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INTERVIEW : さとうもか

さとうもかの新曲“魔法”は、7月18日から放送されているカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ『魔法のリノベ』のオープニング曲。ビタースウィートなラヴ・ソングで女性たちの共感を集めているアーティストだが、同曲はスウィートの割合が多め。「素直になる」ことの大切さを、弾むようなリズムに乗せてキュートに歌っている。もうひとつの話題が、2020年1月のリリース時から名曲のほまれ高かった“melt bitter”が5月から2年越しでTikTokでバズりまくっていること。週間USEN HIT SNSランキングで2週連続1位、YouTubeではミュージック・ビデオが1000万回再生されている。“Lukewarm”もそうだったが、TikTokとさとうもか楽曲の相性のよさは興味深い。夏がいちばん好きだというさとうは8、9月には大阪と東京でワンマン・ライヴ〈Sugar Science Show〜2022 Summer〜〉を開催する。はじめてのドラマタイアップソングの“魔法”でいよいよ本格ブレイクの期待が高まる彼女に、OTOTOYでは2度めのインタヴューを行った。
インタヴュー : 高岡洋詞
写真 : 宇佐美亮
幸せを誰かに分けてあげられるようになるのが「素直になる」ということのよさ
──“魔法”、かわいい曲ですね。
さとうもか(以下、さとう):ドラマのオープニング曲なので、明るい曲がいいかなと思って。半年ぐらい前に「“変化”というテーマで作ってください」というお話をいただいて、脚本はまだなかったんですけど、原作の漫画を読んで作りはじめました。
──ドラマとのタイアップは、はじめてですよね。リクエストは「変化」だけ?
さとう:特に曲調の指定とかはなくて、とりあえず「メロディをまったく別のジャンルで10種類作ってほしい」というお話だったんですけど、なかなかドラマ側、スタッフ内でもうまく意見が合わなくて、結局半年かけて40種類ぐらい作りました(笑)。
──40種類!
さとう:でも、おかげで思い入れが強くなったし、特に歌詞はかなり自分ごととして書けたと思います。主人公が前の職場で人間関係で失敗して、小さな会社に移っていろんな人たちとの出会いを通して変化していくお話なんですよ。わたしの状況もちょっとそれに近いところがあって、岡山から東京に来て、なかなかうまくいかないことも多かったけど、いろいろな人に話を聞いてもらったりして少しずつ変わってきてる気がするので。途中から「恋愛の要素を入れてほしい」っていう話が出て、自分の中では恋愛のことを考えてなかったのでちょっと苦戦しましたけど(笑)、落としどころを探っていきました。
──「素直になることが大切」というメッセージは、恋愛を含めた人生全般に当てはまりますもんね。
さとう:そこを軸にしようって決めて、自分のいままでの生き方を振り返ってみたら、基本的には思ったことを口に出して生きてきたんですけど、ここ1年ぐらいはあんまりそれができてないなって思って。「これ本当にやりたいことなのかな……でも仕方ないか」みたいな気持ちでいろいろやってたら、心がよくないほうに行きそうになる感覚がありました。そういう時期だったこともあって、『魔法のリノベ』の漫画を読んだとき、やっぱり本当の気持ちがいちばんっていうか、ウソがなければなににでも立ち向かえるような気がしたんです。素直な心でいろんなものと接していくことで、まず自分が幸せになって、その幸せを誰かに分けてあげられるようになるのが「素直になる」ということのよさかなって思って、それを恋愛に落とし込むとしたら……っていうふうに考えていきました。
──ロジカルですね。さすが「国語が得意」(“Cupid's arrow”)。
さとう:ずっと長く付き合ってた彼がいたんですけど、海外によく行く人だったんです。“melt bitter”のときは日本にいなくて、コロナ禍になって戻ってきて『Glints』ができて(笑)、『Woolly』ぐらいまでは一緒にいたんですけど、“舟”を出したころにまた行っちゃったんですね。前に帰国したときに、迷ったけど会いに行って、やっぱりそうしてよかったなって思えたこととか、本当の気持ちでぶつかっていったらかえって絆が深まったこととか、いろいろ思い出しながら書きました。
──まさに自分ごとですね。「本当にやりたいことなのかな」と思いながら仕事をしていた時期があるということですが、メジャー・デビューと上京で環境が変わったことと関係があったりしますか?
さとう:前はわりと自分で考えて決めることが多かったんですけど、たくさんの人が関わってくれるようになると、「ちょっと違うけど、もう時間もないし、みんなの労力も考えるとやるしかないな」っていうこともあって、モヤモヤを抱えたままやるみたいな。そのころは気分が落ち込むことが多くて、自信もなくして、心が折れかけてました。でも、“魔法”を作りながらいろんなことを考えたりとか、ライヴをしたおかげで普通に元気になって頭が回るようになったのもあって、「結局、大切なのは素直でいることだな」ってところに行き着いたというか、戻れたような感じです。
──なにかきっかけになる出来事があったりは?
さとう:特にはないんですけど、少しずつ吹っ切れていった気がしますね。「もうどうにでもなれ」っていう開き直りもあったと思うけど、ある意味、自由な気持ちにもなれました。やっぱり自由がいちばん大切なのかなって……「いちばん大切なこと多いな」って感じですけど(笑)。
──素直も自由も同じくらい大切ですもんね。素直な気持ちを伝えることで相手との関係もよくなるし、幸せになれるというのは真理だけど、でもまぁ勇気は要りますよね。
さとう:本当に元気がなかったときは正直、なにか言葉を発するのも怖くて。それまでは思ってることを言わないで我慢する人の気持ちがわからなかったんですけど、ちょっとだけわかるようになりました(笑)。いろんな人に誘われても「この人とうまくしゃべれるかな」とか心配してしまって、行く勇気が出なかったんですけど、思い切って全部行ってみようと思ってどんどんいろんな人と会ってたら、「思ってることを素直に言っても平気なんだな。そりゃそうだよな」って思えました。SNSも同じで、あれこれ考えはじめると書くことがなくなっちゃうんですけど、「考えれば考えるほどよくないほうに行くんだったら、その逆をすればいいじゃん」って思えたっていうのもあったかな。