このバンドでまだまだ見たい光景がある

──「Trust Me」の歌い出しの「生きる才能が欠落してる 病んだ僕たちは今日も歌ってる 救いなんて無い それでも良いさ 夜が明けるまで 手を繋いでいよう」という歌詞はART-SCHOOLの紹介文にしても良いくらいに象徴的な歌詞だなと思いました。
木下:そうだね。歌詞を書くノートに「生きる才能が欠落してる」って書ききった時は「これが俺なんだ!」と思いました。もうちょっとうまく生きるコツや才能があったはずで。
──……あったんですか?
木下:いや、思い返したらないんだよね(笑)。ポケットティッシュをただ配るだけのバイトも3日ぐらいで「もう来なくていいから」って言われて。でも、そういう人たちも多いと思うんだよね。息苦しい世の中じゃないないですか。
──図太くないと生き抜けない世の中になってきてるところもありますよね。
木下:うん。いろんなことをいちいち気にしてたらもう死んじゃうみたいな世界観じゃないですか。結構地獄だなと思ってて。そう感じてる人にもART-SCHOOLの音楽が響いてくれれば嬉しいよね。
──だから「救いなんて無い それでも良いさ」という歌詞で終わらず「夜が明けるまで 手を繋いでいよう」という歌詞が付くんだなと思いました。「一人じゃないんだよ」という気持ちの表れなのかなと。
木下:確かにそうだね。ART-SCHOOLは「嫌なことばかりでもうしんどいな。でもね」っていうその「でもね」の部分を大事にしているので、それが歌詞に表れてるんだと思います。
──ラストに収められている「Forever And Again」では永遠にあなたを失っていて、同時に永遠にあなたのことが嫌いということが歌われています。過去にも『LOVE/HATE』(2003年)というアルバムがありましたが、改めてラブとヘイトは木下さんの中でどう繋がっているんですか?
木下:ラブとヘイトは表裏一体で同義だと思ってます。だから、ミス(失う)もヘイトも僕としては一緒というか。そういうことを感じるアーティストが好きなんですよね。「1985」もキラキラしててかわいさや眩しさがあるけど、空っぽだなっていう感じがあると思うのね。それは狙ってるところだし、そういう矛盾をいくつも孕んでるのが人間だと思ってるから。だから「I miss you forever」も「I hate you forever」も僕の中では「人間ってそういうもんだよね」っていう意識で歌ってます。
──それは音楽と出会った時から持ち続けている感覚なわけですよね。
木下:そうだね。プリンスとかメタルとか、出会った時からキラキラしてるけど同時にめちゃくちゃ空虚さを感じてたよね。ガンズ(・アンド・ローゼズ)とかモトリー・クルーもかっこいいけどめっちゃ空虚だと思ってて。キラキラしてる女の子のことを歌ってるけど、「なんでこんな惹かれるのかな」って思ったら「あ、空っぽだからか」と。それはグランジやオルタナのアーティストに対しても思った。ダイナソーJr.とかニルヴァーナとかレディオヘッドとか、すごくポップだけど巨大なポッカリ空いた穴があるように感じてて。幸せそうでも満たされてないハッピーサッドみたいな表現が好きなんだよね。
──3月に開催された結成25周年ライヴでは、MCで戸高さんも「決して簡単な道のりじゃなかった」と言ってましたが、大変なことがたくさんあった中、25年間バンドが続けられた理由は何だと思いますか?
木下:本当にね、支えてくれたファン、それからスタッフ、それからメンバーに感謝だよね。それが何ひとつ欠けても成立してなかったと思うし。付いてきてくれてよかったって思いますね。
──2011年には解散に向かった時期がありました。最初戸高さんが抜けると言い出して、続けて前のリズム隊のふたりが抜けると。そこで思いとどまって戸高さんを引き留め、バンドが続くことになったのは今の良い状態を考えると本当に良かったと思うんですけど。
木下:そうだね。その時は「俺はこのバンドでまだまだ見たい光景があるんだ」って思ってたよね。
──そこから15年ぐらい経って、その景色は見れているんでしょうか?
木下:その〈Zepp Shinjuku〉での25周年ライヴにはたくさんお客さんが来てくれて、インディー・ロックのバンドを25年続けるとこういう景色が見れるのかって思いましたね。あと、POLYSICSとsyrup16gが出てくれた〈SHIGONOSEKAI〉(木下が45歳の誕生日を迎えることを記念して行われたイベント「KINOSHITA NIGHT 2023」~SHIGONOSEKAI~)の時に観た光景も美しいなと思った。地獄のようなタイトルのイベントだったけど(笑)。そういう瞬間があると、「次も頑張ろう」とか「次に繋がる作品を作ろう」っていう気力になるよね。嬉しかったです。
──「まだまだ見たい景色がある」という気持ちももちろんわかりますが、ART-SCHOOLじゃなくなった木下さんは一体どうなるんだろう?という気持ちもあります。
木下:それはね、単なるサブカルっぽいおじさんになるんだと思う(笑)。
──(笑)。ここ数年の素晴らしいライヴを見る度に、新作を聴く度に、続いて良かったと思います。
木下:うん。最近のART-SCHOOLは割と安定していて多幸感も感じられると思うんだけど、こういう嬉しい状況は僕自身初めて経験したことで。プロの人は安定したライヴをやることをちゃんと続けているわけで、本当に偉いなと思った。僕は最近その大切さに気付いたところだから。ARTはずっと壊れそうな感じで続いていったからね。実際に壊れそうだった時期はあるし。今でもそうじゃないかって言ったらそうなのかもしれないけど。でも、そういうバンドが続いてるっていうことは本当に素晴らしいことだと思う。
──7月からはツアーが始まります。どんなツアーになればいいと思っていますか?
木下:『1985』の新曲を皆さんに聞いてもらう時間が結構あるので、それを聞いてもらって楽しみにしてもらいつつ、歴史が長いのでたくさん曲はあるけど、なるべくみんなが好きであろう曲を選んで周れたらいいなって思います。良いツアーになったらいいですよね。
──次は30周年ですね。
木下:俺、何歳になってるんだっけ(笑)。
──51歳ですかね。
木下:……怖いな。そんな怖いこと言わないでよ(笑)。

