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LIVE REPORT : パピプペポは難しいワンマンライブ2024〈このグループの名前は?〉
取材&文 : 西田健
撮影 : Tatsuyuki Ban
パピプペポは難しい、との冒険は、きっと観客の記憶のなかで、永遠のクエストとして残り続けるだろう。
2025年6月23日(月)、Zepp Shinjukuにて、アイドル・グループ〈パピプペポは難しい〉(通称:パピムズ)がワンマンライブ「転生したら勇者パピムズを僕たちが助けることになってしまったけど、なんで?」を開催した。
タイトルからして一筋縄ではいかない。彼女たちのライブといえば、過去にはZepp DiverCityで大勢のダンサーを呼んで「某テーマパーク」にしたり、Spotify O-EASTでは銀テープ5発照射や“札束撒き”など、お客さんを楽しませたいという想いが溢れすぎて、アイドルライブの常識を軽々と飛び越えてきたパピムズ。 “やりすぎ”とも言えるサービス精神に魅了され、今回も多くのファンが会場に詰めかけた。
会場が暗転し、まるで冒険の始まりを告げるような壮大なBGMが流れ出すなか、影ナレーションが、ライブの物語の始まりを告げる。

「君たちは転生した。この世界は君たちの声援や盛り上がりが勇者パピムズに様々な力を与え強くする世界である。勇者パピムズは魔王軍を打ち倒し、残る魔王のみになった。」という世界観の説明の通り、今回のコンセプトはいわゆるPRGの世界をテーマにしたもののようだ。そしてさらに「いくよ!えいえいおー!」の掛け声でメンバーが登場。ペンライトの光と歓声が一斉に会場を包み込み、まさにゲームの世界に転生したような没入感が広がる。
1曲目は「ホニャララ・アンビシャス」。レーザーが交錯し、ミラーボールが煌めくなか、続いて披露されたのは「世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい」。そのタイトルからも伝わるパピムズならではのユーモアと、エレクトロビートが炸裂するナンバーで一気に会場の熱を高めていく。さらに「ビバ・トーキョー」「だるい日」と続くセットリスト。クラブ「ZEROTOKYO」としても知られるZepp Shinjukuの音響と照明が、彼女たちのサウンドに見事にフィットしていた。
MCタイムになると、ステージ背後には“森”のグラフィックが映し出され、物語の舞台が移ると、まずは、鈴木めがねによる「ここでこの世界を平和にして、魔王を倒しましょう!」というだいぶ大袈裟なセリフ回しで観客の笑いを誘う。今回のライブは、しっかりとしたセリフの台本が用意されており、メンバーのMCもその通りに進む。ちなみにメンバーの芝居は全員だいぶ大袈裟である。
おなじみの挨拶と、だいぶざっくりした世界観の説明のあとは、白羽根優衣が「魔王を倒すには強くならなきゃいけない、つまり力をつけるいうことは?ご飯をたべたくない?」とひとこと。すかさず、めぐりアイが「私、おいしい中華屋さん知ってるよ!」と返し、自然に次の曲「おいしい中華屋さん教えてあげる」へと繋いでいく。


続けて「パピプペポイズンLOVE中毒」を披露。クセになるメロディとコール&レスポンスで、会場はすでに“中毒状態”に。彼女たちのライブが単なる音楽の場でなく、演劇性・バラエティ・エンタメを融合させた“総合体験”であることが、あらためて印象づけられていた。
中盤ブロックでは、「勇者パピムズを助けに来ましたー!」の声と共に、パピムズの過去衣装に身を包んだサポートメンバー6人が登場。「ラブげっちゅ!-お誕生日のお歌-」では、コールはコールでも飲み会的なコールが飛び、「あ、ここ、そういえば歌舞伎町だったな」と思った。そして、この日最大級の“わちゃわちゃ感”を叩き出したのが、12人で披露された「スーパーSAMURAI忍者・カラテマン」。スーパー戦隊のクロスオーバー作品の劇場版のごとく、豪華なステージで12人で戦う姿を見せた。


中盤の祝祭的な盛り上がりを経て、サポートメンバーたちと別れたパピムズは、ついに魔王城の目前に到着。そこへメンバーから観客へ「この魔王を倒さなきゃ、世界平和も特典会も終電もありません!延長料金もかかって経済的にもピンチです!」とユーモア満載の呼びかけが飛ぶ。この言葉に、観客の顔に自然と笑みがこぼれる。そこに現れたのが、今宵のラスボス「闇の魔王ダークキング」(CV:としくに from huez)。しかしその第一声は「本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます」という、まさかの丁寧なご挨拶。強キャラ感とユーモアが入り混じった登場に、会場のテンションはさらに上がる。
勇者パピムズと観客はここで、ドン・グリが楽屋で食べた「ツナマヨ」に魔王を倒す力があると信じて、「ツナマヨ!」と叫ぶ。しかし、魔王はびくともしない。練習を挟んで2度目の「ツナマヨ!」コールも失敗に終わると、今度は魔王の反撃「ダークキングビーム」が炸裂。あまりの強さに、勇者パピムズは全滅してしまう。
沈んだ空気の中、木内小百合が「みんなの歌声をください……」と芝居がかったセリフで呼びかけると、ドン・グリが「校歌があるじゃん!」と救世主のようなひとこと。来場者に配布されたパンフレットに書かれていた「パピムズ学園 校歌」を、観客全員で大合唱するというシュールで熱い展開に。


