Cola 『Deep in View
カナダのポストパンク・バンド、Oughtの元メンバーが主となって結成された3人組バンドのデビュー・アルバム。コロナ禍の遠隔での制作でありながら、バンドの化学反応を楽しみながら仕上げたという本作は、各々のグルーヴを最大限に生かすシンプルなロック・サウンドが心地良い。ギターの重ね録りによる高揚感誘うハーモニーに気怠げにメロディをなぞるヴォーカルと、ソニック・ユースとザ・ストロークスの影響をダイレクトに受けたような無骨さと繊細さが織り交じるアンサンブルは、華やかな演出こそ少ないが、一音一音のささやかな響きに耳を澄ませてみると、味わい深さが滲み出てくるよう。シンプル・イズ・ベストの醍醐味を感じる作品。
Bigger Boot 『A Fork or My Fingers』
頭の理解が追いつかないものにほど、えも言われぬ感動と興奮を味わうもの。言葉を並べることすら野暮なことではないかと思うくらいに、衝撃を受けたのがこの作品。異種な展開を切り張りしてコラージュし、数多の音が怒涛の如く押し寄せてくる。P-MODELをより過激にしたようなクレイジーな印象もあれば、パッション・ピットをダークサイドへ傾けたような歪んだエレクトロ・ポップのようでもあり、壮大なダンス・ミュージックなようでもある。1曲の中で幾度も情緒が乱れるかのように、急激な展開に振り回されるのが何とも癖になる。オーストラリア在住でこれがファースト・プロジェクトであること以外、彼にまつわる情報がないというのもまた謎めいていて良い。
Ethel Cain 『Preacher’s Daughter』
アメリカのSSWによるデビュー・アルバムは、世代を超えるトラウマや宗教、薬物、セックス、トランスジェンダーといった生々しいキーワードを詰め込み、自身の過去を一本の映画のように紡ぐ13曲を収録。アメリカン・ゴシックの思想を基盤に、ローファイ、アンビエント、カントリー、ドゥーム・メタル、オルタナ、エレクトロ・ポップと幅広い音楽性に、重々しく壮大なサウンド・スケープ、高いソングライティング力、そしてラナ・デル・レイを連想させるダークでメランコリーな雰囲気に加えて、テイラー・スウィフトのようなハートフルで力強い一面も併せ持つ美しい歌声を披露するなど、デビュー作とは思えないほどのハイクオリティさと彼女のポテンシャルの高さに驚くばかり。今後の活躍が見逃せない大型新人だ。