isomonstrosity & International Contermporary Ensemble『isomonstrosity』
LABEL : BRASSLAND
ここから3作品は昨年の作品なのですが、どうしても紹介したく…… ザ・ナショナルのデスナー兄弟が中心になって作られたレーベル〈ブラスランド〉からリリースされた本作は、エレン・リード、ヨハン・レノックス、ユガ・コーラーの3人によるプロジェクトisomonstrosityと、ニューヨークとシカゴを拠点に活動する現代音楽を中心に演奏するインターナショナル・コンテンポラリー・アンサンブル(ICE)のコラボレーションと言っていいだろう。ブライス・デスナーやマルコス・バルターをはじめとした様々な作曲家が手掛けた楽曲をICEが演奏し、その演奏からインスピレーションを受けたダニー・L・ハール、エンプレス・オブ、ヴィック・メンサ等がボーカル・パートを録音、そしてisomonstrosityの面々がそれらをエディット/コラージュ/変性することで作り上げた作品だ。細切れになったアンサンブルの音色を基に組まれたトラックは圧倒的な強度とオリジナリティを持っており、シンプルなフレーズのリフレインでも強烈に耳を引き付けられ、それがなんの楽器を使ったものなのかわからないこともしばしばだ。現代音楽アンサンブルへのヒップホップ的アプローチとしては近年最高の達成といえる。
Third Coast Percussion 『Perspectives』
LABEL : CEDILLE RECORDS
映画音楽やオインゴ・ボインゴのメンバーとして有名なダニー・エルフマン、言わずと知れたミニマル・ミュージックの大家、いやその枠に収まらない現代音楽の巨匠であるフィリップ・グラス、ジューク~フットワークのシーンで一躍有名になり、ベース・ミュージックの革新者としてその名をとどろかせるJlin、フルート演奏をバンド・サウンドやエレクトロニクスと融合させ、リアーナやきゃりーぱみゅぱみゅのカヴァーなどでも有名になったフルートロニクスらが、グラミー賞を受賞したパーカッション・ユニットであるサード・コースト・パーカッションとコラボレーションした本作は、パーカッションが生み出しうるサウンドの枠組みを拡張させた作品だ。特にJlinの楽曲はエレクトロニック・ミュージックとして作曲され、それをサード・コースト・パーカッションが演奏してみせたものという驚くべき楽曲で、彼女の才能を改めて実感させられるものになっている。パーカッションの楽曲というと、どこか単色的で味気なく思う人もいるかもしれないが、彩り豊かな世界がここにはあり、新たな音響への扉にすらなるかもしれない。
Wild Up 『Julius Eastman Vol. 2: Joy Boy』
LABEL : NEW AMSTERDAM RECORD
クィアの黒人作曲家であるジュリアス・イーストマンの再評価が近年高まっている。去年リリースされた作品で、そのことを端的に示したのがロレイン・ジェイムスの新作『Building Something Beautiful For Me』と今回取り上げるワイルド・アップ『Julius Eastman Vol. 2: Joy Boy』だ。ジュリアス・イーストマンの作品はミニマル・ミュージックが表現の核になっているのだが、それをエレクトロニック・ミュージックとして昇華しているのがロレイン・ジェイムスで、モダンなチェンバー・ミュージックとしてアップグレードさせたのがワイルド・アップといっていいだろう。本作に収録されている「Stay On It」を聴けば、ジュリアス・イーストマンの楽曲がポップ・ミュージックとして大きなポテンシャルを持っていることを痛感することになるはずであり、ワイルド・アップという気鋭のコレクティヴが現代最高峰の現代音楽アンサンブルであることがわかるだろう。ワイルド・アップは2021年にもジュリアス・イーストマンの楽曲をリリースしており、今年もリリース予定。レーベルは〈ニュー・アムステルダム〉。ぜひそちらもチェックしてほしい。