「気をつけ、礼」で締めたあと、メンバーは再び立ち上がる。王道アイドルソング「キミトボクメモリー」で場内に明るい空気を取り戻し、続く「決まりごと」ではメンバーの真っ直ぐな歌声が胸に響く。物語はクライマックス直前、最後の盛り上がりへと向かう。
一度は立ち上がったものの、どこかまだ不安げな様子のパピムズ。そんなとき、めぐりアイが「そんなんじゃ、ハッピーエンドで終われないよ!」と叫び、「ハッピーエンドから始めよう」を熱唱。会場が再び希望の光に包まれる。するとスクリーンには、ついに“この世界の神”「難神(ムズカシン)」(CV:としくに from huez)が登場。神は「観客が喜ぶ言葉を言えたら、力を与えよう」と告げ、試練が始まる。
木内は「今日魔王倒さないで朝までここにいよう!」、カワシマは「東京Zeppツアーをするぞ!」と叫ぶが、いずれも神の心には響かない。最後に登場したドン・グリが「ディズニーランドを潰してパピムズランドを作る!」とぶち上げると、観客は大爆笑と大喝采。見事に神の認定を受け、勇者パピムズには新たな力が宿る。
再び魔王のもとに舞い戻ったパピムズは、鈴木めがねの「みなさん、まだまだ盛り上がっていけますか!」という掛け声から「ち・ちん・ぷい」「シャニムニ」を畳みかけるように披露。観客のコール攻撃やジャンプ攻撃も加わり、会場全体が魔王討伐に加勢する。


だが、なおも魔王は倒れない。そこでカワシマが「特効、特殊効果よ!」と叫び、「アイマイニー」が始まる。勇者パピムズの最終奥義である、レーザーとCO2スモーク、そして銀テープが炸裂し、ついに魔王は「うわー!特殊効果だー!」と叫びながら退場。勇者パピムズ、勝利の瞬間であった。
エンディングを飾ったのは「ワンダフル・パレード」。魔王を倒した祝祭のナンバーに、フロアは多幸感に包まれた。その最後の挨拶はどこか締まらなかったけど、それすらもパピムズらしい自由さの証だった。
考えてみれば、アイドルとRPGの世界は、驚くほどよく似ている。アイドルという存在は、もともと儚くて、けれど確かに輝く「物語の主人公」だ。日々のレッスンや失敗、涙、笑顔、仲間との絆——それらはすべて“レベルアップ”の証であり、彼女たちは、ひとつひとつの楽曲やステージが、確かにその足跡を刻んできた。
そして何より、このライブの主役はアイドルだけではなかった。彼女たちと共に、声を上げ、ライブを盛り上げつづけたファンもまた、「冒険の仲間」として、この物語を完成させる大切な存在だったと思う。現実と物語の境界を曖昧にしながら、観る者すべてを冒険に巻き込むその力こそ、いまパピプペポは難しい、が持ちうる最大の魔法なのかもしれない。今回のライブは、そんな現実の物語を、ファンタジーの衣をまとわせながら、より立体的に観客の心に届けた試みように思うのは、考えすぎだろうか。

アンコールではライブの振り返りが行われ、「今回は台本ありのライブだったけど、かなりアドリブも多かった」と語られた通り、演劇とバラエティ、アイドルライブの境界線を超えていく自由さが際立ったステージだった。勇者パピムズから、アイドルグループ、パピプペポは難しいへと戻ったメンバーは、新曲のロックナンバー「デイリーランデヴー」、そして再びの「ラブげっちゅ!-お誕生日のお歌-」で完全燃焼。観客も爆踊りで応え、大団円でライブは幕を閉じた。
パピプペポは難しいの物語は、今日もつづいていく。あの日交わした冒険の約束を胸に、また新たな「クエスト」が始まるのだ。次に開かれるステージは、どんな世界なのか。それを誰よりも楽しみにしているのは、ほかならぬ私たちなのかもしれない。


■セットリスト
パピプペポは難しいワンマンライブ〈転生したら勇者パピムズを僕たちが助けることになってしまったけど、なんで?〉
2025年6月23日 at Zepp Shinjuku
1. ホニャララ・アンビシャス
2. 世界の終わりには牛丼つゆだくをあなたと食べたい
3. ビバ・トーキョー
4. だるい日
5. おいしい中華屋さん教えてあげる
6. パピプペポイズンLOVE中毒
7. ラブげっちゅ!-お誕生日のお歌-
8. スーパーSAMURAI忍者・カラテマン
9. パピムズ学園校歌
10. キミトボクメモリー
11. 決まりごと
12. ハッピーエンドから始めよう
13. ち・ちん・ぷい
14. シャニムニ
15. アイマイニー
16. ワンダフル・パレード
En1. デイリーランデヴー
En2. ラブげっちゅ!-お誕生日のお歌-
アルバム『君のそばに置いといて!』配信中!!
LIVE INFORMATION
▼ライヴ情報
〈木内小百合生誕祭2025【joteichan match!】〉
7月28日(月)新宿MARZ
OPEN 18:15 / START 18:45
[チケット]
前売 ¥3,000 / VIP ¥8,500 / 当日 ¥3,500(税込/ドリンク代別)
※VIP:優先入場/生誕限定オリジナルTシャツ付き
▼ツアー情報
〈いつもお世話になっております東京ワンマンツアー「センキュー for MY LIFE」〉
2025年
8月9日(土)新宿SAMURAI
10月19日(日)下北沢ERA
12月20日(土)新宿MARZ
2026年
3月9日(月)代官山SPACE ODD
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PROFILE
パピプペポは難しい
パピプペポは難しいは2018年6月にステージデビューし、都内を中心に活動しているエレクトリック・グループ。メンバーのカワシマユカが運営責任者とプロデュサーを務めており、曲の歌詞も担当している。「パピプペポは難しい」の名前のようにキャッチーで可愛くかっこいい楽曲と癖になる振付のライブパフォーマンスが魅力のグループである。
【公式HPはこちら】
https://www.ppppphm.com/
【公式ツイッターはこちら】
https://twitter.com/ppppphmofficial