なにを伝えたいというよりかは感覚を音に
──前作と構造が似てるように思ったのは、1曲目のがイントロダクション的な部分です。今回の“Water”は歌詞がありますけど。
MAIYA:イントロというか、EPで他の曲を並べた時にまとまりをつけたくって、あと、こういう曲を持ってこようと思っていて。後これを作る前に人生ではじめてキャンプへ行って、めちゃくちゃ感動したんですよ。水もめっちゃきれいだし、森は空気いいし、朝は最高だし、なんだこの感じは?、みたいな。「あ、そういう曲書こう」ってなったんです。長野の森がほんとにきれいで。「もう長野、住みてえ!」と思うぐらい。その雰囲気がちょっとあるような曲が作れたらいいなという気持ちで作りました。
──素直な感覚なんですね。
MAIYA:感覚です。なにを伝えたいというよりかは感覚を音にして。で、YOCOに歌メロと歌詞をつけてもらって。それも感覚?
YOCO:そうですね。まあ過去作にはメッセージ・ソングもありましたけど、そういうときもあれば、感覚のときもあるしっていう。
──「こういう人いる!」と思ったのが、2曲目の“A.O.U”で。読み方は「会おう」ですか?
YOCO:会おう、です。
MAIYA:私は作詞しませんけど、「とりま会おう」ってなるよな。予定とか考えずに。

──すごい泣けたんですよ。これは個人的な感想ですけど、知人で仕事が暴発寸前に忙しい人がいて。「とりま会おう」って言いたくなる感じ。
YOCO:嬉しいな。そんな風に考えてもらえるのは。
──簡単に遊びに行けないご時世の割に、仕事だけは忙しかったりするから。
YOCO:社会が矛盾してますよね、いつも。なんかこれはダメなのにこれは良いんだみたいな結構あって。なんか「は?」と思って。誰が指示してんですかね?みたいな。
──そうなんですよね。ところでこの曲のリズムマシーンはTRですか? 懐かしいニュアンスがあって。
MAIYA:なんだろう? なに使ったなあ? でもなんか……名前出てこない! ちょっと緩めのちょっと昔のハウスな感じをしたかったんですよね。いつも感覚で選んで名前とか全然覚えてないんで。感覚で選んでるんですよ(笑)。めっちゃこだわりがあるわけじゃなくて、シンプルに「あ、この音!」みたいな感じで。この音入れたい、だからこれ入れようみたいな感じで、ずっとを探してます(キーボードを叩きまくる)。
──探すのが大変ですよね。
MAIYA:そうなんですよ、詰むんですよ。そこで1日終わるみたいな時もあるんで。だからトラック制作はずーっと音聴いてる。このサンプル使おうかな、この音源使おうかな、をずっとやってます(笑)。
──ギターが出てくるのはほんとにポイントで。
MAIYA:ほんとは入れたい気持ちはあるんですけど、先にトラックを作るんですよ、私。トラックが完成した段階でギターを入れるんで、「ここにギターはいらない」って気持ちになっちゃう。もう自分のなかで結構完成しちゃってるんで、(ギターは)リズム的に入れたりとか。あとはライヴでアレンジして弾けばいいやという気持ちがあって、音源とライヴはまた別だよって感じです。お客さんに聴いてもらえればいいかな、みたいな(笑)。
──そして“nothin’”はタイトル通りの内容で「大丈夫?」って感じですが。
YOCO:そのまま、無ですよ。なにもないんですよ。

──この楽曲もトラックがいいですよね。シティポップっていうよりは80sのAORみたいで。
MAIYA:たしかに(笑)。80sの……ギターはなんだろう? プリンスの曲聴くといつもすっごいクワーってなるんですよ。なんか泣いちゃう、泣きながらギター弾くんですよ。めっちゃ「やべえ!」って泣きながら弾くのよ。「パープル・レイン」聴くと泣いちゃうの分かります? あれは弾けないんだけど、私なりのあの感じの雰囲気のギター入れれたらいいなっていうのもあったし。あとこれは80sのアフリカンな感じ分かります? なんかそうしたかったんです。そういう時期だったんですよね。
──あの時代の音像の無菌室感プラス、エモーションがブワッと入ってる感じ。
MAIYA:パパ世代の曲の感じします(笑)。ルーツにはやっぱそこにもあるので、なにも考えなかったからこそ出たのかなみたいなのはあるなあ。歌の感じもめちゃくちゃ重なり合っている感じがいいですよね。