East Forest & Peter Broderick 『Burren』
LABEL : BRIGHT ANTENNA
ポストクラシカルのサウンドをフォーキーなSSWのフォーマットに落とし込む第一人者といえるピーター・ブロデリックがポートランドのアンビエント~エレクトロニカ・アーティストであるイースト・フォレストとコラボした作品。ポストクラシカルの中心的レーベルである〈イレーズド・テープス〉を彷彿とさせるような、デジタルとアコースティックが鮮やかに、そして静謐に溶け合ったサウンドスケープは見事というほかない。鍵盤を弾く指先やギターを爪弾く際のタッチのアンビエンスをそのままパッケージしたような生々しい録音と、ノイズやリズム、エフェクトを形成する電子音が折り重なっていくその完成度には惚れ惚れさせられる。「ザ・バレン」というクレア州に存在する丘陵地帯の環境音が刻印されたこの作品は、フィールド・レコーディングの要素が存分に持ち込まれていることにも注目しておこう。作曲と即興が入り混じった構成になっており、レコーディングは1週間ほどの短期間で行われたが、本作はポストクラシカルの傑作のひとつとして記憶されていい。
yMusic 『Ymusic』
LABEL : STORYSOUND RECORDS
いまやyMusicは、インディー・クラシックという潮流の中心的存在という表現をはるかに越えた場所にいる。それは個々のメンバーのコラボレーションを見ればわかるように、彼らは現在進行形のポップ・ミュージックとクラシック~現代音楽をリンクさせという使命を負っており、常にその役割を果たし、その影響力が日に日に増しているからだ。そんなyMusicの3年ぶりの待望の新作は、セルフ・タイトルのアルバムであり、内容もそれに相応しいものになっている。本作は作曲もプロデュースもすべて自分たち自身で行い、yMusicというユニットを再定義してみせた作品になっているからだ。ミニマル・ミュージックを根本のシステムに設定しながら、そこに個々の楽器やヴォーカルの音色とフレーズが精密に絡んでいき、美しいメロディから不協和音を巧みに操りグルーヴやアンビエンスを形成し、サウンド・スケープを創造していく堂々たるその在り様からは最前線で活動するアーティストならではのプライドを感じつつ、同時にどこかリラックスした雰囲気も見受けられる。8月にリリースされるメンバーのロブ・ムースの新作も楽しみだ。