2024/08/30 18:00

Kero Uno 『Fuzzy Logic』

日本ではジャジー・ヒップホップ文脈で人気を集めた、韓国系アメリカ人ラッパー/プロデューサーのケロ・ワン。生演奏を巧みに取り入れたメロウなスタイルはアンダーソン・パークや本作にも参加しているエース橋本の先駆けとも言えそうだが、ケロ・ウノ名義でリリースされた本作ではより幅を広げたサウンドを展開している。韓国のブラザースーと香港のキン・ライアンが歌う「Schedule」などは、実はLDHやK-POP作品も手掛けるケロ・ワンらしい華やかな仕上がりだ。物凄く何か言いたそうなタイトルの「Lofi Jam I’m Not Studying To」のようなジャジーヒップホップ路線ももちろん充実。

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Kiddo Marv 『Kingz In Denial Don’t Overcome Testimony』

今や歌うラッパーは多く活動しているが、フロリダのキッド・マーヴはその中でも一際ユニークなスタイルの持ち主だ。ハイチ系アメリカ人でワイクリフ・ジョンから影響を受けたというそのラップには、ほかのラッパーとは一味違うカリブ海の香りが漂っている。それはビート選びも同様で、トラップをベースとしつつも時折ダンスホールっぽいリズムが顔を出す。本作でもそのヒップホップとレゲエを横断する越境感覚が冴え渡っており、アメリカ産だがアフロビーツなどが好きなリスナーにも勧めたい一枚となっている。軽妙な曲もあるが全体のトーンはシリアス。フックで泣きのギターが絡む「Ion Wanna Die Young」など良曲満載だ。

Nacho Picasso & TELEVANGEL 『Jesse’s Revenge』

柔らかな低音のラップが持ち味のナチョ・ピカソも、AJ・スエードと同じく2010年代前半に活躍したシアトルのラッパーだ。プロデューサーデュオのブルー・スカイ・ブラック・デスのメンバーとして知られるテレヴァンジェルと組んだ本作は、ダークなブーンバップを軸にした捻ったサウンドでそのコクのあるラップが堪能できる良作。テレヴァンジェルはヴェイパーウェイヴをブーンバップ化したみたいな「Do It for Johnny」、硬質なループが光る「The Old Nacho」、タイトル通りブルージーな「Nacho Blues 2」など多彩なアプローチでナチョ・ピカソの魅力を引き出している。坂本龍一の名前を冠した曲も収録。

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