私にとっての強さは、受け入れて、愛すること
──いいお話ですね。先ほど、枠に捕らわれずに自由に制作できたというお話がありましたが、今作のテーマは「Strange bouquet=変わったブーケ」とされています。このテーマは、どのようにして生まれたのでしょうか?
ブーケを作る時って、ある程度のテーマを準備した上で、それに則して花を選んでいくじゃないですか? でも、そうした取捨選択をせずに、感情が赴くままに花を集めたら、他人からすればとても歪で、へんてこなブーケに見えると思うんです。でも、自分はそのブーケが愛おしいし、心から美しいと思っている。それが大事なことだと思いますし、そういう考えを基盤としたアルバムになったと思います。
──いまのお話を伺って、今作の1曲目が、強く在ることの大事さを歌う“天の河“であることに意味があるんだなと思いました。
そうですね。“天の河“のなかにある「揶揄いの声 躊躇わず昇る」という歌詞は、まさにそういうことを歌っています。
──猫田さんが思う「強さ」を言葉にできますか?
人によって定義は違うと思うんですけど、私にとっての強さは、受け入れて、愛することですね。“Strange bouquet”という曲のなかに「色に宿る光を見つけて 表情を変えるbouquet」という歌詞があるんですけど、例えば一輪の花を見た時に、人気がある花だったら「綺麗だな」とか、はじめて見る花だったら「変だな」とか、ある程度経験則や先入観から出た感想が出てくると思うんです。そういうことではなく、一度、自分からその花に歩み寄って、自分の目できちんと色んな角度から見つめてみることが大事だし、その上で愛せるようになることが、私にとっての強さだと思います。
──なるほど。
人って、「これがなかったら、これができたのに」と考えてしまうことが多い気がするんです。私は、例え自分がやりたいことを遮ってくる問題があっても、できることは絶対にあると思うし、その問題が邪魔なのではなく、その問題ごと大切にして、前向きにとらえてバネにしていけたらいいと思うんです。方法なんていくつもあると思いますし、それが愛なんだと思います。
──コロナ禍、という時世にリンクするお話でもありますよね。
そうですね。コロナ禍での苦労があったけれど、そこから転じて良かったと思えたことがあるし、だからこそ『Strange bouquet』という作品が出来たと思っています。今作に収録されている楽曲は、人に会えない期間も長かったので、はじめてDAWを使って土台を作ったんです。それがあったからこそ、作曲における世界観もすごく広がりましたし、良かった面だなと思っています。先ほどお話した、使う楽器が増えたという話にも繋がるんですけど、楽器が増えれば増えるほど、それぞれの音色や雰囲気の違いで表現の幅もぐっと広がりますしね。この機会がなければ、ハープの音色を使おうとは絶対に思っていなかったと思います。デジタルでの作曲は、自分の音楽性にマッチしないんじゃないか?という考えから、正直、抵抗はあったんです。でも、それを試さざるを得ない状況になったことで今作が生まれたし、新しい自分を見出す良い機会になったと思っています。
──ネガティヴなことがあったとしても、音楽の中ではポジティヴで在りたい、という意識はあるんですか?
それはありますね。人間ですし、落ち込むこともありますけど、口から出す言葉は全部ポジティヴなものにしようと思っています。ネガティヴな言葉って、口から発した時点で自分の耳にも届くから、否応なく引っ張られちゃうんですよね。だから、良い精神状態を作るために、歌詞においても前向きなものにしようと心掛けています。暗さのなかから見出した前向きさを描くこともあるので、相対的にネガティヴな言葉が入っていることはあるんですけど、最終的にはポジティヴになっていると思います。
