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INTERVIEW : illiomote

前作『Teen Trip Into The Future』では10代の感動や興奮を少しメランコリックに表現していたilliomote。それでも聴感はドリーミーで、なによりメロディのキャッチーさが際立っていた。そこから1年5ヶ月。サード・EP『side_effects+.』は、ハウス要素多めのダンストラックが目立つようになり、そこにこの前に進めない現実が断片的なワードやオリジナルな文法で綴られている。前作以上にただ“状態“をビビッドに切り取った印象が強いEPだ。普遍性とは決してロングスパンを狙うことじゃなく、ただ、いまを描くことでしか手にできない。illiomoteを信用できる最大の理由もそれだったりする。
インタヴュー : 石角友香
写真 : 大橋祐希
もうなにもありません
──前作『Teen Trip Into The Future』はメランコリックな感じだったけど、今回またサウンドが変わりましたね。
YOCO(Vo,Gt):飽きちゃいましたね(笑)。また飽きちゃいました。
MAIYA(Gt,Sampl):飽きっていうか、進化していくので。聴いてるものも変わってくると思いますし。去年がどうだったか覚えてないし。
──前作はコロナ禍に突入して、まだ若干楽しいこともなくはない、みたいなテンションだったと思うんですけど、今回はもう現在の“状態“を映した作品かなと。
YOCO:なんかこう「絶望しました」とか、「もうなにもありません」とか、ほんとにその状態で。聴いてくれてる人が思うままのilliomoteを感じ取って楽しんでほしいし、それぞれのストーリーを想像してほしいし。聴いて想像するっていうのも私たちも創作の一部になるんじゃないかな。
MAIYA:なんだろう? 前回はまだ希望があったんじゃない? 色々なことに対して。希望、でもなくなったんだよ。明るい未来が見いだせない。
YOCO:ヤバい世の中というかね。ま、苦しいですよね。「よくあれ!」って思いすぎるのも重荷というか。

──実際に曲に現れている部分だと思うんですけど、2021年はどうでした? 現実というか。
MAIYA:去年は停滞期みたいな感じだったかな。
YOCO:自分達の曲がほとんど作れなくて、illiomote名義の楽曲、シングルリリースとかも目に見えて減ってしまったという。
──いつ頃から再び作れるように?
YOCO:去年に比べたら全然いまは、「作るぞ」っていうフェーズになっているなあっていう感じですね。回復してきました、だいぶ自分のクリエイティビティとかが。
──自分のメンタルを保つためにどういうことがいちばん役に立ちました?
MAIYA:私は普通に遊びに行ったりとか。それこそライヴをするとメンタル……そうだ。去年ちょうど全然ライヴなくて久しぶりにライヴした時にめっちゃ泣いた覚えあります(笑)。「ヘンタイキャンプ」っていう山の上の方でやるフェスみたいなのがあって、ゆるふわギャングさんとか出たりしてて。その時、久しぶりに人の顔を見て「うわっ!」てなりました。久しぶりにライブ感があったし、それまでお客さんの反応見れなかったのもあって。いまもそうだと思うんですけど、なかなかお客さんの反応を感じにくい環境で演奏していたから、ライヴしているって気持ちがなかったんですよ、それまで。そこからライヴを思い出せて、いまは楽しくライヴできてます。
YOCO:それまではほんと見世物小屋。本質は見世物小屋だなって、私は勝手に思ってるんですけど、それがより顕著になりやすい環境で。声を出しちゃいけない、お客さんも反応しづらいから。
MAIYA:お客さんは反応したい上で我慢してくれているけど、思いっきり反応してもらわないと演者には伝わらないじゃないですか。逆も然りですけど。ほんとは笑ってるかも分からないとか、お客さんの気持ちが全く伝わらなくて、(ライヴが) 怖いと感じる時期があったような気がします。
YOCO:それをいかにブチ破ろうかっていう戦いがずっと続いていました。お客さんの心がほぐれて欲しいなって思うし、「踊り方を知らなくても自分のステップで大丈夫だよ」とか、「私の動きを真似してみて」とか、いっぱい喋りかけたりしましたね。その時の自分を客観視したら変な人間だなって思うけど、それほどなりふり構わずやってみるっていうのを結構やりましたね。

──そういう経験がいまの音像や曲調に影響してませんか? 踊れる曲が多いし。
MAIYA:そうです。私自身、クラブに行くことが増えたんですよ。それもあるかもしれない。最近は行ってないですけど、いろんなの聴いて、やっぱ踊れる曲やりたいなって気持ちが出てきて。それもありますね。
──どういうジャンルの日に行くんですか? オールジャンル?
MAIYA:一時期はContactによく行ってましたけど。MITSUKI行ったりとか。MITSUKIはちょっと怖いけど(笑)、いい箱なので、めっちゃ好きで。いいテクノの日とかもあるし。
──たしかにテクノで没入したいかも。
MAIYA:ずっと踊ってたい、朝まで。実際ずっと踊れるんですけど。おしゃれしてでっかい音聴いて、別にみんながそれぞれ好きに楽しんでて、私はただ踊りたいなっていう気持ちで、あんまなにも考えずに行きたいみたいな。
──YOCOさんはどうですか?
YOCO:私は家の外に出なかったり、人と会わないのが基本の生活なんですけど、結局、たまに人に会って話すとやっぱり人間は孤独で生きるより、人と人のコミュニティのなかにちょっとでも足を突っ込むべきなんだなあって。人のありがたみというか(笑)、そういうのを感じた時期が多かったかなっていう。あとは普段趣味で絵を描いてるんですけど、いろんなお絵描きアプリを使ってみたり、個人的にグッズを制作してみたり、粘土で謎の造形を作って(笑)、そこに絵を描いてみたりとか。曲が作れない時は違うものを作って、バランスを保っていたような気がします。ご飯作ったりとか。あとは自分のことを考えすぎちゃう時は、逆に人の心配するとか(笑)。「お婆ちゃん大丈夫かな」って。それで気を紛らしていました。
──今作はそういう“日々“っていう感じがします。
MAIYA:そうですね。「日々の生活」(笑)。でも日々の生活あっての音楽ですからね。それでいいと思います。