あのころ、変わったものはひとりで楽しむしかなかった
志磨:仕事をはじめたのが早いと、価値観とかみんなと違ってくるだろうけど、これくらいの歳の人と話して「やっぱ同世代だな」って思うことはある?
松田:うーん、学生時代は同世代の友達と音楽やドラマに一緒に夢中になったみたいな記憶はあんまりないかも。邦画好きな友達も周りにいなかったから。単純にひとりで音楽とか映画とかに浸るのが好きだったという感じで。でも、志磨くんと話してると、同世代というか、通ってきた道が一緒だなって感じますね。あんまりこういう話をちゃんと話すことってないからね。
志磨:あー。でもそうだよね。
松田:中学生ぐらいのときの話だもんね。高校生とか20代になると、また様変わりしてくる。
志磨:だんだんとそれぞれの趣味も変わって、あんまり共通のものがなくなってきたりするよね。ギリギリ中学校ぐらいまでは、みんなが同じものを観て、同じ話題について話す雰囲気があったけど。
──90年代はまだまだテレビの影響力が強くて、コンテンツを共有している人が多かったという記憶はありますね。松田さんみたいに、同級生と少し違う生活をしていても、知っていることはなんとなく共通している。いまだったらたぶんなにもかぶらない感じになるかもしれませんね。
松田:そうかもしれない。いまはジャンル分けが細かいですもんね。
志磨:趣味が細分化されて、それぞれが好きなものを楽しむみたいな時代だから、ヒット作はあるとしても、日本中のみんなが聴いてる、みんなが観てるみたいなコンテンツは少なくなったのかもしれないですね。
松田:ただ、自分の友達とか近い人って、ある程度は向いてる方向が同じっていうか、いいよね、ぐらいは言い合える仲間だから、まったく同じではなくても、なんとなく感覚が近いものがあるし、そういう意味ではそんなに変わんないような気もするけど。それでも、娘に「音楽なにが好きなの?」って聞いたら「ボカロ」って言われて。聴いたらテンポがめちゃめちゃ速いし、ボーカロイドだし、流石にすぐいいねと言えなかったり(笑)。そう考えると世代間のギャップはやっぱり生じてるんだろうけど。やっぱり、時代の流行りもあるんだろうね。でも、本当にコアな趣味がある人にとってはいい時代だよね。変わった趣味は仲間を探すのが大変だったろうし、昔は。
志磨:そうだね。
松田:こんなことやってる人他にいないだろうなー、みたいなことでも、(いまは)ネットで検索すればゴマンといるから驚くよね(笑)。「こんなにいるんだ、これを好きなやつが!」って。
志磨:たしかに、あのころはひとりで楽しむしかなかったもんな、変わったものは。龍平くんは学校では変わった人だった?
松田:いやー、寝てましたね。意外とバレなくて怒られなかった。成績はひどかったけど。
志磨:映画『御法度』に出演したときは龍平くん、15歳?
松田:そう。中3から高1にかけて撮影してたから。
志磨:学校は忙しくてあんまり行けなかった?
松田:中3までは普通に学校生活してたよ。はじめて『anan』っていう雑誌に出るんだって話したら、ヤンキーの友達に「なんだよそれ、エロ本じゃねえのかよ。アンアンア~ンだろ」ってからかわれて(笑)。そういう感じの。
志磨:部活はやってましたか?
松田:サッカーやってましたね。中2までユースに入ってて。
志磨:えっ! そうなんだ。プロのサッカー選手になりたいな、の時期もあった?
松田:サッカーは好きだったし、なりたかったけど、プロを目指すとなると曖昧じゃないですか。どうやったらなれるのかもわかんないし。志磨くんはいつミュージシャンになろうと思ったの?
志磨:僕も15歳かな。それまでは聴くばっかりで、なろうとは思わなかったんだけど、ギターを少し覚えたらすぐに自分でも曲を作りはじめた。だからあんまりコピー・バンドとかはやったことがなくて、自分で曲を作るのが楽しいっていう。で、高校もすぐ辞めちゃって、それからはもうずっとバンドばっかりでしたね。
松田:バンドって、メンバーとの出会いが大事じゃない?
志磨:うん。ドレスコーズの前にやってたバンドは中学高校の同級生がメンバーだったのね。だから音楽の趣味が合うとかじゃなくて、ただずっと一緒にいた同級生っていう。だから音楽の話で揉めることもなくて、うまくいかないことがあってもケラケラ笑ってれば大丈夫だった。大人になってから新しいメンバーを探すと、やっぱり音楽の趣味が合う人と組むでしょ。そうなると音楽がうまくいかないだけで、もう取り返しがつかなくなっちゃう。
松田:そうだよねー。映画やドラマ制作だと現場だけでも大人数だし、作品ごとに一期一会だったりするけど、バンドだとずっと同じメンバーでひとつの作品を作るわけだから、違う大変さがあるんだろうなって。そうなるともう、ほんと運命の出会いでしかないのかなって。

──ドレスコーズの『式日散花』は松田さん、聴かれましたか?
松田:聴きました。
志磨:うれしい。ありがとうございます。
松田:いいよね、ドレスコーズ。かっこいいなと思った。志磨くんの歌はムードがあるから、映像作品とすごく合うよね。ファースト・インプレッションでしかないけど、「好きだな」と思うか「ちょっとわかんないな」と思うか。はい。好きです。
志磨:ありがとうございます。うれしい。僕もまだちゃんと言ったことなかったけど、龍平くんのファンですよ。すごく好きです。
松田:ありがとうございます。ミュージック・ビデオは3本とも同じ監督なんですか?
志磨:うん。山戸結希さんっていう映画監督です。
松田:そうだ。最初の2本(「少年セゾン」「最低なともだち」)は観ました、YouTubeで。
志磨:もうひとつ新しいの(「襲撃」)で、3部作っていう感じ。
松田:あの2本は完全に共通点あるよね。(志磨が)途中から出てくるし。
志磨:そうそう、僕が出てくると途端に不吉な感じになる(笑)。でね、なんと3本目の「襲撃」は最初から出てるんですよ。
松田:お、とうとう。
志磨:3本目にして。
松田:楽しみにしときます。それも若い子たちの青春群像みたいな感じ?
志磨:「最低なともだち」に出てくるふたりの男の子のその後みたいな感じかな。
松田:あの感じ、歯がゆいんだよな。性の目覚めが訪れて、そのモヤモヤがなんなのか、どうすればいいのかがわかんなくて、男同士でキャッキャしちゃうやつ。黒歴史を作りがちな……(笑)。
志磨:山戸さんとは面識ないですか? 『溺れるナイフ』とか撮った監督さん。
松田:ないなぁ。『溺れるナイフ』ってけっこう前だよね。誰が出てたっけ。
志磨:2016年かな。菅田(将暉)くんと小松(菜奈)さん。すばらしい監督なので、ご縁がもしあったら見てみたいな。山戸さんが撮る龍平くん。
松田:おー!ぜひぜひぜひ(笑)。