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INTERVIEW : 岩崎優也

SUNNY CAR WASH解散から7か月。シンガー・ソング・ライター、岩崎優也が動き出した。 2022年7月13日0時に新曲“Totem”をストリーミング配信し、同日21時にミュージック・ビデオを公開。27日にはファーストEP『それでいい』をリリース、真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)と共作した表題曲のMVを公開した。8月9日には恵比寿リキッドルームで初のワンマン・ライヴ「ONE」が予定されている。今年2月、SUNNY CAR WASHのファーストにしてラスト・アルバム『ハネダ! ハネダ! ハネダ!』のリリース時に岩崎にリモート・インタヴューを行ったが、今回は念願叶っての初対面。みずみずしい歌心が詰まった『それでいい』をめぐる話題を中心に、少しばかりの余談も交えてお送りする。
インタヴュー : 高岡洋詞
写真 : 山川哲矢
無意識のうちに、歌にフォーカスできるような曲を作ってる
──前回お話をうかがってから5か月ほど経ちましたが、そのときすでに制作ははじまっていたんですか?
岩崎優也(以下、岩崎):たぶん今年の1月ぐらいからはじまったと思います。SUNNY CAR WASHが解散してすぐに動き出しました。
──毎日、曲を作っていると話していたのをよく覚えています。
岩崎:EPに入れた5曲を含めて15曲ぐらいできてます。SUNNY CAR WASHのときは5年間で18曲しか作らなかったんですけど(笑)、うんとスピードが上がりました。でもまったく無理はしてなくて、インスピレーション重視で一曲一曲を大事に作れてますね。むしろ前よりもマイペースなぐらいなんですけど、自然にスピードが上がってるというか。
──すばらしい。なにかモードの変化があったんですか?
岩崎:なんですかね? あんまり自分ではわかんないんですけど、やっぱりバンド・メンバーがいなくて、ほぼ完全にひとりなのが大きいと思います。メンバーは自分にとってすごく大事な存在だったけど、一方で甘えてたところもあると思うんです。ソロになってから、自分のイメージをしっかり伝えるために、やるべきことってあるんだなって実感してます。
──SUNNY CAR WASHの曲は、クレジットは自分ひとりだけど、メンバーと一緒に作っているつもりだって言っていましたものね。
岩崎:曲の幅がけっこう広がったと思うんです。いままでは「SUNNY CAR WASHっぽさ」っていうのがどうしても無意識の前提としてあって、「いい曲だけどスリー・ピースじゃできないな」ってボツにしたこともあったんですけど、そういうのをまったく抜きにして作るんで、けっこうおもしろいことになってます。
──僕がこの5曲を聴いて感じたのもまさにそこです。楽曲そのものと、あと岩崎さんのヴォーカルにフォーカスが当たった作りだなと思いました。
岩崎:前よりも自分の歌を聴いてもらいたいなっていうのはあると思います。バンドでも「もっと歌ぢからをつけたい」みたいなことはずーっと思いながらやってたんですけど、そろそろちゃんと考えなきゃって。なので、これもたぶん無意識のうちに、歌にフォーカスできるような曲を作ってるんでしょうね。
──この5曲は基本的にバンドサウンドですけど、もっと全然違うタイプの曲もやろうと思えばできますよね。完全打ち込みとかラップとか。
岩崎:今回はロック・ミュージシャンの大先輩や同年代と一緒にやりましたけど、違うジャンルの方ともコラボしていきたいですね。ヒップホップのトラック・メーカーとか。
──ロック・ミュージシャンの大先輩といえば、やっぱり真島昌利さんとの共作“それでいい”。これは岩崎さんにとっても一大事件ですよね。
岩崎:はい。ブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズと、真島さんの曲は子どものころから聴いててめちゃくちゃ影響を受けたので、夢みたいな気分です。ツテとかないので、普通に正面からオファーしたんですけど、すごく快く引き受けてくださって。「ラララ~」で歌ったデモを聴いて、手書きの歌詞を送ってくださいました。
──手書き! 家宝になりそうですね。
岩崎:もう最初はなにが起きてるのかわかんないみたいな感じでした。歌詞をもらって歌って、それでもう満足しちゃいそうでしたけど(笑)、絶対にいろんな人に届けたいっていうのがあるので、伝わるような歌い方を考えたりとか。
──真島さんはなにか言ってくれましたか?
岩崎:SUNNY CAR WASHのころの曲を全部聴いてくださったそうです。「本当にいい歌詞書くね」って。
──おー! すごく自信になったんじゃないですか?
岩崎:はい。すごくびっくりしましたし、うれしかったですし、同時にもっと頑張ろうって思いました。ロック・ミュージシャンの大先輩とお話ししたのがはじめてだから緊張もしたし、「同じ言葉しゃべれるかな」みたいな不安もあったんですけど(笑)、いざお会いしたらすごく優しくて気さくな方で。やっぱり人と人なんだなって思いました。

──どうしてもファン目線みたいになっちゃうけど、仕事だから当然対等であるべきですよね。必要なら「ここ変えてもらっていいですか?」みたいなことも言わないと。
岩崎:実際、「あんまりだったら言ってね」って言ってくださってたんですよ。本当にすてきな歌詞だったし、心からこれを歌いたいって思ったんで、大切に歌っていきたいと思います。
──「失敗したら わかったよ/失敗しなけりゃ わからない事が」と冒頭からいきなり耳をつかまれて、さすがだと感服しました。まさに前回のインタヴューで言っていた「シンプルだけど、聴いてて感じるものがある曲」ですね。
岩崎:本当にすごいですよね。最初に歌ったときとレコーディングのときとでも、自分の経験と結びついて意味が変わってきてるんです。真島さんがどういう意味合いで書いたのかはわからないというか、詳しく聞かないようにしてるんですけど、「100回生きても 足りないけれど」のところとか...受け入れることが人生では大切なんだろうな、って思いました。
──今後、岩崎さんがいろんな経験を積んでいくなかで、また歌の意味合いも響きもどんどん変わっていきそうな気がします。
岩崎:本当にそう思います。一生歌っていきたいですし、だからこそ聴く人の自由に任せたいと思って、あんまり感情を込めないように、押しつけないように歌ってみました。どうしても込めそうになっちゃうんですけど、それは違うと思って。
──そういう曲がソロ活動1枚目の1曲目なのはいいですね。
岩崎:はい。曲順もこれにしてよかったと思ってます。
