昔の映画は別のジャンルみたいになってきちゃうのかな
志磨:今年40歳になってどんなことを思いますか?
松田:なんだろう。いまは赤ちゃんいるからね。家の中もバタバタ忙しくて「知らねえよ」とか言ってられない感じで(笑)。40だからどうってことより、その時、その時でやらなきゃいけないことがあるって感じですかね。まあ、歳をとればちょっと運動しないと、とか。変化が生じることに自然にアクションを起こせば良いんだと思うんだけど。ちゃんと受け入れて、なにもしないよりはやった方が良い。くらいな感じで。そういう変化って志磨くんにもありますか?
志磨:これが40歳になったからなのか、コロナのせいなのかはわかんないんだけど、例えば以前ならライヴで客席に飛び込んだりしてたけど、それが禁止されたときに、ちゃんとステージの上で完結させなきゃいけなくなって。もしコロナがなかったらおじいちゃんになってもハチャメチャなままで、いまみたいにちゃんと歌ったりしないまま歳をとってたかもしれない。それとも、やっぱりどこかで変化を受け入れてちゃんと歌うようになってたんだろうか。30代のおしまいの3~4年をコロナにマスキングされちゃったから、わかんないんですよ。
松田:ほんと、ライヴ会場は異様な雰囲気だったよね。観客みんなマスクして、シーンとしてて、あれはやっぱりコロナがないと起きない事態だった。いま思えばおもしろい光景だったけど、妙な感じで。この現場でどれだけやれんのかって……。
志磨:うん。試されたね。
松田:面食らうよね。静かすぎて。それまではお客さんに音楽ぶつけて跳ね返ってきたパッションを受けてエネルギーにして、「どこまでいけんのか」みたいなのがライヴのイメージだったけど。この環境をどうプラスに変えていくかは、形は違えどみんなの課題だったんだろうなって。俺はステージに立つって言ってもお芝居で。舞台はお芝居の途中にお客さんに「うおー」とか叫ばれてもやりづらいから(笑)。
志磨:それはそうだね(笑)。
松田:確かに、お酒を前ほどコンスタントに朝まで飲むみたいなことは、コロナがあってもなくても、体力的な理由でフェードアウトしていったんじゃないかなって気もするしね。
志磨:きっとこれからもいろんなことが変わっていくだろうね。

──楽しいお話をありがとうございました。最後に松田さん、なにかお仕事の告知などありましたら。
松田:『ケンシロウによろしく』っていう、復讐のために『北斗の拳』を読んで暗殺拳を学んでいたら、いつのまにか最強の凄腕マッサージ師になってしまうっていう男をやりました(笑)。9月22日からDMM TVで独占配信されます。1話15分ぐらいの短いドラマだからサラッとみてもらえるんじゃないかな。最近は短いドラマもよく作られてきてるよね。
志磨:うんうん、そうだね。
松田:長いとスキップ出来ちゃうからなー、結末早く知りたいつって。みんなショートに慣れちゃってて。
志磨:最後まで観て結局なにも起こらない映画とか、もう作りにくいんだろうね。
松田:志磨くんのミュージック・ビデオ(「最低なともだち」)も長回しでずっとやってたよね? あれも、ドラマになったら「このふたり、どうなるんだよ、早く結末教えろよ」みたいになっちゃうのか(笑)。
志磨:好きなんだけどな~、長回しでジーッて撮るやつ。
松田:ずっと観ていたくなる長回しもあるからね。工夫次第だよね。飽きさせないように要所要所に飽きないポイントを作ったり。
志磨:庵野秀明さんが「難しい作品を作っても喜ばれなくなった」みたいなことを言ってて、それがすごくショックだった。誰よりも難解なアニメを作った人の言葉だから、よけいに重くて。難しいからこそファンは必死に読み解こうとして、だからこそこれだけ長く愛される作品になったのに。
松田:昔の映画とか、別のジャンルみたいになってきちゃうのかな。人にもよるだろうけど。
志磨:うん。僕らがそうだったみたいに変わったものを好きになったり、昔の映画をいっぱい観ている少年少女もいると思う。
松田:でもやっぱり、全体的に展開のスピードは速くなった気はするよね。
──音楽もそうですもんね。展開てんこ盛りで、ひとつの曲のなかでどんどん変わっていく。
松田:確かに。いまのポップな曲って、1曲のなかに3曲分ぐらいテンポの違う曲が入ってたりするじゃないですか。
志磨:そのうえに短くなりましたね、曲の長さも。昔は4分台が普通だったけど、いまはもうみんな3分台かも。
松田:適当に流すのは短くても聴けたりするけど、ライヴだと長くやってほしい時あるなー。このまま朝までみたいな感じで。いざなわれる感じが気持ちよかったりして。
志磨:そうだね。ずっと同じビートが続いてみんなが高揚していくっていう。ふだんはどんな音楽を聴きますか。
松田:今年フジロックに行ってきたよ、3日間。久々にお酒を解禁されたし、なんか、すごくお客さん増えてたなぁ。
志磨:誰のライヴがよかった?
