自分のこともこの曲を聴いている人のことも肯定してあげたい
──『火狩りの王』のオープニングテーマである“嘘つき”は、どのようにして楽曲を作り上げていったんですか?
プロットを読んだときに、自分の持っている人生の価値観と通じるものがありました。生きることの光と影を両方描いて、決して良いところだけ見せるわけではないという部分にすごく共感を覚えたんです。見せかけの光を見せるぐらいだったら、最初から残酷な現実を見せて欲しいという価値観がかなり一致してたので、それをそのまま歌詞に落とし込んでいきました。
──その価値観について詳しく聞かせてください。
どうしても、幼い頃って、「夢を見ることはいいことだ」「努力は必ず報われる」「友達が多い方がいいんだ」って空元気なポジティブを教えられるじゃないですか。でも、それを信じて大人になって社会に出ると、あんまり物事がうまくいかない現実を知って、心が折れちゃうこともあるわけで。それだったら最初から「社会は自由で楽しいけど厳しくもあるよ」って言われて育った方が良いのかなと思うんです。
──確かにそうですね。歌詞にはどのような想いを込めたんですか?
私は、もし闇の部分があっても、それを肯定してくれる人がいたらとても心強いと思っているんです。だから、この“嘘つき”は人を愛したり、褒めたり喜んだりするだけが生きることじゃなくて、逃げて負けて泣き叫んで、諦めてもわがままなことを言ったとしても、そういう情けない姿も含めて、生きてるってことだよ、あなたは大丈夫だよって、自分のこともこの曲を聴いている人のことも肯定してあげたいという想いを込めて作りました。

──“嘘つき”は、石崎光さんが作詞・作曲・編曲を担当されていますが(作詞は家入と共作)、どのように楽曲を作り上げたんですか?
この曲は、もともとメロディーの種があったんです。今回、主題歌のお話を頂いた時に、そのメロディーに『火狩りの王』という作品から感じたことを歌詞として書いたら絶対ハマるだろうなと思って、それを元に石崎さんと作り上げていきました。それから楽曲をブラッシュアップしていったんですけど、アレンジの段階で弦楽器の音が入っていて、それが不協和音で不穏な空気を生み出しているんです。それがすごく自分のなかでも気に入っています。改めて、石崎さんとご一緒できて良かったと思いました。それこそ、石崎さんは嘘のない方なので、良いものは良い、そうじゃないものはそうじゃないってはっきり伝えてくださるんです。そういう部分からも、こういうストレートな楽曲ができたのかなと思いますね。
──この曲を歌う上で意識したことはありますか?
ちゃんと歌声と心が一致しているのか、です。
