2024/10/31 18:00

Kehlani『While We Wait 2』

4thアルバム『Crash』から程なくしてリリースされたミックステープ『While We Wait 2』。”これまでに私がやったこととは全く違うもの”と語る『Crash』が実験的な意欲作と例えるなら、本作はケラーニの、より自然体な側面が浮き彫りになった端正な作品と言えるかもしれない。制作がわずか二週間で行われたという背景を考えても、親しい仲間と過ごした夏の日の延長線上にあるような、自由でリラックスした雰囲気を感じさせる。「S.I.N.G.L.E.」ではBrandyの「Sittin’ Up In My Room」が引用され、Lil’ Moをフィーチャーした「Know Better」では、ご本人のヒット曲「4 Ever」をサンプリング。先人たちへの敬愛を携えつつ、ケラーニの再解釈的な視点や、ありのままの音楽性が楽しめる作品だと感じる。(Cookie)

Kenyon Dixon 『The R&B You Love: For the ’99 and the 2000s』

ロサンゼルスのR&Bアーティスト、Kenyon Dixonの『The R&B You Love』シリーズの最終章で、90年代後半から2000年代初期のR&B黄金期に対するリスペクトが詰まった作品。サウンド面も時代へのオマージュが色濃いが、ド直球タイトルな一曲「2000s R&B」にて、NextのRLをフィーチャーしている点や、”DixonがもしJodeciのメンバーだったら”を想像して作ったという「Brand New」など、”無類のR&B好き感”が飾り気なく伝わってくる点に好感が持てる。自身のシリーズ作品を通じてまでR&B愛を叫び続けているし、彼は正真正銘の“R&B Lovers Club”の一員だと是非言いたい。(Cookie)

Tyrese 『Beautiful Pain』

全米首位に輝いた前作『Black Rose』から9年ぶりとなったタイリースの新作は、妻との離婚で傷心に打ちのめされた彼の私小説的作品。テーマも相まって、その泣くように歌う姿にはマーヴィン・ゲイの姿が容易に重なる。亡き母に捧げたスカイラーク「Wildflower」のカヴァーでは原曲のメンバーでもあるデヴィッド・フォスターも関与し、テイマー・ブラクストンとはグラディス・ナイト&ザ・ピップスをリメイク。昨年作(『The Rebirth Of Marvin』)でマーヴィンを憑依させていたオクトーバー・ロンドンの参加も納得だ。全17曲約1時間半という長さも含め、トレンドには目も触れず、聴き流せるような軽い曲も皆無。正座して向き合うべきソウル大作だ。(Yacheemi)

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