前までは「どうしよう」ってなっていたのが、「そんならもうやりますわ」に変わった

──『あばら』の収録曲はここ2年で作ったものなんでしょうか
ズ:12曲中11曲はそうですね。「チャイム」だけ10年前くらい。
──これまで1年ごとくらいのスパンでアルバムを出してきたと思うんですけど、基本その時期の曲を作品に入れていってるんですか?
ズ:そうですね。この人(鈴木)は新曲ができたらすぐにパッケージングして次に向かいたいっていうタイプなので。だから今はアレンジが変わってる曲もある。
鈴木:鮮度が良いうちに入れておきたいっていうのがあるから。でも今回は2年くらい間が空いたから、いつもより練ってレコーディングしたかもしれん。
──この2年であった変化としてはなんなんでしょう?
ズ:〈FUJI ROCK FESTIVAL〉(以下、フジロック)と〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉(以下、ライジングサン)に出たっていうのは大きいよね。
──出てみてどうでしたか?
ズ:どっちも結局出れたのは2022年で。〈ライジングサン〉は本来2019年に出る予定で、その次に開催されるはずだった2021年も台風で中止になってしまったんです。
鈴木:そこからもう一度〈ライジングサン〉が呼んでくれたのが奇跡。主催の〈WESS〉も純粋な人たちだったし。「前出れなかったからとかじゃなくて、今年もちゃんと聴いて良かったから呼んだんだよ」って声をかけてくれて。裏方スタッフ全員に「頑張って!」 って送り出されて、本番前にすごい愛情に包まれたんだよ。そうやって会場を作ってるイベントなんだっていうのが分かって感動したよね。明確な一つの目標に、もう一度〈ライジングサン〉に出たいっていう気持ちができた。〈フジロック〉も最高だった! 出し切ってすぐ帰っちゃったけど。
ズ:〈フジロック〉は決まった時からプレッシャーがすごかったもんね。
鈴木:これまで人前に出てこなかったようなうちらがポンと出させてもらって、すごい緊張感だった。
──そういう開けた場所に出る機会もあって、作品全体に以前より希望的な光が差しているなというふうに感じました。
鈴木:希望とかは感じてないかな、ずっと変わってない。でもそれは他のひとにも言われたな。
ズ:俺も希望的なものは感じるよ。昔より諦めの要素が弱いというか。
鈴木:単純に人間が強くなったのかもしれない。前までは「どうしよう」ってなっていたのが、「そんならもうやりますわ」に変わった。逆ギレの希望なのかな。
ズ:〈ライジングサン〉に出た手前くらいから変わり始めてるなと思う。これまで全部2人でやってきたけど〈フジロック〉に出たりホリプロに入ったりして、関わる人が増えてきて、頑張ってる人の姿が見えるようになった。それが頑丈になった理由の一つだと思うよ。だって、みんな頑張ってるし、それを認めざるを得なくなったじゃん。
鈴木:そうかもしれないなあ。
──いろんな人に聴かれたいと思いますか?
鈴木:思う。自己顕示欲というか、肯定してほしい、味方がなるべくたくさん欲しい。チヤホヤされたいとかじゃなくて、寂しいとかジメジメした感情から来ているものかもしれない。
──与えるっていう気持ちではない?
鈴木:全くない。「助けて」っていう気持ち。
ズ:でも最近「誰かが曲を聴いて何かのきっかけになった」とか、「力をもらったとか伝えてくれることが自分の力にもなる」って言うようになったよ。
鈴木:そう思うようにはなったよ、ありがたいもん。でもそれは二つ目の理想。救われてる部分もあるけど。