本当になにも救われないなあ、クソだ!って思いながら
──しかもタイアップにはちょっと違う側面もあり。
MAIYA : “Take a chance”、あの元気な曲ですか?
──このEPのなかではちょっと浮くぐらい元気な。
MAIYA:ああ、浮いてます。浮いてるんですけど、まあこれはそうですね、アニメのためと言ってもいいぐらい。
YOCO:書き下ろしだもんね。
MAIYA:そうよ、なんかもうアニメのために作ってますよ、これは。しかもクオリティ高く作ったと思っているので。
YOCO:正解のど真ん中を出した気がした、みたいな。
──ポップ・パンクの要素も感じます。
MAIYA:あとちょっとハイパーポップの要素だったりを集めて作ったってこと。まあでもこれ言うて出来上がったの去年の末ぐらいか。一旦去年のフェーズなんですよね、この“Take a chance”も“onemoretime”も。illiomoteをこいうイメージで捉えてる人も全然いると思いますし、まあ“No Kidding!”とか“What is??”とかああいう感じのも、全然好きなんで。
──最近だとマシンガン・ケリーとか聴いてる人も好きそうです。
MAIYA:だから“No Kidding!”がちょっと早かったんだよね。今年出したほうが良かったかな(笑)。
──でも普通に“Take a chance”もいまのプレイリストと並べて聴けば良いのでは? その上でタイアップの曲以外はシリアスにも聴けるし。ちなみに“forksong’99”はおふたりが99年生まれだから?
YOCO:私が99年生まれで。特に数字に意味はないんですけど(笑)。
──YOCOさんはノラ・ジョーンズも好きなんですよね。
YOCO:そうですね。もともと弾き語りが私はベースなので、こう楽器弾きながら歌っているアーティストにすごく憧れる。自分でその弾き語りベースのアーティストとかプレイリスト作ったりしてます。MAIYAちゃんは「パープル・レイン」聴いて泣いてるかもしれないけど(笑)、私はスティービー・ワンダーとか聴いて、「しみる~」って言ってる。
MAIYA:しみる。ノラ・ジョーンズもレコードで聴いてしみてるよ。家で聴くってなったらそういうの聴く。
──夕方の情景は前作の「夕霞団地」にもあったし。
MAIYA: てか夕方好きじゃん?
YOCO:違う違うの。これは音なんですよ。母音とか、英語とか私が好きな言葉の響きに聴こえるように単語を当てはめるっていう。
MAIYA:「You Got」に聴こえるとか?
YOCO:そうそう。そういうふうに聴こえるからよく使うっていうのはけっこうありますね。
──なるほど。曲調は違うけど、“Dark_Eyes.”も音の断片と言葉でインスピレーションが浮かぶ感じで。
YOCO:そうですね。言葉は煮詰まっちゃうとわけわかんなくなくなって全部消したくなっちゃうので(笑)、わりとなにかをノリで入れるっていうのが今回の制作で結構多かったんですけど、ある意味ちゃんと諦めて入れている。決めてはいるんですけど、いいところでちゃんと諦めるということをしています。例えば最後の方の歌詞は絶対に誰にも分かるような日本語の羅列で、絶望を表すっていうことをやったり。それ以外は、私のなかにある気持ちの近くにある言葉たちを寄せ集めてリズムに合わせて、「言ってみた」みたいな。文法とかも「わたし語」になっちゃってるんで、順番とかめちゃめちゃだし。
──そういうなかに「タダだってヤはヤなだけ」 だけっていうパンチラインがあって。
YOCO:パンチラインになってますか? これ(笑)。若干リズム悪いかなとかずっと思ったんですけど、気にしてたらレコーディング間に合わなくなっちゃうから。
──勝手に腑に落ちてるんですけど、タダのものとかすっごい安いものとか多いじゃないですか。タダなら喜ぶと思われてるようで嫌な気分になる。
YOCO:いやでもそういう意味も入ってるとも言えるし、嬉しいです。
MAIYA:ここ好きだよ、この暗いゾーンも。最後の最後。音楽で聴いたらいいんだけど、文字だけで見たらめっちゃ気持ちボーンってなるわ。