編集 : 石川幸穂
冷たくもあたたかい、イノセントなサウンドを最強の布陣で
フォトギャラリー
撮影 : 山川哲矢
ライヴ情報

ART-SCHOOL 25th ANNIVERSARY TOUR 2025「1985」
7/5(土) 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
open 17:00 / start 17:30
INFO:GIP(https://www.gip-web.co.jp/t/info)
7/06(日) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
open 17:00 / start 17:30
INFO:ディスクガレージ(https://info.diskgarage.com)
7/12(土) 岡山 YEBISU YA PRO
open 17:00 / start 17:30
INFO:YUMEBANCHI(086-231-3531 / 平日 12:00~17:00)
7/13(日) 京都磔磔
open 17:00 / start 17:30
INFO:GREENS(06-6882-1224 / 平日 12:00~18:00)
9/07(日) LIQUIDROOM
open 17:00 / start 18:00
INFO:ディスクガレージ(https://info.diskgarage.com)
9/20(土) 名古屋 CLUB QUATTRO
open 16:45 / start 17:30
INFO:JAILHOUSE(052-936-6041 / 平日 11:00-15:00)
9/21(日) 梅田 CLUB QUATTRO
open 16:45 / start 17:30
INFO:GREENS(06-6882-1224 / 平日 12:00~18:00)
9/23(火祝) 福岡 INSA
open 17:00 / start 17:30
INFO:BEA(092-712-4221 / 平日 12:00~16:00)
10/4(土) 札幌 SPiCE
open 17:00 / start 17:30
INFO:WESS(info@wess.co.jp ※メール対応)
【チケット】
前売り:¥5,500- (税込 / ドリンク代別)
学割チケット:¥4,500- (税込 / ドリンク代別)
一般発売日:
5/31(土)10:00 ※7月開催の4公演 7/26(土)10:00 ※9~10月開催の5公演
チケットぴあ / ローソンチケット / イープラス
写真展情報

