してやったり顔で見てました
──草野さんとの「密会」では、どういう話をされたんですか?
本当にすごく長い時間いろんな話をしました。例えば、今回「命をどう使っていくのか」というものが、『ディープインサニティ ザ・ロストチャイルド』というアニメ自体のテーマのひとつにもなってるかなと思うんです。最近すごく思うのは、「24歳っていちばんいいよねって言われることがすごく怖いんです」っていう話をしたんですよ。私、年齢を重ねることが、以前よりリアルに感じるようになってきたんですよね。炎で例えると、いまはすごく煌々と逞しく燃えていられるけど、そのうちしなやかな炎になっていったり、とか燃え方が変わってくると思うんですね。だけど、「いまの輝きかたはいまの自分にしかできないから、それを見逃さないでほしいって気持ちが最近すごくあるんです」っていう話を華余子さんとしまして。
──鈴木さん自身の変化が反映されていると。
前は「みんなのために歌いたい」と思っていたのが、最近は「私を見てくれ!」みたいな気持ちがすごく芽生えはじめたんですよ。それは休止を経て、そう思えるようになったのかもしれないし、社会が目まぐるしく変わっていくなかでそう思ったからかもしれない。いろんなことが複合してると思うんですけど、「いま大きく燃えられるこの一瞬を見逃さないでほしいっていう気持ちを込めたシングルにしたいです」っていう話をしたんです。
──いろんなものの見え方も変わってきた部分もありますか?
自分のこと以外にも目がいくようになりましたし、逆に自分のことを考えるようになったり。大人になったんですかねー(笑)。歳を重ねることが嫌とかそういうわけではなくて、ただ「全部のことが当たり前じゃない」って思ったときに、「自分の歌っている証を刻まなきゃ!」って焦るような気持ちがあって、それがシングルに出たんじゃないかなと思いますね。だから、3曲とも共通して“命”とか、“なりたい自分“とかそういうものが色濃く出たのは、「いま多分そういう時期なんだな」っていうふうに思います。
──今回、メロディがすごく複雑ですよね。歌うのが難しいところはありましたか?
いつもは歌ったあとは、体力を持っていかれるんですけど、今回は脳みそも使うから頭も痛くて(笑)。とにかく計算して緻密に歌ったので、全体としてすごく大変でした。今回、低音がずっと続いて、地を這うようなメロディなので、あまりに無表情すぎると退屈に聴こえてしまうかなというふうに思ったので、どうやって表情をつけようかなという部分で迷いましたね。
──こういうメロディのなかでも無機質な感じにはなっていないのが、さすがだなと思います。
そういう部分を大袈裟にやらないのが大変でした。あまり無機質になりすぎず、あまり押し付ける感じにはしたくなかったので、そのバランスがすごく大変でしたね。
──歌詞で好きなポイントはありますか?
2サビとか好きですね。ここだけ他者の存在が出てくる気がしていて。いろんな人の優しさに触れてきたからこそ、自分も一生懸命生きなければいけないと思ったので、そういうことを仄めかしたくて。表情的にも柔らかくなる感じで好きです。あとは、最後の「この命を~wow~希望の灯火を~」って歌っていているんですけど、これ元々「命の灯火を~」だったのを間違ってレコーディングで歌ったやつなんです。ファースト・テイクで目を瞑って歌ったときに気持ちよくなっちゃって。でも、それが「いいね! こっちでいこうか!」ってなったんです。そのエピソードも含めて好きですね。
──すでにアニメも放送されましたが、神曲だって反応も多かったですよね。そういう反応はみてますか?
めっちゃ見てました(笑)。やっぱり気になるので見ちゃうんですよね。歌い終わっただけじゃなくて、放送されてみんなに届いてこそのものだと思うので。ようやくほっとできました。
──「このみんが歌っているって気づかなかった!」みたいなコメントも結構見たんですよね。
それがいちばん嬉しかったですね! やっぱり「鈴木このみといえばこういう歌声だよね」ってある程度把握してもらっていると思うんですよね。でも、今回は「そろそろ良い意味で期待を裏切りたいな」って見たいな気持ちもあったりして。してやったり顔で見てました(笑)。