“Lift Up”は振り切った歌い方が必要だった
──10月6日には、初のフル・アルバム『心眼』がリリースされます。タイトルの『心眼』は、心の眼によって眼に見えない真実を確かめる力を意味する言葉ですよね。このタイトルには、ヴァーチャルとリアルの架け橋のようなイメージがあるのかなという感じがしました。
春猿火 : それもあると思います。プロデューサーを務めていただいていた耐諷さんが、「春猿火は、眼が特徴的だ」とおっしゃっていて。瞳の色が黄色と赤なんですけど、そういった眼の部分に個性を感じていたり、ということもありつつ『心眼』というタイトルに決まりました。
──眼という部分は春猿火さん本人のキーワードにもなっているという。ご自身の眼については、どう思っていますか?
春猿火 : かっこいい!って思いますね(笑)。でも、心の眼って私自身の楽曲にもすごく現れているなというのは感じていますね。『心眼』というタイトルもすごく好きです。
──ご自身にとって、今作はどういう作品に仕上がりましたか?
春猿火 : デビュー当初からこれまでの楽曲が詰まっているんですけど、春猿火のこれまでの成長であったりとか、全曲聴いてくださる方の背中を押してくれるような、寄り添えるような楽曲が揃った作品になりました。アルバムを聴いてもらった方にとっての、お守りみたいな感じに仕上がったと思います。音楽っていろんなタイミングで聴けるじゃないですか。曲を聴いて原動力にしたりとか、テンションあげたりとか、そういうときのお守りになったら嬉しいです。
──楽曲の制作はどのようにして進むんですか?
春猿火 : 基本的には、運営チームでテーマを決めて、たかやんさんが曲を書いてという流れですね。たかやんさんから仮歌とデモ音源が届いて、それを元に歌わせていただいている感じです。でも、“台風の眼”という楽曲のときには、たかやんさん本人からインタヴューをしてもらいまして、私が世のなかに思っていることだったり、みなさんに思っていることだったりを、赤裸々に話させていただいて、それをもとに楽曲をつくっていきました。
──インタヴューでの言葉を散りばめて作られたんですね。“台風の眼”は、すごく歌詞がポジティヴですよね。
春猿火 : そうですね。私自身を汲み取ってくださってできたんですけど、パーソナルな部分も出しつつ、聴いていただいたみなさんに寄り添ったり、共感できるような形にしてくださった曲です。私自身暗い人生を生きてきたんですけど、最終的には誰かの背中を押してくれる楽曲になりましたね。
──今作には、Misumiさん、大沼パセリさん、安宅秀紀さん、橘井健一さんなど、様々な作家の方が編曲で参加されていて、ジャンルもバラバラですよね。例えば、“逆転”はミクスチャー・ロック調の曲ですが、3曲目の“Lift Up”ではゴリゴリのトラップのビートに乗ってラップされています。こういういろんなタイプの曲を歌うことについては、どう思っていますか?
春猿火 : 実際、結構楽しいですね。デモ音源で、どういう曲になっているのかを知るんですけど、「今回はこんな感じなんだ!」とか、「めちゃくちゃキラキラしてるな!」とか、毎回曲調が変わっていくのがおもしろいです。毎回編曲に合わせた歌い方もしていて、そういうのも研究しています。
──実際、送られてきて驚いた楽曲はありますか?
春猿火 : もう毎回驚いてますね(笑)。なんでこんなに共感できる歌詞が書けるんだろうとか。テーマはそれぞれ違うのに、どの曲も共通して、共感できる部分があったり、誰に対しても寄り添える曲にしてくださるのに驚いています。ボキャブラリーが豊富ですし、言葉の持つ意味をたかやんさんのリリックからは感じるところが多くて、毎回驚かされています。
──歌うにあたって、難しかった曲はありますか?
春猿火 : “オオゴト”という曲は、最初は私のスキルで本当にできるかな? と思いました。最初から最後まで間奏が存在しなくて、ひたすら歌ってラップしてみたいな感じだし、最後に高速ラップで畳み掛けるみたいなところがあって、本当に“オオゴト”って感じでしたね(笑)。ライヴの時は大変でした。スタッフさんに相談して、「これ、どこで息継ぎするの?」って(笑)。
──なるほど(笑)。
春猿火 : あとは、“Lift Up”は難しかったですね。結構、振り切った歌い方が必要だったんですよね。たかやんさんの方からリクエストをもらったり、これまで体験してこなかった歌い方を自分でもしたので、やりかたがわからなくてちょっと躊躇ってしまって。もっと狂った感じで振り切った感じでやってみていいよっておっしゃっていただいて、思い切りやらせていただきました。