ART-SCHOOL 25th Anniversary Photo Exhibition
Our wounds forever
Photography by HIROHISA NAKANO
2025年6月5日(木)〜6月15日(日)
POOTLE(新代田FEVER内)
平日17:00〜23:00 / 土曜日12:00〜23:00 / 日曜日12:00〜22:00
※6月7日はトークイベント開催のため17:00〜23:00、最終日6月15日は18:00まで
INFO:新代田FEVER (03-6304-7899)
【トークイベント】
〈our wounds forever of ART-SCHOOL〉
2025年6月7日(土)
1st:13:00〜14:00(12:40入場開始) ※チケット完売
2nd:15:30〜16:30(15:10入場開始) ※チケット完売
出演:木下理樹・クボケンジ(メレンゲ)・中野敬久
価格:2,000円+ドリンク代(600円)
ART-SCHOOL結成25周年記念トリビュートアルバム発売決定

ART-SCHOOL 25th Anniversary Tribute Album『Dreams Never End』
2025年8月20日(水)発売
〈参加アーティスト〉
Age Factory
ASIAN KUNG-FU GENERATION
cinema staff
DOPING PANDA
Helsinki Lambda Club
indigo la End
LOSTAGE
MO'SOME TONEBENDER
MONOEYES
PEDRO
People In The Box
syrup16g
The Novembers
ストレイテナー
リーガルリリー
(アルファベット・50音順/敬称略)
ART-SCHOOL の特集記事はこちらから
ART-SCHOOL のほかの作品はこちらから
PROFILE : ART-SCHOOL
2000年結成。
同年9月、1st アルバム『SONIC DEAD KIDS』をリリース。この頃より全国区でのライブを展開するようになり、美しく純度の高いポップな曲調と轟音ギター、そして木下のあどけなく危なげなボーカルで表現する独特の“うた”の世界観を多数のオーディエンスに印象づけ話題となる。何度かのメンバー・チェンジや活動休止を乗り越え、2012年、現在の「第3期 ART-SCHOOL」としての活動を開始。
2015年、所属事務所〈Sony Music Artists〉の契約が満了すると共に活動休止。同年5月、木下理樹が音楽、ライブ制作、アートワーク・デザイン、 フォトグラフ、アパレルなどクリエイティブで柔軟な発想を持った各ジャンルのスペシャリストが集結したチーム「Warszawa-Label」の設立を発表する。
2015年12月31日(木)〈COUNT DOWN JAPAN 15/16〉ギャラクシーステージで復活ライブ、2015年2月13日(土)新木場スタジオコースト ワンマン「Easter」にて本格的に活動再開した。2016年5月18日(水)に 8th Album『Hello darkness, my dear friend』をリリースし、全国11箇所のツアーを開催。
2017年1月25日(水)B SIDES BEST『Cemetery Gates』をリリース。2017年7月26日(水)配信限定シングル『スカートの色は青』をリリース。2018年3月7日(水)2年ぶりのオリジナル・フル・アルバム『In Colors』をリリースし、全国ツアーを開催。
2019年春、木下理樹の体調不良により療養期間に入る。
2022年7月13日(水)生命力溢れる4曲を収録した『Just Kids .ep』で遂に活動再開!
同年8月24日 LIQUIDROOM ワンマン公演から、やぎひろみがライブ・サポート・ギターを務める。
2023年6月14日(水)10枚目のフル・アルバム『luminous』を発売。
2025年結成25周年を迎え、3月16日に25周年キックオフ・ライブ「Our Beautiful Things」を〈Zepp Shinjuku〉で開催。
5月28日にミニ・アルバム『1985』をリリースする。
■ART-SCHOOL 25th Anniversary Website : https://www.art-school.net/25th/
■Official Site : https://www.art-school.net
■X : @ART__OFFICIAL
■Instagram : @art__official_
■YouTube : @ARTSCHOOLJP