B-Lovee 『Sorry 4 The Wait…』
B-Loveeはメリーランド州生まれ、ブルックリン育ちの現在22歳。昨年、Wayne Wonderの代表曲「No Letting Go」まんま使いのドリル・ソング「IYKYK」で特大ヒットを飛ばした期待株です。厳密に分類すると彼はブルックリン・ドリルというジャンルに属するアーティストではあるのですが、最新作ではジャージー・ドリルにも果敢に挑戦。ジャージー・クラブの代名詞的サウンド・エフェクトであるベッド・スプリングを多用した“Freak Freak”、ラテン風味を注入した「Tiro」、Nellyによるクラシック「Dillenma」を流用した「PDL」、やはりアップカマーである2Rareを客演に迎えた「Act Bad」と、作品の半数をジャージー・ドリルが占めています。USにおけるドリルのメッカであるブロンクスの、しかも最注目の若手がこれだけジャージー・ドリルを取り入れたという点に、ドリルとの相性のよさ、そしてこのサウンド・スタイルの凝望ぶりが伺えます。
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Bad Bunny「WHERE SHE GOES」
先ごろ開催されたUS大規模音楽フェスティバル〈Coachella 2023〉の初日ヘッドライナーとして鮮烈な印象を残したプエルトリカン、Bad Bunnyも先日発表したシングルでジャージーを取り入れています。楽曲の制作者はこれまでもBad Bunnyの多くの作品を手がけてきたブルックリンのプロデューサーMAG。この曲はBPMが140台とジャージー・ドリルというよりジャージー・クラブからの影響が強いのですが、アフリカ系アメリカ人以外のコミュニティでもジャージー発祥のビート・スタイルが侵食してきている好例かなと思い取り上げました。MVにはFrank OceanやLil Uzi Vert、Dominic Fikeらもカメオ出演しています。
Jim Legxacy 『homeless n*gga pop music』
ジャージー・ドリルの影響はUKにも波及しています。なかでもサウスロンドンの俊英ラッパー/プロデューサー、Jim Legxacyの3作目となる本作はより高い自由度を持ってこの様式を押し広げた意欲作です。メランコリックで内省的な世界観の奥から覗くジャージー・ドリル・キック。いわゆるパーティー・ミュージック的な側面が取り沙汰されがちですが、このようなアーティストの作品も生まれ得るという例を挙げたく紹介した次第です。ジャージー・ドリル以外にもナイジェリアの血統を持つ彼らしいアフロビート・スタイルの楽曲も多く採用していますが、不思議と作品全体の統一感は損なわれていません。