“ignition”はありぃが主人公
──“ignition”の歌詞は、草野さんとありぃさんの共作なんですよね。
ありぃ:そうですね。鮮明には覚えていないですけど、“ignition”は初めて一緒に歌詞を書かせていただいた曲だったんです。それまでも作詞が好きだったし今も好きなんですけど、その当時は作詞に対するロジックが自分の中になくて。精神性一本だけで書いていたんです。どうすれば伝わるかというロジックを華余子さんに教えていただいて、それが自分にとって人生単位で、音楽について深く考えるきっかけになったんですよ。なので“ignition”はターニング・ポイントでした。そこから作詞がもっと楽しくなりました。
草野:やった! 当時住んでいた家の近くのロイヤルホストにみんなで集まって、6時間くらい話し合いましたね。ありぃくんは、割と感情的に書き切ってしまう人だったので、どうして最後アクセルを踏むような歌詞にしようと思ったのか疑問に思ったんです。それで、uijinという車を運転しているときのハンドルをどうしようと思っているのか聞いたら、Dメロの「ハンドル手放す時まで keep light」という歌詞みたいに、「アクセルを踏んだままハンドルを手放したいです」って答えたんですよ。「この人やばい、死ぬ気だ!」と思いました。
──なるほど!
草野:でもそれはuijinの精神性なのでちゃんと歌詞にしようかなと。「ファンの皆様も乗っているuijinという車をありぃはどうしたいの?」と聞いたら、みんなと心中する気っぽかったです。
やよい:やだぁ。
草野:やよいは、ちゃんとパラシュートで飛び降りるタイプだよね(笑)。
ありぃ:でも“ignition”まで、そういうふうに表現するのを避けていたんですよね。未来について全然信じていないということは一貫して変わらなかったんですけど、そういうことを言わないようにしていました。でも終焉に向かっているので、華余子さんの力をお借りしつつ書かせてもらいましたね。
やよい:“ignition”をいただいたとき、自分の中で一杯一杯だったからあまり記憶がないんです。終わりの瞬間まで、とりあえず今日一日頑張るしかないみたいな状態でした。
草野:まさに「信じられるのは“今”だけ」だね。
やよい:そうなんです。なので歌詞もすごくリンクしていたのかなと。華余子さんには、次に“blooming days”と“インパーフェクト・ブルー”の2曲を書いていただいたんですけど、私は“インパーフェクト・ブルー”が、華余子さんが書いてくださった楽曲の中で1番好きですね。仮歌を華余子さんが送ってくださるんですけど、送っていただいた音源を今も持っています。私は、華余子さんのデモ音源を集めるのが趣味なので(笑)。
──それはもちろん、世間には出回っていないものですよね?
やよい:出回っていないです(笑)。
草野:私自身のアーティスト活動のデモ音源でも、いいのがあったら聴きたいって言ってくれるので(笑)。
やよい:そうなんですよ(笑)。かなり貴重な音源なので厳重に保管してます(笑)。

草野:“ignition”はありぃが主人公で、“blooming days”は4人とファンのみんなを考えて書いたんですけど、“インパーフェクト・ブルー”はメンバーカラーが青なのもありますけど、割とやよいを意識して書きました。当時はありぃに歌詞を丸々書いてもらおうと思ったんです。でもスケジュールも大変だし、精神的にもつらそうだったから言葉が…。
ありぃ:当時は、終わりのことを考えていたから、前向きな言葉が1つも思い浮かばなくて。作詞しながら、“ignition”のときよりも「死」を感じる言葉が出てきてしまっていて…。これ僕が書いたらやばいんじゃないかなと思いましたね。状況に引っ張られすぎていました。
やよい:華余子さんが3曲書いてくださった時期が、ちょうど終わりに近づいているタイミングだったからね。
草野:メンバーは解散することを知っていたけど、発表前だからファンには隠さないといけないし、大変だったよね。
ありぃ:いろんな感情がごちゃごちゃになっていて、1番すっきりしない時期でした。華余子さんに長文で色々送っちゃっていましたよね。
草野:うん。書きたいこともだし、書けないことに対してもありぃは真面目だから、「こんなに素晴らしい曲をいただいたのに書けなくてすみません」ってメールがきました。でも書けないならしょうがないから、ありぃから少し離れて、主人公もやよいにして1つの新しい灯火に向かって歩き続けているような感じで書きましたね。
ありぃ:結果的に良かったです。“インパーフェクト・ブルー”がああいう曲になって救われました。
草野:少し出口が見えるようにしないとやばかったもん。
ありぃ:僕だったら、絶対できなかったですね。
草野:だからこそ、復活してからのありぃの歌詞を読むと嬉しいですね。
ありぃ:どうにかこうにか強がれるようになってきました。
