South Penguin 『R』
3年ぶりのセカンド・アルバム。以前から評判は耳にしていたもののアルバム単位でしっかり聴いたのは初めて。クルアンビンやベンチャーズやモーラムを思わせるサイケデリックなギターによく歌うベース、踊らせるというよりは揺らすようなグルーヴが心地よくて延々と聴ける。“gadja” でトーキング・ヘッズの “Born Under Punches (The Heat Goes On)” を引用しているが、『リメイン・イン・ライト』よりもその前の『フィア・オブ・ミュージック』や『モア・ソングス』と共鳴するものを感じた。客演したDos Monosは時間も空間も自在に往来する言葉選びが閃き満点。1曲めの “vitamin” にも没 a.k.a. NGSが参加していて、仲のよさをうかがわせる。
さとうもか “舟”
楽しい経験をすると「ずっと忘れたくないな」と思うことがあるが、その記憶は良くも悪くも時が経つほどにだんだんと薄れていってしまう。忘却は人が生きていくために必要な能力だと言う人もいるが、さとうはそれをよしとせず、あえて「悲しみよ 消えないで/私を忘れないで」と歌う。4年前に書いてライヴで大切に歌ってきた曲で、時間の経過に伴う自他の関係の変化、そこから生じた感情を驚異的に高い解像度で綴った歌という意味では “melt bitter” や “Woolly” や “歌をとめない” にも通じる。恋愛歌に終始せず、こうした普遍的な情緒を歌えるのはこの人の真骨頂。さとうもかバンド from 岡山のアレンジも、曲を包み込むように優しく温かい。
竹内アンナ 『TICKETS』
2年前の『MATOUSIC』も傑作だったが、この2ndアルバムでは大人の落ち着きをまとい、風格さえ漂わせている。シャレの利いた “我愛me” をはじめ “GOOD FOR ME” も “+imagination” も “No no no (It's about you)” も抑圧的な世相にサラリと異論を唱えつつ、その手際が終始ポジティヴで涼しげなのがこの人ならでは。“手のひら重ねれば” “一世一遇Feeling” などのラヴ・ソングも含めて、グローバルな肯定のメッセージを日本語でこうもナチュラルに歌い上げられるのは技術か世代か人徳か。弾き語りを軸にした “いいよ。” やAFRO PARKERとの共作 “Now For Ever”、イントロにアウトロと、あらゆるピースがきれいにはまり、流麗な展開を堪能させる。