自分というフィルターを挟むと感情がどんどん狭まってしまう
──今回の歌詞は別れとか、喪失とか、ほとんど全曲そういうテーマを歌っていて。
越雲:そうですね。もう、それしか書くことがないので。
──大体pollyの曲ってそういう曲が多くて。
越雲:そうですね。
──楽しいライヴの真っ最中でも、終わった後の寂しさを語ってしまうような。
越雲:仕方ない、諦めて生きていくしかないですよ、そういう部分に関しては。それかもう辞めるか。
──できればそういう曲は書きたくない?
越雲:できれば……
──もっと喜びに満ちた曲を、
越雲:喜びに関した曲とかは、ライトな書き方はしたくないですけど、そういうことを書きたいなと思ったりはします。
──でも、書けない。
越雲:僕……が、そんなに優秀じゃないので。ソング・ライターとしても。だから、こういう方が似合うんですよね。似合うというか、自分がこういう人間だって決めつけているんですよ、勝手に。で、自分でそれを勝手に背負ったりして生きているので。pollyの越雲としては多分これが正解なんですよ。それしかできないから。
──作風というやつですよね。pollyじゃない越雲さんって音楽家はいるんですか。
越雲:アンビエントとか、歌がない音源とかを趣味で作ったりもしているので。SoundCloudに挙げていたりしますけど。なんか、僕が歌うってなると、こういうフォーマット……こういう、青白いものができると思うんですよ。難しいですよね。他の人に作る機会も何度か頂いてるんですけど。そうすると全然大丈夫なんですよ。なんか、ダメっすね。自分というフィルターを挟むと、音楽性というか情景というか、感情がどんどん狭まってしまうというか。
──自分のことしか書けなくなる。
越雲:そうなんですよ。
──それは仕方ないですよ。
越雲:その書き方も……芸がないなぁって、思いますけどね。なんでスピッツの音楽がポップスとして成り立っているか、メロディ以外の要因を考えた時には、歌詞の角度の広さというか。考えてみないと。
──スピッツみたいに売れたいですか。
越雲:なにをどうすれば売れますか? 教えてください(笑)。
──それはちょっとよくわからない (笑)。
越雲:でも売れるためにやらないです、僕。やっているものが評価されるように(プロモーション等)は動きますけど。
──薄く愛されるよりは濃厚に愛された方がいいじゃないですか。
越雲:僕はそう思っていますし、音楽と長く付き合うのであれば。
──なんとなく「pollyって良いよね~」くらい軽いものではなくて。「pollyじゃなきゃだめなんだ」って思って欲しいじゃん。そういう音楽だし。
越雲:そうですよね。その声が広まれば良いなというのはずっと思っていることですけど。もちろん、売れたい気持ちはずっとあるんですけど。だけどそのために音楽を変えることはしないです。売れるために曲を変えろとか言われるんだったら、それはできないです。
──自分のことを歌うにしても、具体的に書くんじゃなくて、ちょっとぼやかして、いろんな人に届くように書き方をしたら、違うんじゃないでしょうか。
越雲:そうですね。そう思っています。でも僕は文才がないので。
──(笑)。ええーっ。
越雲:いや、本当にでないんですよ! フテ腐れてるとかじゃなくて、ないんですよ! だけど、頑張りたいなと思います。スピッツの歌詞を読むと、なるほどこういうことなのかなとか。日によって情景が変わるなとか、歌詞の見え方が。そういう書き方をしたいなと思うんですけど、いくつになってもできなくて。気づいたらこれになっちゃっているというか。
──でも、そうなってしまうというのは紛れもない越雲さんの作家性ということなんじゃないでしょうか。
越雲:うーん。別に悪いとは思っていなくて。自分じゃないと出せないものだから、良いと思ってはいるんですけど、もうちょっと、受け手がいろんな解釈ができる言葉の使い方とかは、できるよなぁって思っています。
──難しいですよね。それを下手にやって、薄くなっちゃうかもしれないし。
越雲:そうなんですよね。言葉がすっと入って来るメロディ選びが、僕のなかでひとつの大事なポイントではあるので。そこはもうちょっと突き詰めながら、良い言葉、良い歌詞、文章を書けると良いなと思っています。それが僕の大きい義務だなと思っています。
──今回はどれくらい達成できましたか。
越雲:どうなんだろうな……、難しいな。70点だと思ってますけど、70点だというとお前そんなことないだろって思われるのでいろんなことを含めて45点です。
──45点は低いんじゃないの(笑)。
越雲:じゃ、55ですね(笑)。できた時は100点だろってなるんですけど。いま考えると、もうちょっとこうしたかったなぁとか。
──それはミュージシャンあるあるですね(笑)。完成した直後は、世界最高傑作が出来たと思うけど、時間が経つとボロがみえてくる。
越雲:いまそういう状況です。冷静に考えることができないので、55か、52.5くらいです。
──いいんじゃないですか、伸びしろがいっぱいあるということで。
越雲:そうですね、伸びしろだと思いたいです。どうすれば伸びますかね(笑)。
編集:梶野有希
2022年のメンバーチェンジ後、初のアルバム
ライターの小野島大によるライナーノーツはこちら。
ライヴ情報
polly Release Tour〈Hope Hope Hope〉
2024.07.16(火)東京:Zirco Tokyo
2024.08.06(火)大阪:SOCORE FACTORY
2024.08.08(木)福岡:OP's
2024.08.23(金)愛知:ell.SIZE
〈TOUR FINAL ONEMAN〉
2024.09.27(金)東京:大塚Hearts+
過去記事
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PROFILE:polly
越雲龍馬、志水美日、高岩栄紀の3人からなるオルタナティブバンド。
シューゲイズ、ドリームポップ、ポストロック、ポストパンク、ニューウェーブ等のサウンドを軸にJ-popにも精通する美しいメロディ、そしてファルセットボイスを駆使したボーカルが特徴。Softcult, Blushing, The Underground Youth, Starbendersなどの来日公演に抜擢される他、2023年6月にはYumi Zouma(NZ)と中国5ヶ所を共に周ったツアーを大盛況に終えるなど海外のバンドとの親和性も持ち合わせている。2012年結成。2015年、DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECTよりデビュー。2020年、自主レーベル“14HOUSE(. フォーティーンハウス)”を設立。 レーベル設立以降のアートディレクションやデザインは全て越雲龍馬が担当。
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