ハシリコミーズ 『I Love you! next to music』
某所でインタヴューを頼まれて、予定が合わず泣く泣く断ったのだが、とても気に入った。3枚めのアルバムだが聴いたのは初めてで、先の2枚に遡ったらずいぶん違う。言いたいことだけ言ってバイバイ、みたいな曲ばかりだったのが見違えるほど複雑に、優雅にさえなり、情報量と色彩感が格段に増した。1曲に詰め込んだアイデアの数が、前作が1個だとすれば本作は3~4個かそれ以上という感じの大胆な跳躍に、ザ・クラッシュやザ・ジャムや毛皮のマリーズといった先人たちの鮮やかな変遷を思い出す。先行シングル “悪いようなことばかり” と表題曲を筆頭に、令和のガレージ・ソウルの騒々しくも瑞々しい輝きがみっちり詰まっていて、純粋に耳が楽しい。若い人の成長速度が眩しいし、まだまだ変貌していきそうなワクワク感もある。
illiomote “わたし、蝶々。”
公式サイトに「 “そのままの自分で生きていてもいい” というというilliomoteとしてずっと大事にしてきた思いを今の自分なりの言葉やメロディーでより強く表現しました」というYOCOのコメントがある。近年、目にする機会が増えたセルフ・ラヴのメッセージだが、二人の人柄を多少なりとも知る者としては、あえてここまでストレートに歌い切った勇気に感動を禁じ得ない(逆に言うとセルフ・ラヴ的な言説はみなそうして発されているはずだ)。過去イチの大衆性というか人なつっこさは、Avec Avecが関わったネオ・ソウル風味のアレンジはもちろん、YOCOのギター弾き語りをベースに作り上げたことが大きいと思う。歌の魅力が開花している。ライヴのスタイルの変化を含め、今まさに羽化せんとするilliomoteからますます目が離せない。
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フジファブリック 『PORTRAIT』
メジャー・デビュー20年。今や3人になってからの時間がバンド史上最長になった。僕は志村正彦としか話したことがないが(つまり10年以上ご無沙汰ということ)、志村亡き後もバンドを続けてきたのは今さらながら偉大だと思う。本作は通算12枚め、ファンも大部分が入れ替わったはずだ。表題曲や “プラネタリア” “音の庭” “Particle Dreams” の叙情性を軸として、 “ミラクルレボリューション No.9” やフレデリックと共演した “瞳のランデヴー” のユーモアから、四人囃子好きを思い出す “KARAKURI” のプログレ風味まで、楽曲もサウンドも20年選手らしい盤石のクォリティ。山内総一郎の歌声も唯一無二の味をまとっている。純朴な音楽賛歌 “音楽” は特別な一曲。終曲 “ショウ・タイム” と同様、ゆとりを感じさせる自己言及に心が安らぐ。
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