feeble little horse 『Girl with Fish』
2021年に発表したデビュー・アルバム『Hayday』が一部界隈でカルト的人気を獲得し、その功績からビッグ・シーフらを抱える〈サドル・クリーク〉に所属するまでに至った米ピッツバーグの4人組バンド。セカンド・アルバムとなる今作は、バンドによるセルフレコーディング、セルフプロデュース作品で、DIYな音楽にこそ生まれる、スリリングで予測不可能な展開と聴き手にまでジョイが伝わってくるほどの純粋な音楽愛が詰まっている。フォーク・ロックをベースとしながら、90年代初頭を想起させるオルタナティヴなノイズ・サウンドを全面に鳴らし、奇想天外なアイデアでオーソドックスを打ち破る。なかでも穏やかな曲入りから想像もできない展開が待つ「Pocket」は必聴。
Flasher 「In My Myth」
ワシントンのインディー・ロック・デュオによる最新EPは、個性的なポップ・センスとユーモアに溢れ、聴き手が振り回されるくらい自由で優雅な4曲を集約。健やかな歌声と反比例するようにギターはより変則的かつ変態的で、前段の曲展開に関係なく奇怪なノイズの発振やスロウダイヴのような恍惚とするまろやかな空間サウンドが突如訪れる。そのままご機嫌なポップスにすることもできるメロディ・ラインを、色違いなサウンド・テクスチャーと欲張りな実験的アプローチで歪つに仕上げてくるのだ。なかでも「Motive」は『Isn’t Anything』あたりのマイブラを強く彷彿とさせるオルタナ / グランジ直結のパワー系シューゲイズ・サウンドで、その手のファンにとってはたまらない楽曲。私的2023年ベスト・オブ・シューゲイザー・トラックです。
Midwife/Vyva Melinkolya 「Orbweaving」
自身の音楽性を“HEAVEN METAL”と公言するマデリン・ジョンストンことマルチ・インストゥルメンタリスト、Midwifeと、エンジェル・ディアスによるソロ・プロジェクト、Vyva Melinkolyaによる共同作品。Grouperに繋がるアンビエント・フォークの深遠なる魅惑と、The TepescopesやSpace Ecoのようなダーク・シューゲイズの邂逅。さらにスロウコアの寂寞感までまとうその神秘的な音像は、本作のキーワードである絶望・孤独・自然界で生まれる崇高な恐怖といった脅威の対象を美しく、尊いものとして映し出す。コロナ禍で出会い、互いを助け合ってきたという二人の絆や彼女らの精神的親和性の高さもひしひしと感じる。