松田:矢沢永吉さんはやっぱすごかった。74歳とは思えないキレだった。あと、坂本(慎太郎)さんもみたし。Vaundyとか。あとはじめて聴いたいいバンドがふたつぐらいあったんだけど、なんだっけ、名前忘れちゃった。
志磨:誰だろう。気になりますね。
松田:あとGEZANだ。マヒト(ゥ・ザ・ピーポー)はけっこうライヴに誘ってくれるんだよね。フジロックも最高だった。
──これからドレスコーズのライヴにもぜひ。
松田:おー!行きたい!
志磨:もちろん!いつでもご招待します!

編集:梶野有希
前作『戀愛大全』と対になるアルバム『式日散花』
LIVE INFORMATION
【ドレスコーズ ワンマンライヴ】
〈the dresscodes TOUR 2023〉
日付:10月9日(月・祝)
場所:宮城・SENDAI CLUB JUNK BOX
日付;10月13日(金)
場所:福岡・BEAT STATION
日付:10月14日(土)
場所:岡山・YEBISU YA PRO
日付;10月21日(土)
場所: 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
日付;10月22日(日)
場所:大阪・心斎橋 BIG CAT
日付;10月28日(土)
場所:北海道・札幌 club garden
日付;10月31日(火)
場所:東京・Zepp DiverCity
【ドレスコーズ『式日散花』リリースイベント】
日時:9月12日(火) 19:00
場所:HMV&BOOKS SHIBUYA
日時:9月13日(水)19:00
場所:タワーレコード 新宿店
日時:9月16日(土)15:00
場所:タワーレコード 名古屋パルコ店
日時:9月17日(日) 15:00
場所:TSUTAYA 戎橋店
日時:9月18日(月・祝) 15:00
場所:タワーレコード福岡 パルコ店
日時:9月23日(土) 16:00
場所:タワーレコード札幌 パルコ店
過去記事
過去音源
PROFILE : ドレスコーズ
1982年生まれ。音楽家、文筆家、俳優と多方面にて活動中。
2003年、日本のロックシーンを牽引することとなるバンド、毛皮のマリーズを結成し、2011年に日本武道館公演を以て解散。翌2012年、ドレスコーズを結成。2014年以降、ライヴやレコーディング毎にメンバーを入れ替える流動体的なバンドとして活動中。近年は菅田将暉、ももいろクローバーZ、上坂すみれ、PUFFY、KOHHといった著名アーティストへの楽曲提供も行っている。さらに音楽監督として『三文オペラ』 (2018 年ブレヒト原作・ KATT ほか 、 『人類史』 (2020 年 谷健一・ KAAT) 、 『海王星』 (2021 年 寺山修司原作・ PARCO 劇場ほか 上演。また、文筆活動のほか、俳優として映画『溺れるナイフ』、『ホットギミック』、 『ゾッキ』、Netflixシリーズ 『今際の国のアリス』シーズン2などに出演。映画 『 零落 』(2023年 浅野いにお原作・竹中直人監督)では初のサウンドトラックを担当。2023年9月13日には 9枚目のアルバム 『式日散花』を発売。10月からはアルバムツアーを開催する。
■公式ホームページ:https://dresscodes.jp/
■ドレスコーズ公式Twitter:https://twitter.com/thedressSTAFF
■志磨遼平公式Twitter:https://twitter.com/thedresscodes
PROFILE : 松田龍平
1983年東京都生まれ。99年映画『御法度』で俳優デビュー。同作で日本アカデミー賞、ブルーリボン賞をはじめとする新人賞を受賞。映画『舟を編む』(13年)では第37回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞他多くの賞を受賞。近作に映画『影裏』(20年)、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年)、『連続ドラマW 鵜頭川村事件』(22年)、『連続ドラマW 0.5の男』(23年)など。9月22日(金)よりDMM TVにて「ケンシロウによろしく」独占配信スタート。他、映画「次元を超えるTRANSCENDING DIMENSIONS」(24年公開予定)など多数の待機作を控える。
■公式Instagram:https://www.instagram.com/ryuheimatsuda/?hl=ja