桑田さんに“烏帽子岩“とかだけでいいから歌ってほしい
──この間シングルのカップリングとして新たに2曲(“柳小路パラレルユニバース” / “日坂ダウンヒル“)ができて、不思議な増え方ではあります。
後藤:“石上ヒルズ“とかは早めに録っちゃったもんね。
喜多:ね。2年前にやってたね。
後藤:『プラネットフォークス』の前に出したい気持ちはそこでちょっとあって。
──ああ、なるほど。“石上ヒルズ“の歌詞「3年で化石になった / スマホの端まで」って、やっぱりこの感覚は少なくとも2010年代以降ですね。
後藤:なんか「“スマホ“って出てきた、どうしよう?」と思って。「まあいいか。サーフだし」という気持ちで(笑)。
──登場人物の世代感とか時代感とかっていうのも自然と変わってきますか。
後藤:そうですね。湘南へのまなざしもね、15年分角度が変わってくるっていうか。当時はもう少し青春との距離が近かったからね。15年離れたら相当離れるもん。
──それに加えて、湘南というとひとつはサザンオールスターズなわけですけど、アジカンの90年代デビューのバンドの思想というか、違うものがちゃんと表されてる感じがしたんですね。
後藤:なるほどね。確かに。ちょっとタッチが変わってきてるかもしれないですね。その海にまつわる物語の書き方っていうかね。俺ならではなのかもしれないけど。
──実際、楽曲も違うわけだし。ジャンルも違う、というのもありますが。
後藤:うん。でも果敢に桑田さんに絡みに行くっていうね。かまって欲しくてしょうがないみたいな。「届いてくれ!」って。
──確かに“西方コーストストーリー“の歌詞にも、サザンの馴染み深いワードが登場しますし。
後藤:桑田さんに“烏帽子岩“とかだけでいいから歌ってほしいよね?
一同:(笑)。
後藤:あの声のしゃがれ方の感じで(笑)。
──そこだけコラボみたいな(笑)。
後藤:崩れ落ちるな俺、その場で(笑)。感動で。「作ってよかった〜(涙)」。
喜多:それで完結だね。
──意外です。
後藤:全然そんなことないですよ。リスペクトしかないですね、サザンに関してはね。
──あとは“車メインの生活の人の湘南“がある一方で、アジカンは電車メインっていう違いを感じたりもして。
後藤:ああ確かに。そういうことか。俺たち電車移動感ありますね、そういえば“ブルートレイン“作ったりね。クレイジーケンバンドの横浜は車の横浜だもんな。
喜多:車感が一切ないですね、アジカンは。
後藤:自転車ぐらい。“バイシクル“出てくるな、そういえば(笑)。
──新曲について伺いたいのですが、早い時期に書いていたという“石上ヒルズ“はなんというか、アメリカンロックなテイストですね。
後藤:自分でアホだなと思いながら作ってましたよ(笑)。アウトロで石上ヒルズって言いたいだけっていう。“石上ヒルズ〜“って最高に気持ちいい。ないけどね、そんな建物。一軒ぐらいはあるのかな、アパートとかで。
喜多:なんとかハイツ的なね。
──これは石上駅であったりとかその界隈みたいな感じはあるんですか?
後藤:どうなんでしょうね。なんか地図とか見ながら作った気が。名所も海もないけど、川があるから、まあ海の匂いが全くないわけなんじゃなかろうという感じで。この先に海があるっていうことで感じられるんじゃないかな、そういう川の流れ方とかかなっていう気持ちで作ったんですけどね。
──だから歌詞の中に汽水域がでてくる?
後藤:そうそう。最初はボラがさかのぼっているイメージだったんですけど、平家とかそういうのが出てくるから、「これ亡霊にした方がおもしろいな」と思ってボラだったけど亡霊に変えて。そう、だから本当は汽水域のボラがさかのぼってんだけど、亡霊に変えちゃった。落武者とかをうっすら登場させないとなと思って。石上にいるかどうかは知らない(笑)。
──(笑)。アメリカンハードロックとグランジを両方感じる曲調に平家の落武者。喜多さんのギターもいいですね。
喜多:みんなが間奏でちょっとニルヴァーナの“スメルズ・ライク・ティーン・スピリット“っぽいことやってるんで、僕は同じニルヴァーナの“ハート・シェイプド・ボックス“っていう『イン・ユーテロ』に入ってる曲のサビのメロディをギターソロで弾こうと思ったんですよ。いま、はじめて言いますけど。
後藤:全然気づかなかった(笑)。いま知ったし、似てもないよ。
伊地知:言われてもわかんない。
──若干のやさぐれ感というか。
喜多:そうですね。いろんなオマージュ、愛とリスペクトが詰まったりして。そういうのが気軽にできるのが『サーフ』のいいところかなっていうのがありつつ。
