パフォーマーだけというのも恐いんですよ。満足できない。
──多分、それが今回のインタビューの主題なのかなと思うんです。いわゆる音楽好きに戦慄さんの音楽がまだまだ届いてないのかなというところですよね。もちろんファンの人は音楽や映像の独創性に当然気づいてると思うんですけど、まず出てくる感想はビジュアル面に関してのものが多いと思うんです。それはそれで素晴らしいことだけど、音楽的な評価みたいなものがぽっかりしてしまっているというか。
戦慄 : わかる。クリエイターの人とか裏方の人とかは良いねって言ってくれるんですけどね。音楽ファン層ってどこにいるのかな? じつは聴いてもらえてるのかもしれないけど、そういう発信もしなければライヴにも来なければCDも買わない、という人たちなんですかね。20〜30代の一般層に届いて欲しいんですよね。
──今はほぼ女性ファンですもんね。
戦慄 : アイドルも聴いたことなかったしバンドも興味ない、みたいな一般の女の人は結構来てくれるんですけど、クラブまわりとかしてるから、もっとパリピみたいな層もついてきてくれないかなって。
──戦略会議みたいになってますけども(笑)。戦慄さん自身はこういう音楽をやってますという発信を積極的にはしてこなかったですよね。それは何か考えがあったんですか? もしくは単純に照れがあったりとか。
戦慄 : なんてアピールしたらいいのかわからないんだもん(笑)。私はSNSも苦手だし、そういうのはクチコミで広がるものだと思ってたから……。だから、あまりしたくなかったことなんですけど、とうとうメジャーの力を借りる時が来たのかもしれないとも思ってます。
──おお! 個人の力やクチコミの良心だけではない、別の広がりが持たせられるかもしれないですよね。
戦慄 : でも、タイアップで多少曲が売れたり、バズつたりしただけでもどうにもならない時代というのも感じていて。(femme fataleの)「だいしきゅーだいしゅき」がバズったけど、ただバズっただけでした。
──バズの先には何もなかった(笑)。
戦慄 : 何もなかったです! 何の媒体にも呼ばれなかったし、曲だけが独り歩きしてテレビとかで流れるけど、それだけ。曲は知られたけど別に何もない。それも恐いんですよ。曲が売れたところで、みんなは別に興味なかったらどしようって。そういうことばっかり考えちゃう。
──まさに『solitary』ですね。いくら考えても結局は孤独に行き着くという。
戦慄 : あははは(笑)。本当に。 考えても考えても孤独が浮き彫りになるんですよね。いろんな力を借りてもそうだったらどうしよう。
──裏を返せば、それだけ音楽を聴いてほしいし、その先にライヴを見てほしいという気持ちが強いということなのかなと。
戦慄 : 本当はそう。マネージャーからはそれだけじゃないと言われるけれど、やっぱりライヴが大事だなと思います。インフルエンサーとしての立ち振る舞いとかお仕事を求められることが多いんですけど、せっかくそっちができるんだからそっちをやればいいじゃんって。でも、ライヴは本気じゃなくて二の次、みたいな活動の仕方はイヤなんですよ。

──そこまで音楽活動の優先順位が高いのはどうしてなんでしょうか?
戦慄 : なんでだろう?
──単純に楽しいとか。
戦慄 : 正直、楽しくはないけど(笑)。
──つらいことも多い?
戦慄 : つらいことの方が多いですし、ライヴ前を密着してもらえたらわかるけど、何回もお腹壊すんですよ。緊張がハンパないですし、ライヴの日が近づいてくるだけでパニックになります。それに、やり終わったあとにめっちゃ達成感が得られるわけでもないんですよ。むしろ病みますし。「でも、またやりたくなるんですよね」みたいな話でもなくて。
──生き甲斐みたいなことでもない。
戦慄 : そうですね。ただ、修行してるなって感じはします(笑)。修行を重ねて悟りを開くみたいな感じ?
──修行ならつらいのも仕方ない、みたいな(笑)。当然メイクマネーのためでもない。
戦慄 : メイクマネーだったらライヴは効率悪いので。それなら永遠にチェキをやってた方がいいです(笑)。楽しい瞬間もあるんですけどね。でも、1年前とかはヤバかった。終わったらパニックになるのがしょっちゅうで。昔、グループをやってた時はライヴがすごい楽しくて、ライヴをやるためにこの活動をしてるんだという感覚があったので、それが忘れられないというのはあるのかもしれないですね。
──その感覚を追い求めている。
戦慄 : 今は考えることが多すぎるので。プレッシャーがでかすぎてずっとしんどいです。
──総合的に考えたりせず、パフォーマーに徹したいというのはあります?
戦慄 : たしかにライヴをやることだけ考えたら徹したいですけど、そうも言ってられない(笑)。自分の理想が高くなってしまってるというのもあるので、もうパフォーマーだけというのも恐いんですよ。満足できない。やっぱり、なんか孤独。