YOCO:やっぱり常にパンクス精神みたいなものもあるから、多分そういう意味で自分を安く見られたくないし、嫌なこと言われたくないし。タダだって嫌だよみたいなことだと思うんですけど。最後の歌詞はほんとになんて言うんだろう。私、あんまり歌詞を「見てくれ、感じてくれ」ってやりたくない派の人間なんです。押し付けがましいかなと思って。でもここは気に入ってます(笑)。いちばん暗い歌詞はもうほんとに大好き。笑われました、みんなに。レコーディングの時も。
MAIYA:本当に暗いね、どしたん?って。
YOCO:これがいまの私とか、私みたいに生きてる人とかの現実だと思うし。全然、音楽で人は救えないし。本当に最悪ダメになっちゃう切実な現実だし、ダメになっちゃう時は人間やっぱダメになっちゃうし。本当になにも救われないなあ、クソだ!って思いながらっていう感じですね。だからこれを歌う時は、すごいクソだ!って気持ちでいつも歌っちゃう。

──この曲は暗いんじゃなくて嫌だっていう意思表明だと思います。
YOCO:怒りとか、世の中に絶望、自分に失望とかもいろいろごっちゃごっちゃになって。でもふとある一面を見たときに、誰かが平気そうにしてたりすると、は? なにが平気なの? って思う。なにを見てるのみんなって。人は人自分は自分だと思うんですけど、そうやって思っちゃう時もある。それでも、自分が明日すぐなにか行動して満足する結果になるわけでもないし。
──そしてまたこの曲にはbohdiのリミックスもあって。
MAIYA:おもしろいですよねあれ。もう笑っちゃって。bohdiらしいなと思って。
──ピアノハウスっぽいけど途中でカオスになるという。
YOCO:はやくいろんな人に聴いてもらいたい。あとやっぱりなんだろうな。他の曲のリミックスも、もっといろんなアーティストにお願いできたらなあっていうか(笑)。いろんなilliomote、他のアーティストが調理したilliomoteを聴いてみたいなと思う。
MAIYA:募集してるんで声かけてください。こっちから声かけることもあるかもしれないけど、もしilliomoteのなかで曲が気に入ったやつがあってリミックスしたい人がいたら言ってくださいって感じ。データ送ります。
──(笑)。EPのタイトルの『side_effects+.』、これは時代の副作用という意味合いですか?
YOCO:自分で言うのもあれだし、この前取材していただいた時はなんか言えなかったんで、言おうか迷うんですけど(笑)。 人生のこういう内容だとかが、人生の副作用的な意味です。時代もそうだと思うんですけど。だから仕方ないのか、結局そういうものと死ぬまでどう付き合っていくのかな?っていう。なんだろうな。それが地獄なのか?とか、地獄ってどういうことなのかとか、ずっと変なことを考えながら、こういうタイトルをつけたりしました。 あとは逆によく使われているタイトルにしたくて(笑)。曲のタイトルもそうなんですけど、この世の中にあるんですよ、たくさん。あえてありふれたタイトルを散りばめてみました。
──確かに。他のアーティストがどんなことを表現してるか聴いてみると、よりilliomoteが分かるかもしれないですね。

編集 : 梶野有希
いまを切り取る、illiomoteのサード・EP
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PROFILE : illiomote
幼稚園からの幼馴染みである YOCO(ヨーコ/Vo,Gt)と MAIYA(マイヤ/Gt,Sampl)からなる2人組。 池袋を拠点とし作詞からトラックメイクまでを2人で手掛けている。 2019年3月にYouTubeに投稿した「In your 徒然」が、ロックからポップス、ルーツミュージックまで混ぜ合わせたNEOな楽曲センスと、2人のHAPPYなバイブスが投影されたミュージックビデオで突如話題となり、楽曲発売前にも関わらず「POPEYE」や「BRUTUS」などのカルチャー雑誌やWEBメディアでピックアップされる。 2020年に1st EP「SLEEP ASLEEP...。」、そして2021年2月3日に2nd EP「Teen Trip Into The Future」をリリース。2022年7月27日には、1年半年振りに新曲を多数収録した3枚目のEP「side_effects+.」をリリース。
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