていたんですよ。


——3部作のラストは“TWINKLE WINK”ですが、こちらはディスコ調のアップテンポな楽曲に仕上がっていますね。
佐藤:この曲は元々「成長」がコンセプトだったんです。でも打ち合わせしているときに、やっぱり「ウチら最強!」みたいなギャルマインドな曲にしたいというオーダーをいただいて。青春の煌めきとダンスチューンというところから、星空×ダンスホールのコンセプトが思い浮かんだんです。そうやって歌詞を書いていくなかで、「プラネタリウム」というワードが浮かんできて、そこからより情景的な歌詞になっていったなと思います。
真山:なるほどー!そうだったんですね。
佐藤:キーワード的には「私たちだけのプロム」ですね。海外には学校の生徒みんなで踊る、プロムパーティーみたいな文化があると思うんですけど、それをワイワイ色んな人とやるんじゃなくて、私立恵比寿中学のメンバーだけでやるイメージです。青春って泣くこともあるし、笑うこともある。でもそういう瞬間が全部キラキラしているということで、3部作の最後を着地させられたかなと思います。
——なるほど。
佐藤:あと歌割りもすごいんですよね。ラスサビの部分を全員で歌っていて、「こんなに力強いのか。これマジで私立恵比寿中学の曲だわ」って思います。歌詞を書いたところから、どんどんみなさんのものになっていってる感じがしましたね。この曲ライヴでやったら絶対盛り上がるけど、ちょっと泣いちゃうなと思うんですよ。今までの歴史を見てる人は特にエモくなるだろうなって思える曲になりました。
真山:3部作を通して、世界観が1人から2人、最後全体に広がっていくのが、グループで歌っていてよかったなと思います。でもこの曲はただ明るいだけじゃなくて、「誰かが言うYou are "stupid" だから何それで?別にいいじゃん」みたいな反骨精神もあるんですよ。そういう私たちらしさをわかってくれてるんだなと思って、すごく嬉しかったです。個人的な解釈なんですけど、「私の電池永遠じゃないよ だからこそ輝けるの」ってアイドルのテーマだなと思うんですよ。「永遠に中学生」と言いながら、私自身どこかで「永遠なんてないよな」と思いながら活動しているんです。だからこそ私は命を燃やしていてアイドルしているので、すごく共感できました。
佐藤:嬉しい…。この歌詞は絶対に入れたいと思っていました。プラネタリウムという装置と私立恵比寿中学というグループを重ねて書いたんです。最初は「電池」の部分は「命」と書いていたんですけど、ちょっと直接的すぎたので、電池に変えたらしっくりきました。この部分はみなさんが歌うからこそエモくなるんじゃないかなと思います。自分としてもこだわりました。


——小林さんはどうですか?
小林:この曲を聴いて、シール集めとか、プロフ帳交換していた時代を思い出しました。
佐藤:懐かしー! え、それわかる世代ですか?
小林:バリバリやってました! そのときは「うちらズッ友!」みたいなマインドでしたね。そのマインドって大人になればなるほど忘れていくかもしれないんですけど、私たちはずっとキャピキャピしているんですよ。メンバーの間でこんなに世代が離れていて、好むものも環境も違うのに、なぜか私たちは混じり合うんですよ。こうやってひとつにまとまってワイワイする曲で3部作を終えられるのが嬉しいですね。でも「青春のページを」からの歌詞が、キラキラしているけど同時に切なさも感じたんです。可愛いだけじゃないのが、まさに私立恵比寿中学っぽいなと思いました。
佐藤:最後の「青春のページを」以降の部分は、前段と同じ歌詞を繰り返してもいいかなと思っていたんですけど、やっぱり少し展開したいなと思って。「私たちだけのHeaven」という歌詞があるんですが、いつか「Heaven」の外に出て歩み始めるじゃないですか。普通の人でも、卒業したり社会人になったりしますし。でも、仲間と一緒に過ごした時間はなくならない。そしてまた夢を探したり描いたりしながら生きていく。この曲は「私たちずっと Dreamer」という歌詞で終わるんですけど、そうやって前向きになれるような曲にしたいなと思って書きました。
真山:もう本当にありがとうございます!!
——せっかくの機会なので、お互いに質問したいことはありますか?
佐藤:“TWINKLE WINK”の歌割りを「下手くそなWinkそれすらもCharming」の部分を(小林) 歌穂ちゃんが歌うのが意外だったんですよ。でもたしかに、意外な人が照れ混じりにする方が可愛いと思ったんですね。あのパートはどういう感じでレコーディングしたんですか?
小林:ガチ照れです…。ラップパートを今まで担当したことなかったんですよ。そもそも上手くないので10年間で全く選ばれたことなかった上に、可愛くラップしないといけなかったので、キャラと違いすぎて照れましたね。
佐藤:めっちゃ可愛かったです。ファンの人にも照れている様子を聴いてほしいですね。
小林:私ウインクがリアルにできないんですよ(笑)。MV撮影でも本当ならウインクしたかったんですけど、白目になっちゃうからやりませんでした。
佐藤:本当にできないんだ(笑)。可愛い!

