アニソンじゃなくオリジナルだからこそ出来たこと
──また今回はMVも撮られているので、映像周りのお話も伺いたいのですが、まずはnonocさんのイラストを使ったオフィシャルオーディオが上がって、そのあとにMVが公開されましたよね?
nonoc:私は元々イラストを描くのも好きで、別にどこに出す訳でもないんですけど、今まで色々と描いてきてたんです。ニコニコ動画とか、そういうのが好きな世代だったというのもあって、リリックビデオみたいなのって1枚絵とセットみたいな考えがあって、使われようが使われまいが「自分がこの曲でイメージするのはこんな絵です」 っていうのは、ずっと描いていて、今回、結果的にそれが公に出たって感じですね(笑)。MVの企画が上がった時も、私のイラストを軸に撮っていこうという話になり……。
佐藤:MVの話でいうと、僕とnonocと、監督の高前田さん3人だけで作り上げたので、こだわりが詰まりまくってますね(笑)。部屋のシーンの美術周りも、本当に全部手作りですね。
──お部屋の中にも、ライブで着てた、お母さんお手製の衣装だったり、ライブで使ってたギターが置いてあったりしましたね。
nonoc:そうなんです、私の部屋想定で。ほとんど私物の持ち込みでセットも作って。夜逃げかってくらいの荷物をタクシーに積み込んで(笑)。実はカバー動画の「Ditto.」だったり、あと私のアー写を撮ったのも全く同じスタジオなんですよ。同じ部屋に見えなくないですか!? (笑)。
佐藤:MV制作に至るまでの話を少し補足しますと、nonocが描いてきたイラストを見て、nonocがこの曲で感じたものが絵にぶつけられてる感じがしたんですね。 で、これは何かに使いたいってことになって、まずはオフィシャルオーディオとして、静止画でこれを使って、その絵を元に、MVの企画を監督の高前田さんに考えてもらったという流れになります。当初の監督のコンテだと、オフィシャルオーディオで公開した絵が最後に完成して終わるというものだったんですよ。でもこの机に突っ伏している黒髪の子の絵だと、前に進んでる感じにならないねって話になっちゃって。
nonoc:「それだったらもう完全に新しい絵、描きます!」って。それも大変だったんですけど(笑)。そんな流れから、まだモヤモヤして前に進めない時の状態をMVの始まりとして、机で突っ伏している所から、歌詞を歌いながらのストーリーの中で、試行錯誤したり色々あって、最後「1つ叶えたよ」って新しい絵が出来上がる……みたいなストーリー仕立てになりました。

──もちろんMVにもメッセージは込められていると思うのですが、そこにイラストもひとつ加わることでファンとしてはまたひとつnonocさんへの解像度が上がるというか、楽曲へ対する没入度も上がると思うので、嬉しいですよね。
nonoc:本当にどこに出す訳でもなく描いてたものなんで「いいんですか?って感じなんですけど、ありがたいです。最初の突っ伏してる絵は、黒髪の子が金髪の子を描いてる絵になるんですけど、私いまは金髪ですけど、そういう派手髪への憧れみたいなのが私自身もあって、東京だと今どきは髪色自由な仕事先が多いですけど、地元北海道だと金髪では働けない所の方が多いし、私が大好きなGalileo Galileiのボーカルの尾崎さんも以前Xで「もっと売れたら(金髪に)するかもね」みたいな事を書いていて、あれぐらい売れていてもそうなんだと驚いたんです。
自分にとっての”金髪”って”先に行ってる感”というか、ちょっと叶えてる人の象徴みたいな部分があって、モノローグもそういう曲だし、モチーフに選んだんです。少しずつnonocを知ってもらいたくて「ドアの向こう」では作詞にトライして、パーソナルな面を書きましたけど、今回は映像も含めて1つのものとして、自分の人並みな部分とかも表せたのは、多分アニソンじゃなくオリジナルだからこそ出来たことなので、本当にありがたいです。
──歌手というかアーティストとして、自分の生み出したものをどれだけ愛せるか?って結構その人の気質が見えると思うんです。もちろん、みんな自分が生み出した物に愛着はあると思うんですけど、そういう意味で言うとnonocさんは、絵も描くし、自分の私物めっちゃ持ち込むし、作詞もして歌って……みたいな。作っていく過程に強く思い入れがあるからこそ、多分それは聞いてる人にも伝わってると思いますし、個人的には届けたくなりますよね。
nonoc:ありがたいですね。なんか「ドアの向こう」もそうだけど、何年か先で歌うとまたなんか違う味がめっちゃしそうだなって思いますし、基本、なんでも関わりたいタイプなので、センスをすり合わせたり、任せてくれたことがありがたいですね。少数精鋭でやってるからこそできることだし。
──確かに、そういう意味でもNEW WORLD LINEにめちゃめちゃハマってますよね(笑)。
nonoc:ね、朝まで編集頑張りましたね(笑)。
佐藤:撮影後の編集作業も、監督と3人で朝まで細かい部分をワイワイガヤガヤしながら調整したりして。
nonoc:途中でなか卯を食べてね(笑)。夜中の2時には終わればいいねとか言ってたのに、もう7時だ!ヤバい!とか。
佐藤:で、公開がちょうどカナダに行っていたタイミングで、時差があるのでカナダの朝7時、東京は夜の8時みたいな(笑)。それもプレミア公開だったので、本人も現地から待機してコメントしたり配信もやったんですよ。
──また、この半年間の活動はかなり活発だった印象があります。ちょうど前回のインタビューの際に「翌週インドへ行く」みたいな話をしてた記憶がありますが、それこそカナダでの出演もありましたし、アコースティック・ライブやカバー動画も精力的にアップロードされていますよね。



nonoc:インドはヤバすぎましたね(笑)。
佐藤:本当に大変だった……。これまでたくさんイベントで海外に行ってますけど、1番大変だった。頭3つくらい抜けて大変でした(笑)。シロンという街でデリーから国内線で乗り継いで行ったんですけど、車の運転が凄くて現地のタクシーも「サイドミラーが取れちゃうから」っていう理由で走行中も畳んでるんですよ。対向車線からトラックが来てても御構い無しで追い抜いていくし、到着したら現地のタイムスケジュールもグチャグチャで、押しに押しまくってて……、もう移動から何から全部がハチャメチャで(笑)。
nonoc:もうインドを経験したら、大抵のことは怖くないですね(笑)。でも、インドのファンの方も本当に温かくて、そんなに上手じゃない7割くらいの英語でMCでも、ちゃんと盛り上がってくれて、この前のカナダもそうだったんですけど、その曲とかパフォーマンスが良ければ、うわあって盛り上がってくるみたいな感じで、知らない曲でもすごい踊ってくれたり、海外の方の純粋なリアクションがすごく励みになりましたね。
あと個人的にはカナダでfhánaのkevinさんやtowanaさんとも少し仲良くなれたのが嬉しかったです。


佐藤:fhánaの3ショットの写真とか、nonocが撮ってくれたりしてね。
nonoc:そうなんですよ!今回のカナダはfhánaの3人と私とマニピレーターの方の5人だけで行ったので、やっぱり絆は深まりますよね(笑)。
佐藤:カナダはカナダで、オタワのイベントだったんですけど、乗り換えのトロントで大幅な遅延があって、5〜6時間くらい空港に閉じ込められたり、トラブルはあったんですけど、ぜんぜん余裕に感じちゃうほどインドがハードで(苦笑)。
nonoc:ずっとラウンジで4時間くらいワイン飲んでましたよね(笑)。


