もう自分にしかわからなくていい、「残しておきたい」気持ち
――さらに前作『pink blue』でも小林さんの作詞家としての表現力が発揮されていましたが、今回の「コーヒーとましゅまろ」にも、そのおもしろさを感じたんですよね。
小林:コーヒーとマシュマロが何を示唆するのかみたいなところも含めて、場面ごとに違うものを浮かべて楽しんでもらえたらなと思います。
――時間の経過というか年齢が変わっていくような?
小林:そうです。これ実は、前半のワンコーラスは6年前に歌詞を書いていて、「きっかけなんて思い当たらない」からのブロックは去年の夏に書いたんです。だから歌詞を書いている自分も歳をとっています(笑)。
――これだけ濃度も高くエネルギーのあるアルバムですが、ラストを長屋さんのパーソナルな部分が色濃く出た“オーロラを探しに”で締めくくるのがすごくいいですね。
長屋:いや、そうですね。「いいのかな?」って気持ちもあったんです、すごい素だったので。でも他がそうじゃないからこそ、最後にあることでより引き立って聴こえるし。それまでの曲も大切に思えるし、落ち着くところに落ち着きましたね。ラストに置きたくて作った曲じゃないんですけど、すごく腑に落ちてますね。
――長屋さんの生年である「1995」というワードも出てきます。
長屋:「自由に曲を作ろう」という話があったとき、一瞬戸惑ってしまいました。ここ数年、ありがたいことにタイアップが多くて。何かのために、ある意味正解があるような曲作りをしていたので、自由に作る難しさに直面したんです。でも、自分の気持ちと向き合ってみた結果、今作りたかったのはこういう曲でした。実は去年の2月、フィンランドでオーロラを見に行く機会があったんです。結果的にはオーロラは見れなかったんですけど、見れなかったというその経験が自分の中で大きな影響を与えていて、価値観や人生観が広がったり定まったりするような、そんな貴重な体験でした。そのときの気持ちをちゃんと残したいと思い、自由に曲を作る今だからこそ、誰も思い浮かべないような、自分のためだけの曲を書こうと思いました。もう自分にしかわからなくていい、そんな曲です。
――久しぶりに自分が感じたことをそのまま残しておこうと?
長屋:そう。実は、こういうことはあまりなかったんですよね。これまで過去の経験や今自分が考えていることを引き伸ばして、またはその都度持ってきて曲を書いてきたので、リアルタイムの自分の気持ちや「残しておきたい」という気持ちで書けたことには本当に驚きました。私自身、写真をあまり撮らないタイプで、残したいという気持ちがあまりないんです。カメラも長続きしないんですが、そういう感覚に近いのかもしれません。今見ている景色を残しておきたいという思い、まるでシャッターを切ったような、そんな曲です。
――では最後に改めてバンドにとってどういうアルバムになった実感が強いのか伺えますか。
長屋:自分たちの中ですごく納得感がある。毎度もちろんいいものにしようと思って試行錯誤して作ってるんですけど、今回はその先にちゃんとこう100%納得というかなんだろうな?
小林:Web3.0みたいな感じかな。毎回ちゃんとベストを更新しているけど、そもそもプラットフォームというかもう技術の圧倒的な差があるみたいな。
長屋:そのバージョンの話で言うと『pink blue』から飛び級できた気がするんです。一個飛ばしたんじゃなくて、もうちょっと先に行けたような気がしていますね。うん、気に入ってます。
編集:西田健
より自由で、より強固な最新作
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ライヴ情報
〈Channel U tour 2025〉
3月8日(土) 千葉・市原市市民会館
3月14日(金) 栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
3月22日(土) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
3月23日(日) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
3月28日(金) 広島・広島文化学園HBGホール
3月30日(日) 熊本・熊本城ホール メインホール
4月6日(日) 新潟・新潟県民会館
4月11日(金) 京都・ロームシアター京都 メインホール
4月12日(土) 和歌山・和歌山県民文化会館 大ホール
4月18日(金) 三重・三重県文化会館 大ホール
4月20日(日) 宮城・仙台サンプラザホール
4月27日(日) 北海道・函館市民会館 大ホール
4月28日(月) 北海道・カナモトホール(札幌市民ホール)
5月2日(金) 茨城・水戸市民会館 大ホール
5月5日(月祝)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
5月8日(木) 大阪・フェスティバルホール
5月10日(土) 兵庫・アクリエひめじ 大ホール
5月14日(水) 静岡・アクトシティ浜松
5月21日(水) 東京・J:COMホール八王子
5月24日(土) 高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
5月25日(日) 香川・レクザムホール 大ホール
5月30日(金) 岡山・岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場
6月1日(日) 島根・島根県民会館 大ホール
6月7日(土) 長野・ホクト文化ホール
6月8日(日) 石川・本多の森 北電ホール
6月13日(金) 福岡・福岡サンパレス
6月14日(土) 鹿児島・川商ホール第1
6月20日(金) 福島・けんしん郡山文化センター 大ホール
6月22日(日) 秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
緑黄色社会 ディスコグラフィー
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PROFILE : 緑黄色社会
愛知県出⾝4⼈組バンド。愛称は“リョクシャカ“。⾼校の同級⽣であった⻑屋晴⼦(Vo / Gt)、⼩林壱誓(Gt)、peppe(key)と、⼩林の幼馴染・⽳⾒真吾(Ba)によって2012年結成。2013年、10代限定ロックフェス〈閃光ライオット〉準優勝を⽪切りに活動を本格化。2018年、ファースト・アルバム『緑⻩⾊社会』をリリース。以降、映画・ドラマ・アニメなどの主題歌を多数務める。
「Mela!」(2020)がストリーミング再生数4億回、「花になって」(2023)が同2億回、「キャラクター」(2022)・「サマータイムシンデレラ」(2023)が同1億回を突破するなど話題曲をコンスタントに発表。2022年には初の日本武道館公演、2023年~2024年にかけてアリーナツアーを成功させるなど躍進を続けている。
「NHK紅白歌合戦」3年連続出場(2022~2024)、第65回日本レコード大賞優秀作品賞受賞(2023/サマータイムシンデレラ)。
⻑屋晴⼦の透明かつ⼒強い歌声と、個性・ルーツの異なるメンバー全員が作曲に携わることにより⽣まれる楽曲のカラーバリエーション、ポップセンスにより、同世代の⽀持を多く集める。
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