Geese 『3D Country』
米ブルックリンのフレッシュな5人組ロック・バンド、Geeseのセカンド・アルバム『3D Country』。今作はJames Ellis Fordとの共同プロデュース。しょっぱな、猛牛のようなすさまじい勢いとヒリヒリとした緊張感にやられる。が、続く2曲目はケロッとした陽気さで軽やかに進み、多少の肩透かしを食らう。そのギャップがむしろ興味をそそらせる。中盤にさしかかると再びサウンドに重みが増していくのだが、どうやらメンバーのプログレ愛聴率が高いそうで、なるほどと合点がいく。単なるバンドの音からだけではなく、醸し出す雰囲気や優れたデザイン能力に惹かれる。ひとことで表すならば「センス」なのかもしれない。とりあえず1曲目に打ちのめされてほしい。
Snõõper 『Super Snõõper』
米テネシー州、ナッシュビル出身のパンク・バンド、Snõõperがデビュー・アルバム『Super Snõõper』をリリース。生粋のパンク・ロッカーConnor Cumminsと、小学校教師として勤めるかたわらポップで奇天烈なアニメーションを制作するBlair Tramelとが中心となりSnõõperは結成された。パンク味の濃厚なタレをニューウェイヴのスープで割り、味変にはサイケを少々……と、各ジャンルいいとこ取りのサウンドで、80年代当時のパンク・バンドのストレート・エッジの思想うんぬんももちろん関係なくこれは純粋に楽しいパンク。音楽は音を楽しむものだと改めて思い知らされる。今後どのような成長を遂げるのか楽しみなバンド。
Alice Phoebe Lou 『Shelter』
Alice Phoebe Lou。南アフリカケープタウンで生まれ、現在はベルリンを拠点に活動するシンガー・ソングライター。5作目のアルバムである本作『Shelter』は、セルフ・ケアや自己との対話をテーマとし、アルバムを通してAliceの哲学的な考えに触れることができる。繊細でありながらも芯のある彼女のヴォーカルからは、自己を見つめる強さを感じる。あくまでも彼女の歌を立たせることに徹している多彩なバック・バンドの貢献も見逃せない。心あたたまるヒューマン・ドラマのエンディングに似合うような、郷愁と安堵のはざまに揺れ、オレンジ色のあたたかい光に浸っているような心地。はしゃぎすぎてくたびれた旅行帰りの車で聴きたい。