“あうん“を作れることはこのバンドの強み
──なるほど。そして今回は4人全員で作った曲が“あうん“と”湿気っている“の2曲で。“あうん“はどんなふうに作りましたか。
長屋:全員の参加の仕方もいままでと違くて複雑で。いままで4人で制作した“Mela!“(アルバム『SINGALONG』収録)とか“キャラクター“(アルバム『Actor』収録)は、先にメロディーまでをpeppeと真吾が担当して、歌詞を私と(小林)壱誓がっていう感じだったんですけど、今回は「全員で作りたいね」って話はありつつも、「また違う作り方をしよう」っていう話が上がっていて。それで、“あうん“はオケから作ったんです。オケだけを作るっていうのがバンドとして初めての試みで、もう本当にどうとでもなる状態からスタートしましたね。
──新しい試みだったと。
長屋:最初のテーマとしてふたりで歌えるものにしたいって壱誓が言ってて、そういうのがバンド内でできるのは私たちぐらいなんじゃないかっていう。フィーチャリングじゃなくっていうのも大きなテーマとしてありました。メロディーも、スタジオにみんなで入ってこの曲を延々流しながら歌詞もその場でちょっとはめたり、その場で作るみたいな作り方も一旦したんですけど、はじめてだったのでうまくまとまらず……。なので、オケを先にレコーディングしたんです。すぐに歌詞も入れる予定だったんですけど、うまくまとまらなくて、実はちょっとお蔵入りになりかけたんです。でも曲がまだ出揃ってない時に、「あと1曲新曲入れるけど、どうする?」っていう話になったときに壱誓が「もう1回あの曲(“あうん“)にトライしたい」って言ってくれて。それでメロとか歌詞も別角度から入れ込んでようやく完成したんです。この曲はなかなか難産な曲でしたね。
──小林さんは、“あうん“を形にしたかったんですね。
小林:そもそも僕がやりたいって言ってこの曲がはじまったんですけど、素敵なものにしたいっていう理想が高すぎて自分がついていけなくなってしまったんです(笑)。まあ長屋とふたりで歌うっていうのもあるし、やっぱり長屋が歌っていて違和感のない曲じゃないといけないっていうのがあったりして。そのなかで男女で歌うってなんかそれだけで意味合いができてしまいそうなところをどう掻い潜ってみんなが共感してくれる曲になるのか? みたいなことを3ヶ月ぐらい考えてたんでしょうね。それでようやくできました。

──こういう曲を全員で作れるバンドっていないんじゃないかなと思います。
長屋:本当になかなかいないなあと思います(笑)。強みですよね、このバンドの。
──全員で作ったもう1曲は“湿気っている“ですね。
長屋:さっきの話に戻ると、これもストックから発掘された曲で。8年前ぐらいの曲なので、アルバムのなかでも最古の曲ですし、リョクシャカの歴史においても結構古めの曲です。スタジオにみんなで入って曲作りをしようっていうやり方をして作っていた曲で、壱誓の歌詞がまずありました。当時から自分たち的にも新鮮さと懐かしさみたいなものを同時に感じていて、気に入ってた曲だったんですよ。デモ音源化とかライヴでやったことはないんですけど、YouTubeにちょっとだけ演奏した動画を載せていた時期があるので、もしかしたら知ってくれてる方もいらっしゃるかもしれないです。その当時から8年経って聴き返してみると、歌詞を書いた壱誓的にも、ちょっと違和感がある部分もあったみたいで、歌詞や構成、曲名も変わりました。
──ある意味オーセンティックなポップスでもあるので演奏に力量が必要なのかなという。
長屋:抜く力が要るのか──言葉として矛盾してますけど、抜く力が要る曲だなって思いました。
──8年前の時点で「数年経って意味が追いついた」って歌詞だったことに驚きが。
小林:そうなんです。それもあって改めてやりたくなったというのもあるんですけど。
──いまのことだと思ってました。
長屋:そう思ってもらえるならすごく嬉しいですね。自分たちにとっては懐かしい曲でもあるんですけど、やっぱね? 新しく聴く人にとっては新鮮な曲っていうのが不思議な感覚で。
小林:そう思うとタイムカプセルみたいな曲ですね。
