2023/09/15 18:00

Mattia Coletti & 王舟 『5 SONGS』

上海生まれ日本育ちの王舟と、イタリア出身のMattia Colettiの2人による『5 SONGS』。Mattiaが来日するたびに共演を重ねてきた親交のあるふたりが、文通をするように制作したという今作。アコースティック・ギターと少しの電子音で構成されており、静寂な、しかし有機的でもある風景画のような印象を受ける。壁にかけた絵画が気分を和やかにしてくれるように、このEPもなんでもないひとりきりの時間を特別なものにしてくれる。音響派のアンビエント的なテイストと、ジョン・フェイヒィやエリザベス・コットンなどのブルースのテイストの掛け合わせの塩梅が大変によい。森林や海などの大自然のような遥かなるものに滲んでいく感覚。頭をからっぽにさせたいときにもオススメ。

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Baba Stiltz 『Paid Testimony』

ダンス・ミュージック界において自身の活動はもとよりプロデューサーとしても名を馳せているスウェーデン出身のBaba Stiltzが放った今作は、周囲をかなり驚かせたそう。郷愁感あふれるフォーキーなギターはニール・ヤングを彷彿とさせ、気だるさをまとった歌声からはベックやウィルコのジェフ・トゥイーディを連想させる。デモ・テープのような音の粗さやシンプルな音数は商業的な香りを薄め、親密さをより際立たせている。真新しさはないがまったく古びていない。確実に普遍的ななにかを捉えている。余白がたっぷりとあるのに退屈しない、聴けば聴くほど旨みが増すスルメ的な1枚。

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HENGE 『Alpha Test 4』

インターネットの大海原を航海していたらヘンテコなバンドに出会った。マンチェスターを拠点に活動する4人組のバンドなのだが、ヴィジュアルからして様子がおかしい。4人中3人がティム・バートン監督の映画『マーズ・アタック!』に登場する火星人のような格好をしているのだ。どうやら「地球に新しい音楽を届けるために銀河の彼方からやってきた」というのがバンドのコンセプトらしい。風変わりなヴィジュアルとコンセプトだが、ノイジーでロックなバンド・サウンドと70年代後半のシンセポップのようなピコピコ音が融合したサウンドがかなりクセになる。スパークスのダイナミックなポップとディーヴォのタイトなニューウェイヴが合わさった感じ……?と、ぐるぐるしていたところ、まったく違った角度からいちばんしっくりくる日本のバンドが浮かんできた。ポリシックスだ。

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この記事の筆者
石川 幸穂

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