音楽も、生活も、恋愛も、友情も、絶対に汚されていく
──アラタニさんは、本作を作るうえで見出した自分自身の哲学はあると思いますか?
アラタニ:自分が音楽に向き合うとき、「とにかくメロディ中毒者なんだ」と思いました(笑)。曲を作るときに、歌メロのよさは絶対に外せない。「じゃあ、そうやって音楽を作ることのよさってなんだろう?」ということを考えた1、2年だったんですけど、そこで思ったのは、自分は、自分が作ったメロディを「思い出せるかどうか」をすごく大事にしているんだな、ということ。ちょっと悲しい話ではあるけど、お客さんからしたら、音楽以外にも楽しいことはいっぱいあるじゃないですか。みんな忙しいし、そんなに音楽に時間も使えない。そのうえで音楽や僕らのバンドをより多く聴いてもらうにはどうしたらいいのかと考えたとき、「思い出してもらうことだ」と思ったんです。いつもMCで言っているんですけど、僕が音楽を好きなところって、聴いたときにそのときの記憶を呼び戻せることなので。その感覚を、自分が音楽を作るときにも持つようにしていて。その瞬間に感じるだけのいいメロディじゃなくて、思い出して「いいメロディ」だと感じられる曲を作りたい。そういうことはすごく考えましたね。
──音楽を思い出せることを、その音楽が聴き手のなかで生き続けることだと解釈するのなら、藤本さんの"ながいおわかれ"の話ともつながるものがあるなと思います。
アラタニ:それはあると思います。たぶん僕らはどちらも寂しがりやな男たちなので、忘れてほしくないんですよ(笑)。アルバムって、シングルとは違ってバンドのすべてを出す作品だから。この1枚を聴いたときに「GLASGOWってこういう人たちなんだ」ということを思い出してほしいし、僕らも覚えていたい。そういう思いで作ったアルバムだと思います。
──そうした根源的な部分でのアラタニさんと藤本さんのリンクがこのアルバムから立ち上がってくるというのは、素晴らしいことですよね。
アラタニ:去年ドラムが脱退したんですけど、むしろ「原点に返ったな」と思っていて。さっきも言ったように、僕らはそもそも高校の友達同士の音楽好きで、そんなふたりが「社会人になる前にバンドをやろう」ということではじめたバンドがGALSGOWなんです。なので、このふたりがいればバンドの核は変わらないよな、と思います。それに、いまのサポートメンバーが寄り添ってくれるし、そのうえで「これはこうじゃない?」というアイディアもくれるし。すごく原点に返った感じがします。
──最後に"それでも息を"の歌詞について聞かせてください。この曲は1曲目の"In you"に続きアルバムの幕開けを飾る曲とも言えますが、歌詞では<素晴らしい日々よ/これから僕らさよならさ>と歌われます。この歌詞に込めた思いはどのようなものなのでしょうか?
藤本:一言で言ってしまうと、どんなことがあってもやっていくしかない、ということですね。<僕の脚本はきっと/あなたによって汚されるのでしょう>からこの歌詞ははじまるんですけど、どんな道筋であれ、生きていくうえで、汚されることは確定しているんですよね。それが生きていることだし、バンドをやっていくことだし、人と関わって生きていくことだと思うんです。それを受け入れたうえで生活を続けていくし、音楽を続けていく。そういうことを思って書いた曲です。<僕の前に道がないって詩が/今やたらに肩を叩くんだ>という部分があるんですけど、これは小学校の頃に読んだ高村光太郎さんの詩からの引用なんです。
──「道程」ですよね。
藤本:あの詩のことを思うと「本当にそうだな」とつくづく思うんです。これは僕らだけじゃなく、誰もがそうなんじゃないかと思うんですけど、目の前にすでに作られた道があって、そのうえを歩いていくわけじゃない。目の前に道なんてなくて、振り返ったときに歩いてきたところが道になっているだけなんですよね。いい意味でも、悪い意味でも、音楽も、生活も、恋愛も、友情も、絶対に汚されていく。それは付きまとう。そういうことに諦めも受け入れも含めたうえで向き合って、「だからなにもしない」じゃなくて、「そのうえでやっていきましょう」とこの曲では言いたかったんです。<素晴らしい日々よ/これから僕らさよならさ>という部分も、悲しいことを言いたいわけではないんですよね。すべてが自分の思い通り上手くいく……そういう意味での「素晴らしい日々」なんて、誰にとっても起こりえない。そんなのは偶像でしかない。そこに向けて「我々は退散します」と言っている。<さよなら>という言葉を使っているけど、強く前を向いている曲だと思います。

編集:梶野有希
GLASGOW、初のフル・アルバムをリリース!
ライヴ情報
〈GLASGOW pre.“NOW I SAAAAAAY TOUR〉
日付:6月22日(土)
場所:宮城県 LIVE HOUSE 仙台FLYING SON
日付:6月29日(土)
場所:福岡県 LIVE HOUSE Queblick
日付:7月6日(土)
場所:京都府 Live House nano
日付:7月7日(日)
場所:大阪府 Live House Pangea
出演:GLASGOW / colormal / ...and more
日付:7月13日(土)
場所:愛知県 栄R.A.D
日付:7月28日(日)
場所:東京都 渋谷WWW
出演:GLASGOW/mol-74
※他核出演バンドは後日発表
GLASGOWの他作品はこちら
PROFILE:GLASGOW
東京を拠点とするロックバンド。2018年9月に活動を開始。2018年タワレコ渋谷とインディーズ通販サイトにて、自主制作盤で2枚のCDが累計売上1000枚以上を記録し、同店舗未流通CDランキングで週間1位を記録。2019年12月自主レーベル"whiteluckrecords”を立ち上げる。2021年にはTOKYO FM主催のオーディションで優勝し、豊洲PITに出演。2024年1月にはテレ東系のTVアニメ「休日のわるものさん」のエンディング主題歌を担当。オルタナティブな轟音と美しいメロディと抒情的なリリックで、どこか懐かしさを感じさせる楽曲は、10~20代のみならず、幅広い層のリスナーから支持されている。
■公式HP:https://whiteluck-records.com/
■公式X:https://twitter.com/glasgow_jpn