愛で返そうと思えるのがARCANA PROJECT
——メンバーさんと一緒にご飯にいったのは、いつくらいの話ですか?
草野:去年、2023年の夏くらいですかね。今はレギュラーラジオでARCANAちゃんと関わらせていただいているんですが、最近は私がアキストゼネコというアイドルグループを作って、そっちに専念するためにARCANAの楽曲のプロデュースをあまりしていなくて。なので、「ちょっとたまにはご飯でも」ということでご一緒したんです。
桜野:華余子さんと一緒にいさせてもらったことで、いろんな繋がりもできたので、すごく感謝してます。
草野:この後もし一生呼ばれなかったとしてもARCANAとの縁はあるし、定期的にメンバーの相談は乗るつもりですよ。今は楽曲から離れているタイミングだからこそ、客観的に見られているかもしれないですね。
桜野:「そんな見てくださる時間、いつあるの?」ってくらいです。ありがたいですね。
——ARCANAのメンバーの声質については、どう捉えていますか?
草野:声が1つにまとまったときのバランスはすごくいいグループだなと思います。ARCANAの場合は、誰か1人がキーになる声をもっているというわけではなくて、5人で一気に歌ったらめっちゃ良いんですよ。アンサンブルとしての完成度が高いです。それもまたクラシックに近いのかなと。ハナちゃんはパワーがあるんですけど、どうしてもパワーに全振りしちゃうのでどうしたら笑顔で優しく歌えるか課題にしています。それでいうと、詩音ちゃんはロー感があってエッジの効いていない優しい声でなんですけど、声を張るのが苦手なので…。
相田:はい!(大声)。
草野:待って、突然大きな声出したよ (笑)。
一同:(笑)
草野:なので、内面を引き出せるようにディレクションしています。(天野)ひかるちゃんはこのグループがキャリアの最初なので無色透明の素晴らしい素材なんですけど、何にでも影響を受けちゃうんですよ。何にでもなれるし何でもないというところの透明感という個性を引き出したいので、「一旦全部忘れろ」というところからレコーディングを始めています。あおにゃん(空野青空)は、でんぱ組.incとも兼任できるくらい(2024年に1月にでんぱ組.incは卒業)、キャッチーな歌い方ですし、アイドルになるために生まれてきた声と顔だと思いますね。
桜野:うわー! 喜びそう!
草野:よかった! でもこの間ラジオの収録の後あおにゃんと喋っていたら、ちゃんとオタク然としているメンバーが1人いるのは、元気な曲でキーになるのでいいことだなと思ったんですよね。しかも、そういったアイドルっぽい歌い方を抜くこともできる器用さもあるというか、頭がいいと思いますね。なので、彼女に対してはめちゃくちゃロジカルにコンセプトを伝えています。最後に、うーちゃんの場合は、歌が好きすぎて煮詰めて煮詰めてドロドロになった状態でレコーディングにくるんですよ。まるで昔の自分を見ているみたいです。私も感情的に歌ってしまうタイプなので、強弱の付け方をしっかり伝えています。
桜野:本当にありがとうございます。

——お話を訊いていると、本当にひとりひとりのメンバーを、丁寧にかつ適切に見ているんだなと感じました。
草野:そうなんですよ!これを100人くらいにやっているので死にかけています(笑)。みんなが愛情もって来てくれるから、愛で返そうと思えるのがARCANA PROJECTですね。
——そして今回リリースされた、セルフカバーアルバム『産地直送vol.1』には、先ほどお話されていた “たゆたえ、七色” が収録されています。草野さんはこの曲をどうのように表現しようと思ったんですか?
草野:ARCANA PROJECTの“たゆたえ、七色”がファンの間に浸透している状態で、私がセルフカバーするならどうしようか考えたときに、クラシックをやっていたときに立ち返ろうと思ったんですね。もちろん曲に合った歌唱をしているんですけど、しっかり声を出すという歌い方で原曲との差別化を図りましたね。
——なるほど。
桜野:“たゆたえ、七色”のレコーディングをするときは、華余子さんの仮歌を聞いた状態で挑むので、仮歌での華余子さんが印象に残っているんです。でも、『産地直送』のヴァージョンでは仮歌とも全然違って。あれはARCANAへの仮歌として歌っていたんだなと思いました。
草野:そうそう。みんなに送った仮歌は喉を閉めて歌っているんだよね。産地直送ヴァージョンは野太い感じというか、「大海原!」って感じで歌いました。
桜野:もう壮大な海を感じましたね。
草野:太平洋ってファンの人に言われました(笑)。
桜野:うちらがイルカとかペンギンだったら、華余子さんはクジラかな(笑)。
草野:意図はしてたけど、そんなデカい!?
——たしかに力強い歌唱でした。相田さんはどうですか?
相田:サビでの発声が私たち5人よりもめっちゃ力強くて。「これが華余子さんか…」と思いました。
草野:ふふふ。でも「たゆた」ってないことに、自分では悩んだよ。
桜野:華余子さんのヴァージョンはアレンジが違うじゃないですか。私たちはいつも通りでこれからも歌うんですけど、華余子さんへのリスペクトがみんなあるから、華余子さんヴァージョンを聴きすぎてしまって、このまま発声してしまったら、すごく違和感が出てしまうなと思うくらい (笑)。「これは聴きすぎてはいけない! 生産者の顔が見えすぎしまう! 」って、私とハナちゃんだけ気づいています(笑)。
——なるほど。
草野:逆に私も、今回の『産地直送vol.1』は全曲、レコーディングしているときに、楽曲提供をしたアーティストさんの顔が浮かびましたね。
桜野:えっー!
——目がハートになっていますよ。
桜野:嬉しい!
草野:パート分けも浮かぶし、メンバーが歌った原曲から逆輸入されて影響を受けたものもありますね。特に影響を受けたのは落ちサビのうーちゃんの歌い方かな。ポロポロ歌おうかなと思ったんですけど、滑らかに一本で歌おうと心掛けました。
桜野:それは聴いて思いました! なんでこういう歌い方なんだろうって。
草野:今回アルバムを作ってみて、それぞれのアーティストさんの「これがあったから売れたんだ」という部分はさすがに抜き取れませんでしたね。特に西川貴教さんはそうだし、A.B.C-Zさんの、男性が高いところを歌うときの切なさの表現は難しかったです。女性ヴォーカルだとそこまで高くないので、適正レンジの中で声を締めて歌ったりしましたね。なので、アーティストの皆さんの歌唱があったからこういうアルバムになったんだと思います。
