Jane Remover 『Census Designated』
dltzk名義でリリースされた前作『Frailty』ではクィアである自身の10代の青春録を綴り、2020年より熱を上げるデジコア界の代名詞として大きな注目を集めたジェーン。しかし彼女は新型のカテゴライズにも属したくないというかのように、新名義初のアルバムリリースとなる本作では弾き方を覚えたばかりのギターを全面に取り入れ、エレクトロからマイブラを代表とするノイジーなシューゲイズ・サウンドへ大きく舵を切った。そこへエモ、スクリーモ、ブラックメタルといったヘヴィーな音楽要素を、心の叫びを模すように大胆かつ鮮やかにコラージュしていく。「自分らしく生きたい」という渇望が刻み込まれた鮮烈な10曲は、言葉による激励や寄り添いよりも説得力のある”希望”を我々に与えてくれるようだ。
Holy Fawn 「Glóandi」
米アリゾナ州の4人組バンド、Holy Fawn。2015年にリリースしたデビュー作品『Realms』のLP化にあたって、同作品収録の楽曲を基盤から再録することに。Alcestを彷彿とさせるブラック・メタルとシューゲイズが融合したヘヴィネスでダークなサウンド、そして叙情的で耽美な世界観が元より印象的だったこの楽曲だが、轟音と静寂のコントラストはより明瞭となり、凶暴なウォール・オブ・サウンドはより圧を増して君臨する。何といっても自らが”ラウドでヘヴィでプリティ”と称するたっぷりのノイズは、浴びるうちにどんどん安らぎとなってリラックス効果まで感じるに至る。彼らはツアーを終えて制作期間に入るとのこと。今年はこの曲のみのリリースとなりそうだ。
星野源 「LIFHTHOUSE
放送開始後から大きな話題を呼んだ、Netflix制作の星野源とオードリー若林正恭によるトーク番組『LIGHTHOUSE』、そこでのトークで得たインスピレーションをもとに星野が制作した5曲を音源化。売れない時代を過ごした阿佐ヶ谷・高円寺、未来の見えなさに燻る日々、孤独との長い付き合い。2人に共通する苦い記憶と野心を、星野らしいファンクやジャズとポップの融合と弾き語りで音楽へと昇華。オールナイトニッポン55周年シングル以来のコラボとなった”Orange(feat. MC. waka)”は、星野の言葉に奮起して一夜で大部分のラップ詞を書き上げたといい、ムーディーなトラックの上で囁く星野の歌声とリズム良く刻まれる若林の日本語ラップが心地良くも痺れる1曲に。ルイス・コール参加のOP曲は製作途中とのことで完成が待ち遠しい。