未熟な悪魔たちからの革命的なメッセージ──DEVIL NO ID、待望の1stアルバムをリリース

3人組ガールズ・ダンス・クルー、DEVIL NO IDが1stアルバム『Devillmatic』をリリース。2016年9月の1stシングル・リリースから時間をかけて丁寧に、かつアグレッシブに活動してきた。本アルバムには上田剛士(AA=)、TeddyLoidが楽曲提供、表題曲のMVでは俳優の市原隼人が監督と務めるなど、業界内からも注目。ビジュアルもスキルも現在進行中で高めつつある彼女たちの魅力をアルバム・レヴューで紹介する。
待望の1stアルバム!
DEVIL NO ID / サバイバーDEVIL NO ID / サバイバー
REVIEW : DEVIL NO ID
“DEVIL NO ID"の革命が、今始まる──。公式サイトにアクセスすると、こんな挑発的なワードが目に飛び込んできた。DEVIL NO IDとは、2016年9月、沖縄ストリートシーンに突如現れたガールズダンスクルー。ボーカルのkarinとhana、ラッパーのmionによる3人組。彼女たちが起こそうとしている「革命」とは。

デビュー曲「EVE -革命前夜-」をリリースしたのは、約2年半前にさかのぼる。一見かわいらしいルックスだが、そのポップなビジュアルからは想像できないほどの本格的なEDMサウンドは、一聴しただけでその世界へと引き込まれてしまう。さらに、そのサウンドに乗せて繰り出される洗練されたクールなダンス。どこを切り取っても、高いクオリティを誇っている。
しかしそのグループ名は“IDの無い”=“身分証の無い未熟な”悪魔たち。自分たちをあえて「未熟」と称することで、既存のカルチャーやシーンにアンチテーゼを投げかけているようにも思える。実際、彼女たちはミュージシャンだけでなく、様々なジャンルのクリエイターとコラボし、新たな価値を創造すべく、実験的な試みを繰り返していく。
楽曲には上田剛士(AA=)やTeddyLoidといった、世代を超えたアーティストたちが参加。「マンガプロジェクト」も並行して進められ、シングルには上坂すみれをはじめとしたアートワークや企業広告などを手がけるクリエイティブチーム「POPCONE」がプロデュースしたマンガが封入された。MVも楽曲ごとに様々なアプローチがなされ、4thシングル「BEAUTIFUL BEAST」では俳優・市原隼人が監督を担当。市原が音楽MVの監督を務めるのは、同作が初めてのことだった。

これらのラインナップを見ると、DEVIL NO IDは音楽シーンだけでなく、日本のポップカルチャー全体をターゲットとしているように思えてくる。
こうして2年半の間に、断片的に紡がれてきた彼女たちのストーリーだが、今回ついにその全貌が明らかにされる。満を持して、1stアルバム『Devillmatic』が完成したのだ。
アメリカのラッパーNASのデビュー作を想起させるタイトルがつけられたアルバムの1曲目を飾るのは、上田剛士が楽曲提供& サウンドプロデュースを務めた「サバイバー」。ここでは目まぐるしく展開する破壊力抜群のサウンドが蠢く中、「今日も見えないピストルで撃ちまくる」といきなり”宣戦布告”する。
同じく上田剛士が手がけた、続く「BEAUTIFUL BEAST」では、ラウドなサウンドに乗せたエモーショナルなスクリームとともに、「良い子はおしまい」「教科書より大事なこと 目覚める血はBEAST」と感情をむき出しにする。M6「ジェネレーション反抗期」でも示しているように、そのリリックは等身大ゆえに痛烈で、攻撃的だ。
その一方で、TeddyLoidのポップセンスを惜しみなく詰め込んだ「PLAY GROUND」や、気鋭の男女コンポーザー・デュオKiWiとのコラボで制作された、おとぎ話のように遊び心満載の「かしましサバト」といった幅広い楽曲も収録されている。また「ユートピア」「RSG」といった、アルバムの後半を占めるS-kit(from GROUND-LINE)によるミディアムチューンはどれも美しく幻想的で、包容力すら感じさせる。これらの楽曲は、アルバム序盤で見せた攻撃性があったからこそ、より深く心に響くのだろう。

すべてのピースが揃ったところで、アルバムの最後を飾るのは、デビュー曲の「EVE -革命前夜-」。この曲をリリースしたときから着々と進めてきた革命の準備が、今まさに整ったと言わんばかりだ。
今後、彼女たちが仕掛ける「革命」が、日本のポップカルチャーをどれだけ掻き回してくれるのか。DEVIL NO IDが「成熟」した暁には、どんな景色を見せてくれるのだろうか。その第一歩として、このアルバムが世に放たれるのが、待ち遠しい限りだ。
なお彼女たちは「EVE -革命前夜-」で、「世界がひれ伏すウチらの時代 信じてる」と宣言している。もしかしたら当人たちはすでに、世界すらも見据えているのかもしれない。(text by 前田将博)
DEVIL NO ID 過去作品もOTOTOYにて配信中!
PROFILE
DEVIL NO ID
2016年、沖縄ストリートシーンに突如現れたガールズダンスクルー「DEVIL NO ID」(デビル ノー アイディー)。ボーカルのkarin(カリン)、hana(ハナ)、ラッパーmion(ミオン)の3人で構成される。EDM/BASS MUSIC/HIP HOP等のダンスミュージックを基盤としたサウンド、ピュアで自由、多感な歌詞、オリジナリティー溢れるコントロール不能のトガッた世界観を紡ぎだす。ミュージック、ビジュアル、ダンス、ストリート、マンガ、サブカルなどあらゆるカルチャーの垣根を越えた彼女たちの表現は、旧来のアーティストが行ってきたCDやDVDのリリースにとどまらず、SNSやマンガという形でもアウトプットされ、それをコンプリートすることでようやくDEVIL NO IDの世界観は補完できる事になる。様々なカルチャーを横断し、異色のメディアミックスを行う前代未聞のプロジェクト『DEVIL NO ID』が遂に本格始動!!
【公式HP】
http://devil-no-id.com/