こんなにかっこいい音楽をマニアックなままで終わらせたくない
――お互いの作る曲に対してどのように感じていますか?
rent：soutaはいちばん尊敬しているソングライターであり、いちばんのライバルですね。自分とインプットが大体一緒だからsoutaの作る曲は自分の好みにも合うし、自分とも近いんです。それなのに自分にまったくない発想のアプローチをしてくるんですよね。実験性とポップ性の融合、要素は一緒なんですけど、メロディの譜割りやリズム感とか根元が全然違うんです。だから新鮮だし、いろいろと刺激をもらっています。
souta：自分もrentの曲に触発されて曲を作っているので、これまでもずっと曲作りでラリーをしているような感じです。高め合えているなと感じるし、同じゴールを目指していても全然違うメロディや譜割りが出てくるのが面白いですね。自分のほうがrentよりもヒップホップを聴いていて、rentはオルタナやグランジをより多く聴いているので、自分の作る曲のほうがラップ調のメロディっぽいかもしれません。ただrentの曲のほうが歌いやすいんですよ。自分の作った曲は息継ぎする場所が全然ない（笑）。
rent：自分もそれと似た現象がありますね……。soutaが作った曲のほうがドラムを叩いていて楽しいんです。作曲の段階では自分がドラムを叩くことをほとんど考えていないので、ライヴでやってみると叩きづらくて……。今回のシングルの「MEKAKUSHI-ONI」も叩きやすくて楽しいです（笑）。自分が曲作りをしているときに「soutaの声ならこんなメロディと譜割りが合うかな」と考えているところはあるかもしれない。裏を返すと無意識のうちにドラマーである自分、ヴォーカリストである自分に対して遠慮しない曲作りをしているのかもしれないです。
――そんなおふたりの楽曲に共通しているのは、ミクスチャーで刺激的なオケとキャッチーなメロディやポップ・センスを組み合わせるところですよね。
souta：実験的で斬新な、衝撃を感じるマニアックな音楽は好きだし、これまでに聴いたことがないような音楽を作りたいんですけど、自分たちがポップ・ミュージックもすごく好きなので、それを共存させたいんですよね。こんなにかっこいい音楽をマニアックなままで終わらせたくないからJ-POPしか聴かない人たちにも伝えたいし、それを自分が面白いなと思う組み合わせで曲にしたくて。実際今までもそういうアーティストを好きになってきたので。
――そうですよね。ゲーム音楽然り、おふたりがロックにハマったきっかけであるONE OK ROCKもそういう存在だと思います。
rent：King Gnuやリンキン・パークも、それを絶妙なバランス感覚で実現させてますよね。自分たちも自分たちなりのやり方でやれたらなと思っています。
――それこそ最新曲「MEKAKUSHI-ONI」はさらに斬新さとポップさの精度を上げた楽曲だと思います。公式コメントには曲に込めた熱いメッセージが書かれていましたが、曲を作るうえではそのメッセージやコンセプトを軸にしてサウンドを構築していくのでしょうか。それとも先にサウンドを作って、それに合う歌詞を充てていくのでしょうか。
souta：自分たちは完全に後者です。音として完全に自分に作りたいものがあって、歌詞は曲を作ったご褒美として自分の個人的なことや言いたいことが書けるというニュアンスです（笑）。音は音でしかないのでどう感じるかは聴き手次第だけど、そこに歌詞が加わると、聴き手の音の解釈を狭める可能性もあると思うんです。だから慎重に、その曲が持っているワクワク感から触発された感情や、曲の持っている感情を読み取るように歌詞を書いていますね。「この曲ではこういうことを歌ったらいいかも」と見つけていくというか。
rent：Tyrkouazはオケだけのストックが50曲以上あって、リリースやライヴでやることになったときに歌詞をつけることがよくあるんです。自分の場合は曲に説明書きをつけるような感覚で歌詞を書いていますね。音楽の世界において絶対的なのは「音」だと思うし、音は聴き手のイメージや感情を刺激すると思うんです。でも歌詞は曲を書いた人が思っていることや伝えたいことが詰まっているプライベートなもので、音とは相反する存在な気もしていて。だからそのときの自分が伝えたいことと曲の世界観を補填するようなものが混ざり合った歌詞だといいのかなと思っています。
souta：「MEKAKUSHI-ONI」は今年に作った曲ですが、いざ歌詞を書くというタイミングで曲をじっくり探って「目隠し鬼」というワードが思い浮かんだんですよね。
