Kelman Duran 『Black Genesis/ Blues According to Lightning/ For Scorpio Lovers (Mixtape)』
LABEL:Self Released
ビヨンセの楽曲プロデューサーでも知られるドミニカ共和国出身のKelman Duran。彼はあらゆるプラットフォームにエディットやデモ、あるいはVineくらいの尺のビデオを日記のようにアップする(そして消すこともしばしば)。今回、Bandcamp上で視聴できるのも、1分にも満たない楽曲から2021年リリースの『Night In Tijuana』収録曲のエディットまで、ごった煮15曲入りミックステープ。全体を通して彼が得意とするレゲトンは後退し、荘厳なアンビエントにコラージュやサンプリングで上から塗りたくったような楽曲が多い印象。しかし通して聴くと、尻上がりに緊張感が高まる展開で、そのクオリティは非常に高いことがわかる。彼の遊び心が散りばめられているこのミックステープはBandcampオンリー、収益はチャリティに回すそう。
Al Wootton『River Songs』
LABEL:TRULE
1月末のOltrefuturoによる『Aural Deception』も素晴らしかった〈TRULE〉。今回はレーベル・ボス、Al Woottonの最新作をご紹介。なんといっても先行リリースされていた“Xana”のズブズブさたるや。ポリリズムなパーカッションとモジュラーシンセの重層的な絡まりで、霧がかった熱帯雨林を探検しているかと錯覚してしまう。そして嬉しいことに、まだ冒険は終わらない。ダブ成分多めの催眠系“Tone Circle”で完全に後戻りできなくなると、前方不覚のままひたすら河を突き進むかのような“River Song”、そして軽快なリズムが光る“Hechicera”で一筋の光が差し込んでくる......。と、ややストーリー仕立てになってしまったが、圧倒的なサウンドスケープでもって、たしかな実力を見せつけてきたAl Woottonが旅先案内人の奇妙なトリップであった。
V.A『Fast Fists Fest』
LABEL:ANSIA
Piezo主宰〈ANSIA〉の7番がリリース。毎度のこと耳が気持ちいい多彩な音使いと、変則的なキックとベースの配置で粒だったトラックを輩出する本レーベルだが、今回は5組のアーティストがフィーチャーされたレフトフィールド・ジューク回。Awo Ojiji改めToupaz、本家シカゴからはEQ Why、エジプトのHassan Abou Alamに加え、日本からは昨年末に台湾にてKush Jonesと共演したOyubi、〈GORGE.IN〉や〈OMOIDE LABEL〉からのリリース経験をもつY.a.M.Aの2名も参戦。カチアゲからの緩急が癖になるToupazの“Bona Fide”、歪んだガバキック(?)ながら弾力感がたまらないOyubiの“Tomy’s Siren”、ベースラインがひたすら気持ちいいY.a.M.Aの“Vroom”などなど、高クオリティなトラックが揃い踏み。リーサルウェポンとして忍ばせておくべし。